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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと勇者たち

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166話

「それで?」

「どうしたんだ、アイラ?」

「いやね…」


その言葉とともにアイラが俺とヤミの方を少し怒りのこもった視線で見る。

なるほどな。

理由はわかる。

ここに来るのが遅かったのが悪かったのだろう。

でも、それには理由があるのだから仕方ないと言いたい。

俺には装備品を買うという立派な使命があったからな。

それのせいで遅れただけなので文句を言われても困ってしまう。

それにだ…

ヤミがいてくれて、履いてくれたから、先ほどの魔法も打ち破ることができたんだからな。

そんな俺の考えに気づいてるのかはわからないけれど、アイラは顔をそらすと、今度はラグナロクのメンバーである二人を見る。


「それで?そっちの二人はラグナロクのメンバーってことでいいのよね」

「ああ、それで間違いないぞ」

「なんでただしが答えてるのよ」

「一応知り合いだからな」

「だからって、聞いてるのはこの二人になんだけど」

「そうか…」


俺は下手に答えたことに後悔しながらも、エンドとジークが何かを言うのを待つ。

といっても、ジークは最初に俺と戦ったときのように饒舌に言葉を発するということもない。

その変わりにというべきか、仮面をつけた改造メイド服の女性。

エンドが口を開く。


「そう、わたしたちはラグナロクのメンバーであり、わたしが一応リーダー的存在のものです」

「へえ、だったら私たちはあなたを倒せばラグナロクは解体できるの?」

「ふふ、そうですね。わたしを倒すことができるのであれば」


そう言うエンドは自信に満ちていた。

ヘンタイスキルを使わなくても、強いということがわかるくらいに存在感がある。

まあ、実際に動きをいくつか見ただけでも強いという確信はもてたしな。

それにしてもだ。


「戦いは終わったんだし、これからどうするんだ?」

「うーん、私たちがやることはあそこの二人を送り届けることでしょ?」

「ま、それがそうだよな」

「そうだよ。それに、契約した人がいなくなったことで、周りの人たちが逃げたとはいえ、この町にとどまるのは嫌だしな」

「そうよね」


そうなのだ。

金をばらまいていたであろう、宗次がいなくなったことで、先ほどまでいた雇われていたであろう人たちはいなくなっていた。

だからといって、この場所にこのまま長くいればいらない難癖をつけられてしまい、絡まれる。

なんてことも起きるかもしれない。

だからこそ、ここから一番最初にすることは、ここから出ることだ。

あとは馬車がどうなったのかを見に行く必要はあるが…


「なんだか、嫌だな」

「何がよ」

「また馬車を取りにいかないといけないなんてな」

「一度でちゃんと取り返さないから、面倒なことになってるんでしょ?」

「確かにそうだな」

「だから、今度は一人で行ってきなさいよ」

「まじかよ…」

「え?何か文句があるの?」

「いや、ないです」


アイラの有無を言わせないその顔に、俺はうなずく。

まあ、とりにいかないといけないことは決まっているので、仕方ないとはいえこういうときに簡単に使われる人間にはなりたくはないが…

俺のパーティーメンバーは、男が俺しかいないので、こういう扱いは仕方ない。

このまま一人で行くしかないか、そう思っていたが、シバルが隣に立つ。


「ボクも行きます。ボクも取りにいってちゃんと戻ってこれませんでしたから」

「そう?」

「だったら二人で?」

「いえ、わたしたちもそろそろ帰りますので、四人ですね」

「もう帰るのか?」

「まあ、あなたくらいしかわたしの見方がこの場にはいませんからね」

「そうか」


そうして、俺とシバル、エンドとジークの四人で歩いていく。

ありえないような四人で歩いていく。

だからといって、ずっと四人でというわけではない。


「では、わたしたちはこの辺りで」

「ああ…」

「これからも会いそうね、わたしたち」

「ふ、綺麗な人に今後も会えるならうれしいから、気にするな」

「そう言ってもらえるならわたしもよかった。それでは」


そうして、二人はゲートで消えると、俺とシバルの二人になる。

ただ、お互いに会話はない。

何か会話をしたいが、それも気まずい。

理由はわかっている。

さっきの二刀の男の言葉だ。

剣術大会が行われる、それがどういう意味があるのか?

それを聞きたい。

いや、聞くべきだ。

俺は、もう何かを遠慮していては、意味がないのだから…

ヘンタイスキルをさらけ出すと決めたときからな。


「なあ…」

「はい、なんですか?」

「シバルはさっきの剣術大会というのはなんなんだ?」


その俺の言葉で、シバルは足を止める。

俺も同じように足を止めた。


「ただしは、それを聞いてもボクについてくれるのですか?」


シバルにしては初めての弱弱しい言葉。

そして、声もどこか震えている。

それは、その後に続く言葉が何か大事な内容だということだろう。

でも、だからといって、聞かないことには、それが何かわからない。

だから、俺は言う。


「聞かないことには、それがわからない。そうだと思わないか?」

「ただし、確かにそうですが…ボクの内容は、決心した人にしか言ってはいけないことになっています」

「そうなのか?」

「はい」

「それは、あの二刀の男にそう言われたからか?」

「…」


俺が言ったその問には答えない。

それで、理由がわかった。

それだけ重要なことだということが…

でもだ。

俺は聞きたいと思う。

なんでか?

理由は簡単だ。

可愛い、綺麗、そんな女の子が話しを聞いてほしいとお願いしてくれたのだから話を聞きたいと考えるのは普通だ。


「なあ、話しを聞きたいんだが、いいか?」

「本当にいいんですか?」

「ああ、だって聞かないと何もわからないだろ?」

「それはそうですね…」

「だから教えてくれ…」

「そ、そうですね。誰かに話しをボクは聞いてほしいのかもしれません…」


そうして、俺たちは歩き出す。

シバルの話しを聞きながら…


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