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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと勇者たち

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171話

「うん?今日はいい匂いがしない?」


アイラはそんなことを考えながら起きる。

そして、すぐに違和感を覚えた。


「あれ?ただしとシバルがいない?」


そうアイラが口にした通り、二人の姿はどこにもなかった。

すでに起きているのは、ヤミだけだった。


「ヤミ?」

「なんじゃ?」

「どうなってるの?」

「わからないのじゃ、わらわも起きたら二人がいなかったのじゃからな」

「そうなんだね」

「うむ」


ただ、ヤミはアイラと顔を合わせようとしない。

それで、何かを知っているのではないかというのがまるわかりだった。

アイラはすぐにヤミに言う。


「何か聞いてるの?」

「それはじゃな」

「ヤミ?」

「むう、まあ起きれば伝えてもよいかの」

「それで?教えてくれるのよね?」

「そうじゃな、わらわは言われたのじゃ、みんなを頼むとな」

「そうなんだ…それで勝手に行かせたんだ?」

「お、おぬし、そんな怖い顔で見るのでないのじゃ」


その言葉の通り、アイラはものすごい怒りの顔をしていた。

目が笑っていないとはこのことを言うのだと、わからされるくらいには、目力があった。

ただ、アイラ自身もここでとやかく言ったところで仕方ないということがわかったのだろう。

すぐに怒りを収める。


「何も言わないで勝手に行くとは思わなかった」

「わらわも、やめておけと言ったのじゃがな」

「まあ、難しいよね。あの二人はなんだか意思が固そうだしね」

「そうなのじゃ、わらわも行くのを止めたかったのじゃが、それが難しかったのじゃ」

「なるほどね、それなら仕方ないかな」


ただとアイラは考える。

馬車をどうするのかということを…

さすがにこの場でみんなを置いて私も行くということはできない。

それはアイラ自身もわかっていた。

でも、この馬車を運転するという意味でも、ただしとシバルしかやってきていなかったので、他の人がいなければ、ここからは徒歩でいかないといけなくなる。

それを考えると、誰かが馬車を運転しないといけない。


「誰が、馬車を運転するかよね」

「そうじゃな」

「ここは聞いていたってことでヤミがする?」

「嫌なのじゃ!そもそも、わらわも加減ができるのかわからないのじゃからな」

「そっか…」

「そういうことならワシがやろう」


アイラとヤミの会話に入ってきたのは、ゲンタだった。

できるのだろうか?

そんな疑問を表情で表していると、ゲンタは任せろといわんばかりに、腕をたたく。


「ワシのスキルはゴットハンドだからの。手で扱うものであればやれるはずだの」

「それなら、任せたわ」


そうして、ゲンタが運転する馬車に揺られて、アイラたちはセイクリッドを目指す。

なんとかセイクリッドでゲンタとジルをおろした後に、運転をできるようになって、ただしとシバルがいるであろうレックスへと向かう。

それが、アイラたちがすることで間違いはなかった。


「で、ミライは?」

「な、何かな?」

「ねえ、わかってたんじゃないの、こうなること…」

「そ、それは…」


アイラにミライは詰め寄られていた。

それは、仕方ないことだろう。

ミライはスキルで未来が視える。

それなのに、ただしとシバルが出ていくという未来を視れていなかったからだ。

アイラはミライが黙っているのだろうと思い、詰め寄っていたが…

ミライは小さい声で言う。


「だって、私にはシバルさんしかどこかに行く未来が視えなかったから…」

「え!」

「視えてはいたけど、行っていたのはシバルさんだけだったの、それに、ただしのことは私だってわからないんだから」

「そ、そっか…」


ミライにそう言われて、アイラの勢いも少し弱まる。

それも仕方ないことだった。

セイクリッドにいるころは、かなり自信というべきか、やることに対してしっかりとしていたイメージがあるし、ヨチスキルによって、未来を視ることで務めと言ったらいいのかはわからないけれど、それを果たしていたのだから…

だから、気まずい雰囲気に少しなりながらも、このままセイクリッドまで何事もなく時間が過ぎていく。

そうアイラたちは思っていた。

そんなときだった。


「なんだあ!」


そんな声とともに、馬車が急ブレーキをする。

荷台にいたアイラたちは驚きながらも、なんとか体制を整えると、外に出た。


「な、何があったの?」

「いや、おなごがな」


そういうゲンタの視線の先、馬車が止まった前には確かに女性がいた。

それも力尽きたように地面に突っ伏している。


「水、のど乾いた」


そういう女性の登場にみんなが驚きながらも、何故か放っておけなくて、水を与えたのだった。

すぐに落ち着きを取り戻す少女は、奇妙だった。

背中には一本の木の棒のみを持っている。

それだけだった。

どうやって、どこから来たの?

そんな疑問を覚えていると、女性は一通りの食事を終えると言う。


「えーっと、魔王はどこにいますか?」


そのことをしっているのは、勇者たちと、それと戦ったことがあるここにいるメンバーのみ…

ということは必然的に女性は勇者だということになる。

突然の勇者の登場に驚きながらも、アイラは聞いた。


「えっと、あなたは?」

「あ、(かな)は叶だよ。魔王を倒して、お兄ちゃんを生き返らせるんだ」


そう無邪気に笑うのだった。


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