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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと勇者たち

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170話

夜になりいつもように夕食を済ませた後、俺はボーっと火を見ていた。

いつものように見張り役をした俺は一人座っていた。

というのも、あの話しをヤミにした俺は頭の中でそのことを整理しようとしたのだ。

だから一人で火を見るという今も、結構重要な時間といえるだろう。

俺はそう思いつつ、いつものように火を見る。

パチッという音とともにはじけるのを見ていると心が落ち着く。


「はあ…」


それでも、疲れからかため息はでていた。

理由はわかっている。

あのことを思い出したせいだ。

だからといって、今何かができるわけではない。

それでも、絶対にあの男とは対峙することになるだろう、そう思った。

ただ、疑問はそれだけではない。

俺が知っている人間がすでに二人も勇者として、この世界に召喚されている。

それだけでおかしなことだとは思う…


「ただ、結局自称神とは連絡とれないしな…」


聞きたくても聞けないとはこういうことなのだろう。

なんで勇者が一人を除いて、俺が知っているまたは、俺にかかわった人間なのかということを…

これは絶対に裏がありそうだ。

本当にどうすればいいんだよ。

俺はそう悩んでいた。

だが、そんなときに足音がする。

誰かが起きてきた。

それが誰なのかは、来る前からわかっていた。


「シバルか?」

「はい…ボクです」

「そうか」

「隣座ってもいいですか?」

「ああ、大丈夫だぞ」


俺たちは隣同士で座る。

少しの沈黙が辺りを包み、シバルは何かを決心すると口を開く。


「ただし」

「なんだ?」

「ボクはこの後剣術大会に出ようと思っています」

「そうか…」

「はい、だからここでみんなとはお別れしようと思っています」

「そうなのか?」

「はい、ボクは兄を王様にしたくはありませんから…」

「だったら、俺も一緒に行く」

「ですが、それは…」

「無理だっていうのか?」

「だって、ボクの勝手な行動でみんなを巻き込みたくないから…」

「なんだ、そんなことか…」

「そんなことって…」

「行くのは俺だけだ」

「え?ただしだけ?」

「ああ、それなら文句ないだろ?」


その言葉でシバルは固まる。

わかっている。

本当は誰かに聞いてほしかったのと、背中を押してほしかったのだろう。

だから、止めるもしくは行かせるというのが普通の判断で、一緒に行くというのはあっても、普通であれば全員で行くというのが、普通なのだ。

でも、俺はそうではない。

今の話しを聞いたのも、兄の話しをしてくれたのも、他でもない俺だけなのだ。

それは、俺が転生者として、どんな事情も知らないような人間だから…

そして、話すことで自分を納得させる必要があるときに、そういう何も知らないような人に話しを聞いてもらうということが、重要だったりする。

だから話しただけで、俺もこの世界に来る前までなら、そうなのかと流していたところだろう。

でも、俺はそんなのは嫌だ。

すでにシバルとはこの世界で一緒に旅をしている戦友だと思っている。

だからこそ、シバルの悩みをある程度解消してやりたいというのもある。

それに…


「俺も因縁がある相手がいるからな」

「!」


その言葉で、たぶんシバルは勇者のどちらかのことだろうということはわかったのだろう。

いつものふざけているような雰囲気ではない俺に、シバルも息をのむ。

俺もあいつとは今度こそ、ふざけたことを辞めさせないといけない。

それに、どこか嫌な予感もしているからな…


「ま、さすがに今すぐに行くのは無理だな」

「どうしてですか?」

「さすがに準備があるだろ?」

「でも、そんなことをしていても…」

「何も変わらないってか?」

「はい、だってボクの強さは弱いままですから…」


そう言って、シバルは自信なさげにしている。

それに対して俺が思ったのはこれだ。


「いや、俺みたいなスキルじゃないだけましだろ?」

「それはそうかもしれませんけど」

「あとはだ、シバルは自分のスキルがなんのかわかってるのか?」

「え?最初のときにドエムスキルと言いましたよ」

「でも、それはわかって使っているってわけじゃないだろ?」

「そうですね」


そう、自分のスキルをどうやって発動するのかを自覚することで、俺たちはスキルをもっと効率よく発動できるはずだ。

俺のヘンタイスキルでさえも、完璧に理解するためにもいくつものヘンタイな恰好をしてきたのだから…

それなのに、まだヘンタイスキルを完璧に理解したとはいえない状態だ。

というのに、シバルやほかのメンバーは、なんとなくスキルについて理解はしているがという程度で、自分のスキルがなんなのかを完璧にはわかっていないだろう。

まあ、ドエムスキルやドエススキル、ケッペキスキルなんて、普通に考えなくても俺のヘンタイスキルくらいにヤバいというか、誰が考えたんだと思わせるようなスキルなので知らないで強くなれるのなら、それでいいのかもしれないが…

そんな俺の思いとは裏腹に、シバルは少し考えるように顔をしたに向けると、何かがわかったのか顔をあげる。


「ただしは、ボクのスキルの使い方がなんなのかわかっているのですか?」

「まあ、なんとなくだがな…」

「本当ですか?」

「ああ…」


シバル以外のパーティーメンバーもほぼ全員の表示できないスキルを知っていて、もしそれを使うならどうするのかという想像はできるが…

それを説明するというのも、また面倒くさくなるので、ここはあれだ。


「俺が転生者だから、ちょっとな」

「そうなんですね」

「ああ」


いやいやいやいや…

よく考えたらだ、この状況でシバルのスキルはドエムなので縛られてください。

なんてことを言っても大丈夫なのか?

仮にもシバルは女性だ。

それも、このパーティーメンバーでは俺以外が全て女性、そして客観的見ても可愛いという、俺にはハーレム状態。

まあ、手を出すとかはないけれど…

ただ、前のセイクリッドでアイラにあんなことを言われて、少しはアイラが俺のことを気に入ってくれていることをわかっているのに、違う女性にあなたのドエムスキルを使うためには、縛られて叩かれてすればいいですよ。

なんて言ったときには、騎士失格だと考えるかもしれない。

それにだ、こんなとろこで女性に向かってドエムなら、縛ったりするのが普通です。

なんてことを言ってしまう男がいれば、それはヘンタイしかありえないのだ!

いや、俺か…

不思議そうに俺を見ているシバルに俺は決心を固めると言う。


「シバルの、スキルを使うのに必要なのは、いじめられることだ」

「いじめられることですか?」

「ああ…性的にな…」


言ってしまった…

どういうことという感じに少しシバルは驚いていたが、すぐに理解したのか珍しく顔を赤くした。


「シバル?」


俺は恐る恐るシバルに声をかける。

すぐに、何かを言われると思っていたが、そうではなかった。

顔を赤くしながらも、どこか納得したのか少しうなずく。


「そうでしたか…」

「ああ…」

「だから、ボクはあんなにもされているのを見て、興奮していたんですね」

「そ、そうなのか?」

「いや、あの、そうですね」


照れたように言うシバルに可愛さを覚えながらも、この後のことを考えた。


「それで、シバルはドエムスキルを使うために、そういうことをしないといけないと聞いてどうだ?」

「えっと、どうって言われましても…」

「いや、なんとなくそれで変わったのかなって思ってな」

「えっと、とくには…でも、これがあります」

「ああ…それな」


そこにあったのは、あのとき手に入れたアーティファクトだ。

魔力を通すことで、好みの強さに体を縛ってくれる優れものだ。

シバルが使っているのを何度か見たが、それで確かに強くはなっていた。

でもだ、俺はドエムスキルがそれだけで終わるものだとは思わなかった。

何か変わるきっかけがあれば、さらなる強さを持つものだということを俺はヘンタイスキルでわかっていた。


「なあ、シバル」

「はい、なんですか?」

「これできっかけはつくれそうか?」

「わかりません、それでもボクは行かないといけないと思います」

「そうか、だったら行くか」

「はい…ただしも来てくれるんですね」

「まあ、スキルを教えて強くなって…なんてことを簡単にできると思っていたからな」

「そうですね。わかっていても、発動が難しいものもありますから」

「そうだな」


俺はそう言葉にすると俺たちは立ち上がった。

二人の影が焚火から遠ざかっていった。


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