180話
二刀流という、主人公になりそうな見た目の武器を使う相手に、俺は怒りを最初から覚えていた。
二刀流といえば、かなり強い相手が使う印象が強いのだ。
それに、シバルの兄というだけあって、美形だ。
それなのに、使う武器も、戦い方もカッコいいって?
最高じゃないか…
俺のように、見た目も微妙で、さらにはスキルを発動するためにはヘンタイな恰好をしないといけないというね。
「不公平じゃないか!」
「は、何がだ!」
「そんなこともわからないから、お前は妹に嫌われるんだよ」
「何を言っている、そんな簡単なことじゃないだろ!」
「どうかな」
俺は二刀によっての攻撃を両手の拳で弾く。
そして、返しで蹴りを放つ。
「く…」
「完璧には入らないか…」
「蹴りだと…お前の武器は、その拳じゃないのか?」
「そんなこと、俺が言ったのか?」
「ちっ、いちいちイラつくな」
「ま、こんな見た目だからな、仕方ないな」
そう言いながらも、俺は再度拳を固める。
それを見た二刀は、剣を構える。
技を使う気なのだろう。
だけど、距離的には攻撃は届かない。
やるとすれば、魔力を宿して、剣戟を飛ばす気なのだろう。
わかっていれば、やることはわかっている。
そんな俺の余裕な表情で相手は怒りながら言う。
「イラっとするからな。これでもくらえ、双剣、二の型、ダブルエア」
予想通り、魔力をのせた剣戟が飛んでくる。
それに対して、俺はその斬撃を拳で殴り飛ばす。
しっかりと拳に気を纏わせてだ。
「じゃあ、次は俺だな。カイセイ流、二の拳、シューティングスター」
俺はそのまま気を飛ばす。
「ちっ、双剣、一の型、ダブルスラッシュ」
ただ、それは簡単に防がれる。
だが、俺の攻撃はそれで終わらない。
すぐに相手に詰め寄る。
そして、拳を振るったが、それはデスサイズによって止められる。
「な!」
「横やりか?」
「ふへへへ、仕方ない。こうでもしないとやられるから」
「それはいい判断だ」
この兄も、確かに型通りだ。
その攻撃が通用する相手であれば、それも可能だが、それができないということを教えるのにはいい機会だったが、どうやら女性の方がそれを許さないらしい。
「おい、こっちはやられてないだろ」
それに対して、二刀兄は悪態をつくが何を言ってるんだと思う。
だって、防御をしていなかったら、俺の攻撃は確実に当たっていたのだから…
先ほどの蹴りとは違って、俺の攻撃は拳だった、ナックルもつけているからこそ、かなりのダメージを負うことは確実だった。
本当に、こういうプライドだけは高いやつはどうして自分の戦いに横やりが入ることに対して、ここまで嫌がるのだろうか…
よくわからない。
ただ、女性の方はよくわかっているようで、二刀兄の足を蹴った。
「ぐ…」
「ふへへへ、油断大敵」
「な!あなたは仲間でしょ!」
「だって、やれるんでしょ?」
「それは!」
「だったら、うちにも勝てるよね?」
その言葉とともに、女性は殺気を放つ。
俺もさすがに距離を取った。
ただ、それもすぐに収まる。
「ふへへへ、怖がらせてごめんね。うちはこんなんだからね」
「ああ、本当に…」
これが聖騎士だということなのだろう。
あの馬に乗っているやつといい、本当にどうなってんだよ。
あきらかに、強さがセイクリッドにいたやつらと違いすぎる。
俺は背中に感じる冷や汗とともに、少しヘンタイスキルが弱まるのを感じていた。
このまま戦っても、負けることは必須だろう。
だったら、どうする?
答えは簡単だ。
俺はここから逃げようとした。
だからこそ、油断していた。
背中に鈍い感覚が伝わる。
なに…
そう思ったときに後ろをチラッと見てわかった。
あの男が棒をもって叩いていたのだ。
「ただし!」
「くそ、そういうことか!」
すぐに状況を理解した俺は、倒れる足をなんとか耐えると、踏み出す。
悲痛な声で俺のことを呼んだことで、場所はわかっている。
だから、いける。
シバルの体をがしっとつかむと、俺はシバルを投げ飛ばした。
ヘンタイスキルと、気が飛ぶ最後の力でそれは遠くに…
そして、俺は気を失った。
※
「まじかよ…」
「おい、妹のことどうする」
「ふへへへ、今は仕方ないよ」
二刀兄は、地面を蹴り飛ばす。
女性は楽しそうに笑っている。
そして、男はすっと二人になった。
「お前の、そのスキルは嫌いだな」
「はは、仕方ないでしょう。このスキルがないと、他の人にモンスターを狩られてしまうんだから」
「ちっ、本当に嫌なやつだ」
二人はそんな会話をする。
女性はというと、寝ているただしを片手でひょいと持ち上げた。
「ふへへへ、うちはこの子をもらうね」
「そんなやつのどこがいいんだ?」
「ふへへへ、簡単、強いところだよ」
女性はそういうとその場を後にする。
男二人も、すぐにやれやれと首を振りながら、その場を後にするのだった。
一人、同じ男をその場に置いたまま…




