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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと勇者たち

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167話

「ボクはリベルタスで騎士をしていたんです…」


その言葉から始まったシバルの言葉に俺は、驚いていた。



ボクは小さなころから兄と一緒だった。

どうしてなのか?

それはボクと兄がその国では虐げられた存在だったから…

理由は簡単だった。

それは小さいころのボクたちが弱かったから…

リベルタスでは基本的に強い人が偉い。

それは子供の中でも同じだった。

同じ年齢ごとにリベルタスでは決闘が行えて、それによって年齢ごとの順位が決まる。

そして、それによってリベルタスではランクというものがそれなりにあって、低ランクになるとランクの高い人の言うことを聞かないといけない場合もある。

そんな国で、ボクたちは弱かった。

だから強さを求めてボクたちは毎日鍛錬あるのみだった。

そこで出会ったたくさんの人たちに教わりながらも、そのまま真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに強くなっていくものだとボクは信じてやっていた。

でも、そうはならなかった。

だって、ボクと兄には一人仲がいい友達と呼べる存在がいた。

あの強さでしか順位を決めることができない国で、本当に仲がいい。

それは、体の弱い…

体を起こすのでさえ誰かの支えがいるような…

でも、ボクたちの話しはちゃんと聞いてくれるし、ボクも年上の彼女を本当のお姉ちゃんだと思って接していた。

それに、彼女は日々頑張っていた。

どれだけ体がつらくても毎日体を動かして、調子がいい日には外に出たりもした。

そう、そんな彼女とボクと兄で今後も仲良くできるそう思っていたのに…

いつものように鍛錬を終えたボクたちは彼女に会いに行こうとしていたときでした。


「おいおい、どうだった?」

「いやー、楽しめたな」

「本当にな、疲れを取るのにはちょうどよかったよな」


そんな言葉を発しながら、男たちが彼女がいる家の方向から歩いてきた。

普通であれば、何も気にしないような出来事だった。

でも、すれ違った瞬間に、おかしいものだということをボクも兄も気が付いた。


「おい!」

「ん?何か声がしたか?」

「いや、わからないな、下から声がしたような気もしたがな」

「そうか、そうだよな」


兄が声をかけたというのに、男たちは笑って通り過ぎようとするだけだった。

そのときだった。

兄がなんの躊躇もなく剣を抜いたのは…

リベルタスでは剣を抜いて相手に向けてしまえば、それがどれほどの格上相手だとしても、決闘となる。

だというのに、兄は剣を抜いた。

それに対して男三人は、バカにしたように笑う。


「おいおい、抜くってことは、決闘をするってことでいいんだな?」

「ああ、当たり前だ」

「兄さん…」

「シバルは、黙っていろ」

「でも!」

「そうそうお嬢ちゃんは黙っていたほうがいい。ただな、なんでそんなに怒り狂ってるんだ?」

「それは、お前たちの体から匂いがするからだ」

「へえ、どんな匂いだ?」


そう言われて、ボクと兄は何も言えない。

だってお姉ちゃんがいるときに漂ってくる、いい匂いなんて言われても笑われるから…

それでも、おかしいということだけはわかる。

だって、その匂いは近くでないと匂ってこないということをボクと兄は知っていたから…

おかしい、だからこそ剣を兄は抜いた。

お姉ちゃんに何かをしたのだという確信をもって…


「シバル、お前はあいつのことを見てきてくれ」

「そんな、でも…」

「頼む…」


兄に頼まれたボクはそのまま兄たちを置いて、お姉ちゃんの元へ走って行った。

部屋に入ると、ベッドの上にはいつもように満面の笑みで、ボクたちのことを待ってくれているはずのお姉ちゃんがいる。

そう思っていたのに…

そこにいたのは、髪は乱れ、洋服は破れてしまったのか、ほとんどが裸のお姉ちゃんがいた。


「お姉ちゃん…」


ボクはゆっくりと近づいた。

ベッドの上で彼女は、血だらけだった。

何が起こっているのか、ボクにはわからなかった。

ほんの昨日までは元気だった姉が今日は血だらけでベッドに横たわっている。

それだけで、夢でも見ているみたいだった。

そんな彼女は、ボクが来たのがわかったのかゆっくりと目をあける。


「お姉ちゃん!」


ボクはもう一度名前を呼んだ。

でも、うつろな目は何も見えていなようで、ゆっくりと手だけはボクの方へ伸びるだけだった。

ボクはその手をぎゅっと掴んだ。


「ああ、シバルちゃんね」

「お姉ちゃん、なんで?」

「仕方ないのよ、お姉ちゃんはね。弱いから…」

「そんなことない。ボクたちの話を聞いてくれて、元気をくれて、そんなお姉ちゃんが弱いなんてことないよ」

「ううん、お姉ちゃんは弱いよ」

「弱くないよ」

「ふふ、だったらね。お姉ちゃんのように弱い人をシバルちゃんは守れるようになってくれる?」

「そんなの当たり前だよ。お姉ちゃんのことだってボクが守るから…」

「そうね。それにシバルちゃんのお兄さんのことも守ってくれるかな?」

「それも当たり前だよ」

「そっか、よかった…」

「お姉ちゃん?お姉ちゃん?」


その言葉とともに、お姉ちゃんは何も言わなくなってしまった。

握っていたはずの手も力が入っていない。

え?

どういうこと?

わからない。

そう思っていたときだった。

部屋に男三人に首根っこを掴まれた兄が連れてこられたのは…


「離せえ!」

「弱いくせにうるさいな」

「まあまあ、見せてやればいいんですよ」


そして兄はお姉ちゃんのほうへ投げ飛ばされる。

そこにいたのは、先ほど動かなくなってしまったお姉ちゃんがいた。


「え?」

「兄さん…」

「何が?」


わけがわからなくなっている兄に、ボクは何も言えなかった。

ただ、そんなボクたちのことを男たちは笑う。


「おいおい、何をないてるんだよ。弱い奴が一人死んだだけだろ?」

「本当にな?」

「そうそう、それに最後は俺たちの疲れを吹き飛ばしてくれたんだから、いいだろ!」

「そうだな」


そんなことを言いながら、ぎゃははと男たちは笑う。

何がそんなにおかしいというのだろうか?

わけがわからない。

ボクは剣を抜いて男たちに向かった。

でも、それは簡単に剣を弾かれる。


「ははは、無理だって!」


男たちはそう言う。

くそくそ、お姉ちゃんのかたきを…

そう言って弾き飛ばされた剣を拾おうとしたときだった。

隣の兄がボクの剣と、自分の剣の二刀を構えたのは…


「おいおい、一本じゃ無理だからって、剣を二つってか?」

「…」

「おいおい、何も言えないのか?」

「ああ、これから死ぬやつらに言いたくないからな」

「は?なんだそりゃ!」


三人の男たちは楽しそうに笑うが、ボクは兄のいつもと違う姿に怖かった。

二刀の剣を握った兄は、これまでの真剣に剣を振ってきた表情とは違って、口元が笑っているようだった。

そして、兄は動いた。

剣を一振りもっていたときの数倍の速さで…


「は?」


そして、腕を斬り落とす。


「ギャアアアアア!」

「な、なんだ今の動き!」

「わからねえよ」


男たちは慌てるが、それも意味はなかった。

二刀の剣をもった兄は男たちを蹂躙した。


「おら、死ね!」


そう言いながら、男たちに剣を突き立てる兄を、ボクは見ていることしかできなかった。

そこからの記憶は曖昧だった。

気づけば来ていた騎士たちによって、ボクたちは保護された。

それは、兄の二刀を使った強さが年齢を超えて強いものだったから…

そして、兄はリベルタスで聖騎士というものになり、ボクは誰かを守れるようになりたくて騎士として鍛えた後にはあることがあってアイラ様たちに出会った。



「みたいなことがあったのです」

「なるほどな」


いや、聞いておいてなんだが、かなり重い話しだったな。

簡潔にまとめてくれているが、その経験はかなりのものだったということは俺でもわかる。

でも、最後に言っていたことがわからない。


「なあ、それで、お兄さんはなんで剣術大会のことをわかっている、なんて言ったんだ?」

「それは、その剣術大会で、次の王が決まるからです」

「そうなのか…」

「はい」


シバルはそれに出るのか?

そのことを俺はこの場で聞くことができなかった。


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