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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと剣術大会

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173話

「それで、木の棒ですか?」

「ああ、こういうのでやるしかないだろ、木剣なんか今はないしな」

「そうですね」

「どうかしたのか?」

「いえ、最初に木剣を使った戦いでは、こんなときがくるとは思わなかったので」


そう言われて、確かにそうだと思った。

それくらいには、あのときは卑怯な手でしか勝ってない

でも、今回は剣術の訓練だ。

それも、重い木剣ではなくて、自分で重さを決めた木の棒だということもあって、扱いやすさが天と地ほどの差がある。

それに、ヘンタイスキルを使ってはいるが、少しは戦闘に慣れたおかげで、普通の状態でも一般人よりかは強いレベルにはなっている。

そこに剣術を合わせるのだ。

できないことはないだろう。

たぶんだけど…


「それじゃ、やりますか」

「はい」


俺とシバルは木の棒を構えた。

シバルは、そこにいつもの盾も使っている。

お兄ちゃん、ふざけてるよねと言わしめた俺の剣を見せるときがきたな。

それは何か?

簡単だった。

普通であれば、俺たちの世界にあった剣道なんかは型にはまっている。

でも、俺にはそれがない。

というか、そんな技術的なことは、できるはずがない。

だからやることはもっぱら、漫画や映像で見たことがある技をまねること…

構えも普通とは違い、適当な構えだ。

そして前に踏み込む。

すぐに右手で振り上げた剣を振り下ろした。

ただ、それは簡単にシバルの盾で防がれる。

カンという軽い音が鳴るくらいだ。

でも、剣術だからな、これは!

俺は、その盾を剣をもってない左手で殴る。


「え!」


驚きながらも、盾に思い切り固めた拳をぶつけた。


「い、いてえ…」

「素手で殴るからですね」

「そうだな、それならこうするか!」


心配そうに少し見るシバルの盾に向かって、今度は蹴りを繰り出す。


「く…」

「お、今度は痛くないな」

「足ですか…」

「おう、ダメか?」


俺がそう聞くと、シバルは戸惑ったようにというべきか、少し俺のことを非難するように言う。


「いえ、それは剣術なのですか?」

「そうだな、剣は確かに使ってはないな」

「だったら、剣術だとは言わないんじゃないですか?」

「そうだな。だったら、シバルは盾を使うの禁止な」

「え?」

「だって、剣術は剣だけを使うんだろ?」


俺のその言葉に、シバルははっとしたように目を見開く。

そう、確かに剣術とは剣をメインで使うことで間違いはない。

でも、剣だけで戦うことが剣術なのだとすれば、体のいたるところから剣が出せるようなスキルがあれば、最強の剣術使いなんてことになる。

もしくは、あのエンドのように暗器として短剣や投げナイフのようなものを使うことも強いだろう。

剣のみを使う剣術ならにはなるが…

でも、俺が知っている剣術はそうじゃない。

確かに剣でとどめをさすという意味では剣術だけれど、そこまでもっていくまでに行うのは、剣だけではなく手、足、そして頭でさえも使って態勢を崩して必殺の剣を叩き込む。

よくある剣豪の教えというやつだ。

そして、シバルの剣というのも、どこか剣に頼りすぎているというのがあった。


「なあ、シバル」

「なんでしょうか…」

「シバルのなんでも斬れる剣ってあるだろ?」

「はい、ありますね。ボクは魔法剣と呼んでいますが…」

「それをさ、違う場所にまとわせたりはできないのか?」

「違う場所ですか?」

「ああ、盾とか、鎧とかにな」

「やったことはありませんね」

「そうなのか、しようと思えばできそうなのか?」

「そうですね、練習すればできるかもしれません。ですが…」

「剣を使わないといけないってか?」

「!」

「なあ、シバル。言っとくが、剣が絶対的に強いわけじゃないぞ」


俺のその言葉に、シバルは何も言えなくなる。

それは仕方ないことだった。

だって、俺はこの拳であまたのと言えばいいすぎなのかもしれないが、それなりの敵と戦って勝ってきたのだ。

そのことをシバルは近くで見ているからわかるのだろう。

剣が重要ではないということを…


「なあ、シバルは剣に囚われすぎていないか?」

「えっと…」

「確かに剣は強い、斬る、突く、叩く。それをできることができるのは剣のいいところだ」

「じゃあ…」

「でも、それはシバルに向いているのか?」

「それはどういうことですか?」

「だって普通に考えるとな、シバルのスキルと合わせると剣じゃないだろ?」

「でも、剣じゃないととどめをさせないじゃないですか!」


その言葉を聞いて、俺はあれを思い出した。

シバルの過去の話だ。

そこで、兄である、あの二刀の男は確かにその剣によって相手を殺したりして強さを手に入れたのだろう。

でもだ。

それはシバルにはできないということはわからない。

だって…


「シバルは、その魔法剣を使うために誰かに守ってもらいたいのか?」

「!」

「そんなに驚くってことは違うんだな」

「そうですね。確かにボクは、この魔法剣が誰かの役にたつのなら、それを使うのが当たり前だと思っていました」

「確かに、完璧に全部の敵を斬れるのなら、それでいいかもな」

「そうですね」


でも、それができないというのが、すでにわかっているのだろう。

どれだけ強い攻撃であっても、その攻撃よりも強い攻撃をしてくるやつがいないということはない。

それは当たり前だ。

だって、強い攻撃だと思っているのは、自分よりも弱い攻撃しかもっていない人たちだけで、本当に強い攻撃をもっている人に関していえば、それよりも強い攻撃ができるなんてことは当たり前なことだからだ。

それを身をもってどこかで知ったということなのだろう。


「ボクには何が足りないのでしょうか?」

「それは、なんだろうな」

「え?」

「いや、だってな。俺にそんなことを言われても、俺に簡単にわかることならシバルでもわかりそうだろ?」

「確かにそうですね」

「それで、納得されても、俺が困るんだけどな」

「ふふ、そうですね」

「だろ?」

「はい、それで、剣術の訓練はまだしますか?」

「いや、もういいんじゃないか?」

「そうですね。ボクも何が足りないのか、なんとなくわかった気がします」


そうして、ほとんど何もしていないような気もするが、剣術の訓練が終わった。

本当に何もしていないような気もするが、シバルがどこか前よりも悩んでいないような気もするのでよしとするか…

俺はそんなことを思いながら、木の棒を投げすてた。

この後、剣術を少しでもやっておけばという後悔をすることがあることを全く知らないまま…


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