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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと剣術大会

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181話

「はあはあ…ただし…ごめんなさい、ボク…」


シバルは勢いよく森の外へと投げ出されると、そのまま地面を転がると、すぐに立ち上がった。

ひとえに、シバルのスキルがドエムだったからできたことだった。

そして、すぐにゆっくりと歩きだした。

どこに向かっているのか、わからない。

でも、どこかに向かわないといけない。

そんなときだった。


「あっれー、どこかからお兄ちゃんの匂いがする」


そんな素っ頓狂な声が聞こえたのは…

そこにいたのは、見た目は幼い女性だった。

背中には木の棒を携えている。

だけど、わからないけど、ただしと似た何かが少しあるのがわかった。


「あなたは…」

「え?これを言うのは二回目なんだけどな。叶は叶だよ」

「そうなんですか…」

「うんうん、それであなたは?」

「ボクは、シバルです」

「シバルね!面白い名前、それにボクっ子なんだね」

「ボ、ボクっ子ですか?」


訳が分からない言葉で、思わず戸惑っていると、叶と名乗った女性は顔を覗き込んできた。


「それで、叶が聞きたいのは、そんなことじゃないんだよ。お兄ちゃんの匂いが、どうしてあなたからするのかってところなんだよ」

「お兄さんですか。ボクにはそう言われても、心当たりがないのですが…」

「そうなの?かすかに匂いがすると思うんだけどな…」


そう言って、彼女はどこかしょんぼりしている。

急に会って、よくわからないままだ。

そんなときだった。


「おい、あいつらだ」

「くそ、やっぱりか!」


そんな声とともに、町にいた人たちがボクたちの方へ向かってくるのが見えた。

どういうことかはわからないけれど、どうやらボクたちは追われているらしい。

ここはボクが戦わないと…

そう思って剣を構えようとするが、そもそも腰に剣はない。

どうやら投げ飛ばされたときに飛んでいったようだ。

だったら守るために前にでようとするが、足にはほとんど力が入っておらず、前に走ることもできない。

すると、隣に立っていた叶が背中に持っていた木の棒を取り出す。

そこに男たちが囲うようにして集まった。


「お前だな」

「何がー?」

「南の町の剣士たちを全員コテンパンにしたって言う」

「だって、弱いんだもん」

「なんだと」

「本当のことだよ」


どうやら、この叶は、一つの町にいる剣を学んでいる人たちを倒してしまったらしい。

それも一人で…

それだけ強いということは間違いないのだろう。

でも、今は一人。

町では一対一だからできたことなのかもしれない。

そんなボクの考えで、なんとかしようとしたときだった。

男たちが剣を構えて走りだした。

そして、あり得ない光景を見た。

剣が斬れたのだ。


「え…」


思わず戸惑っていると、叶は言う。


「あれあれ?武器が使えなくなってるよ」

「何だと…」


どうやら男たちも同じだったようで、斬られた剣を見て呆然としている。

何が起こったのか見えなかった?

違う、見えたからこそ訳がわからなかった。

叶はただ、その場で木の棒を振ったのだ。

それもボクにはできないほどのスピードで…

それだけで、周りにいた男たちの剣が斬れていた。

スキルで間違いないのだろうけれど、どんなスキルなのかは検討もつかない。

叶は不思議そうにしている周りを見ても、むしろどこか残念そうだ。


「わからないってことしか言わないの?」

「なんだと…」

「お兄ちゃんなら、どうやって攻撃してるのかまで考えるのにな」

「くそが!」


男の一人が斬られた剣を叶に向けて投げる。

それを叶は何も動くことなく弾き飛ばす。

スキルが発動したってことだというのは、ボクでもなんとなくわかる。

でも、それがどういうスキルなのかというのは、それだけではわからない。

この場にただしがいれば、それも簡単に見抜いてしまうのかもしれないけれど、今この場にただしがいないということを考えると難しいことだけはわかった。

そして、すぐに叶は再度木の棒を振るう。

それで、男たちの着ていた服が斬れた。


「あ、またつまらぬものを斬ってしまったって、こういうときは言うのかな?」


そんなことを叶は言う。

男たちは何が起こっているのかがわからないまま、後ずさりして、すぐに逃げ出す。

まさしく完全な敗北と言えるだろう。

圧倒的な力…

ボクにもこんな力があれば、兄だって、それに他の人だって救えたのかもしれないのに…

そう思うことしかできなかった。

そんなボクに彼女…

叶は言う。


「それで、お兄ちゃんはどこにいるのかな?」


その顔は、先ほどの強さと裏腹に怖さを思い出させた。

まさしくあのときに出会った、デスサイズを使っていた女性のように…

そんなときだった。


「シバル!」

「アイラ様」


声をかけてくれたのは、ボクがよく知っている人。

そして、今一番会いたくなかった人だった。


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