表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと剣術大会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

177/382

176話

「えっと、さっきの話しって」

「はい、稽古をつけてほしいのです」

「いや、それはわかるけど、俺でいいのか?」

「はい、先ほどの戦いを見ていれば、そうして欲しいと本来は思うはずなのですが…」


審判をしていた男はそう言いながら、ため息をついた。

それも仕方ないことだろう。

俺が少年を圧倒してみせたというのに、聞こえてくる声は、俺をほめるものではなく、避難する言葉ばかりなのだからだ。

確かに剣だけを使った戦いかたではなかったが、それでもパンツも被っていないし、俺としてはこれまでの戦いと比べるとかなりまともに戦っている。

そして、あの少年がこの町の五番目の強さなのだとしたら、もしかしなくても、この町の強さというのは低いのだろう。

横で一緒に話しを聞いているシバルの方が、かなり強いしな。

これまで戦ってきた相手が強かったせいで余計にというのもあるが…


「それで、何をしてほしんだ?」

「あと、一週間後に行われる剣術大会で優勝したいんです」

「ほうほう…」

「それで、先ほどの戦いかたから察するに、戦い慣れていると思いますので、戦い方を教えてほしいのです」

「お、おう…」


なんだろうか、見た目からたぶん目の前にいる男性は俺よりも年上だ。

そんな人に真剣に教えてくださいとお願いされてしまえば、断ることなどできない。

ただ、ただ…

俺は年上の人に教えるのが苦手なんだよ。

でも、今の見た目からすれば年上だが、俺が転生する前でいえば年下となるので、なんとなく言葉使いも雑な感じになってしまうのは仕方ないことなのかもしれない。

そんなことを考えながらも、俺は戦いの基本について質問していた。


「それで、どんな戦い方をしたいんだ?」

「はい、勝てる戦い方です」

「なるほどな」


となると、やり方は決まっている。


「実践で覚えるしかないな」

「実践ですか?」

「そうそう」

「どうして実践なのですか?」

「簡単に言えば、豊富な戦い方を身につけるために、何度も実践を通して、自分の体で覚えるってやつ」

「それが短期間の実践で身につくのですか?」

「もちろん。と言いたいところだが、その成長も俺にはどうなるのかがわからないな。これは俺が勝手に考えていることだが、この国では強さが順位になるんだよな」

「はい、そうですね」

「だったら、毎日のようにさっきみたいなことってあるのか?」

「剣術試合ってことですか?」

「ああ」

「いえ、ほとんどありませんね。負けるとそれだけで順位が下がってしまうので、行っても二、三か月に一度程度になりますね」

「だからだな」

「というのは…」

「経験が少ないから、どうしても対処が弱く、後は自分の戦い方がそれしかない」

「自分の型をもつというのは大事ではないのですか?」

「確かにそれは大事だが、それよりも大事なのは対応するってことだな」

「対応ですか?」

「ああ」


これも妹とのことにはなるが、言われたことだ。

相手の身長や手の長さ、足の長さによって攻撃のリーチが違う。

それを瞬時に判断しないと、いつまでも同じだと思っていると、その距離感の違いによって致命傷を負うことになるという話しだった。

あとは、武器。

相手が持っている武器がどういうものなのか、それを考えて距離を保つ。

遠くに行くだけではなく、近くで攻撃を対処するというのも大切なやり方というものだ。

話しを聞いたときには、どこでそんな知識を身につけてきたのだろうかと疑問に思ってしまった。

それで一度教えてもらっているところに一緒に行ったことがあったが…

あれは、なんといえばいいのか、俺にはトラウマものだったとしかいえない。

まあ、そんなことがあったので、俺が言えることは、戦い方というのは相手がどういう攻撃をしてくるのかを知るというところからスタートするとしかいえないのだ。

結局強くなるかどうかなんて、俺みたいな人に教えることが基本的に苦手な人間には向かないのだ。

こういうときにもあれだ、会社のように仕様書や、それに伴う作業方法が書かれた書類を渡して、それじゃあ一緒にやろうか、わからないことがあったらその都度聞いてくれたらいいからね。

なんてことを、今もしてみたい。

戦い方の仕様書なんてものがあるのかは知らないけれど。

だから、実践をつませるためにやることはあれだ。


「モンスターと戦いに行くか!」

「は、はあ…」


ただ、男は乗り気ではなかった。

どういうことなのだろうか?

確かにレックスという場所は特殊だ。

セイクリッドと同じくらいには変わった国だと思う。

ただ、モンスターと聞いてここまで乗り気じゃないのはどういうことなのだろうか?

俺が疑問に思っていると、シバルが言う。


「モンスターなのですが、レックスでは聖騎士が倒してしまいますから」

「聖騎士が?ということは、他の人たちは何をしているんだ?」

「基本的には話した通り、畑と稽古、そして剣術試合を行っています」

「まじかよ…」


そこに俺は驚く。

他といっても、主にオンスフルとリベルタスでは、ギルドがあって、そこでいろいろな依頼を受けることができ、その依頼でモンスターと戦うということができた。

他の国でもそういうことがあると思っていた。

セイクリッドはどうか知らないけれど、あの魔力を感知するアーティファクトを使って何かをしていたことを考えると、それでモンスターの位置を特定して討伐隊を派遣したとかがしっくりくる。

ただ、レックスでは本当に聖騎士だけが戦っているということなのだろう。

確かに、あの人馬一体を使う強さのやつが何人かいるだけで、国を守れてしまうのかもしれない。

でも、それをやるということは、国にいる他の人たちが、今やっていること以上の成長がみられないということになる。


「だから、弱いのか…」

「それは、そうなのかもしれませんね」

「シバルはやっぱりそう思うよな」

「はい」

「どういうことですか?」

「ま、簡単にいえば、このままレックス…この国にいたところで成長しないってことだな」

「そ、そんなことは…」

「ないって言えるのか?」

「…」

「それでも、剣術大会で優勝することができれば…」

「でも、その剣術大会には、聖騎士も出るんじゃないのか?」

「ですが…」


言いたいことはわかる。

剣術大会で優勝することができれば、次の王様に…

それがわかっているから、勝ちたいというのはわかる。

でも、そんな簡単な話じゃないはずだ。

聖騎士がでるということは、あの人馬一体のやつが最低でもでてくるということだ。

まあ、とりあえず…


「強さを知るためにも模擬戦を一度するか」

「モンスターはいいのですか?」

「それと戦うレベルなのかをまず知らないといけないからな。ってことで、シバル頼む」

「ボ、ボクですか?」

「ああ、体を動かした方が、シバルも落ち着くだろ」

「そうですね」


そうして、模擬戦が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ