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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと勇者たち

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169話

どれほどの攻撃だったのかわからない。

いくつかの攻撃をなんとかさばいたが、その間にカバンから地面に移った火は多くなっていた。

俺がある程度の体術をいつかはわからないが、学んでいなかったら簡単に燃やされていただろう。

それくらいには男は狂っていた。

俺のことだけを見ているからか、腰をぬかしてしまった妹には男は気づいていない。

ただ、それも時間の問題だった。

男は楽しんでいた。

でも、男が攻撃をして、それを俺が避ける。

そんな同じ状況に、さすがの男も嫌気がさしていたのだろう。

男は笑みを少しだけ弱いものにしていた。

それも、妹の存在に気づく前だったが…

男は、腰をぬかして、なんとか後ずさりしている妹の存在を見つけた。


「ああ、そっか、仲間がいたんだったね」


男はそう言うと、気持ち悪いくらいの笑顔を顔にはりつけると、瓶を投げてくる。

俺は視線から、それが妹に向けられたものだと理解した瞬間には妹の前に回り込んでなんとか瓶を手で薙ぎ払う。

ただ、瓶が割れて右手は液体がついた。

特有の刺激臭がする。

このままだとまずい。

それをわかっているのか、それとも男は妹に攻撃すれば、俺が避けないということに気が付いたのか、俺に向けてというべきか、妹に向けてというべきなのかはわからないが、攻撃を行う。


「お兄ちゃん」


二度目の攻撃で、俺の服は液体がさらにつくと、妹が心配そうに声をかけてくる。

俺はなるべく心配をかけないようにして、妹に目を向けると言う。


「大丈夫だ」

「でも…」

「じゃあ、こいつを借りるぞ」

「うん…」


俺は妹がもっていた竹刀を袋ごと借りる。

妹は、俺が体術的なことをやっていることもあってか、自分でも何かしたいと思うようになって、今では剣道を習っている。

まあ、こんなときに竹刀が役に立つとは思わなかったけどな。

俺は男に向き直る。

すると、いつものように男は不気味な笑みを浮かべている。


「あ、話し終わったかな?」

「だったらどうしたんだ?」

「いやー、やっぱり感動的な会話イベントを邪魔したら悪いからさ」

「そうかよ」

「そうだよ。それに俺も準備があるからね」


そう言う男の地面には多くの瓶に紐のようなものをつけていた。

もしかしなくてもわかる。

あれは簡易的な火をつけた火瓶だ。

妹庇っている以上、避けるという選択肢は俺にはない。

だから、あの火瓶をなんとかして竹刀で防ぐことが必要だということだ。


「ほら、いくぞ!」


男はそう言って火瓶を投げる。

俺は竹刀を振るう。

ただ、近寄せないために振るうために、竹刀を振るう方向は上からしたか、突きのみだ。

それでなんとか攻撃を弾く。

それでも、相手の手数の方が上だった。

ヤバい、そう思ったときだった。


「こら!何をやってるんだ!」


そんな声とともに警察官たちが現れた。

ただ、男は動じることもなくさらに笑顔をつくると言う。


「なんだ?乱入者か?」


その言葉にぞっとしながらも、警察官は五人ほど駆け付けており、すぐに男は拘束された。

ただ、拘束される瞬間まで火瓶による攻撃を繰り返していた。

そうして笑う男に俺はぞっとしていた。

連れていかれる最後には、男は俺を見て笑って言う。


「はは、やっぱり俺に気づいたってことはそういうことかよ、最高じゃないか」


それはただ、嬉しそうだった。

そんな俺は、その後妹と一緒に保護を受けた。

そのときに、妹に何かを言われたが、その言葉がなんだったのか忘れてしまったが、俺にとっては嫌な思い出だ。

男は警察官に手を出したということもあり、しっかりと刑務所に収監されたらしい。

簡単に男がどうして、そういう犯行にいたったのだけは後で、警察の人に簡単に聞いた。

それは、ゲーム…

この世界で対人戦闘として、ゲームを行っていたからだという話しだった。

ただ、男はそんなやつだった。



「ま、それがさっきのやつってことだ」

「なんじゃ、おぬしは転生するまえでも、かなり波乱万丈じゃったのじゃな」

「まあな」

「でも、よくわらないのじゃが、どうしてやつはそのとき魔法を使わなかったのじゃ?」

「いや、俺たちの世界には魔法なんてものがなかったからだ」

「ほう、魔法がない世界じゃと」

「そうだ」

「それはそれで行ってみたいのじゃな」

「いや、無理だろ」


俺たちはそんな会話をする。

それでも、俺は考えていた。

ゲームのように人を殺そうとする。

全ては自分が楽しめればいいと思っているような存在、そんなあいつがこの世界で、それも勇者としているなんてな。

それに言っていた、探している。

理解しているとあいつに言わしめる相手は…

確実に俺なのだということを…

シバルに聞かされた剣術大会のこと、そしてあの勇者のこと…

嫌な予感しかしないな。

俺はため息をつきたいのをなんとか我慢すると、馬車を走らせた。


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