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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと勇者たち

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163話

「アイラ様!」

「シバル!」


すぐに私を呼ぶ声で、誰が来たのかはわかった。

ただ、その近くにただしの姿はない。

だからこそ、思わず聞いてしまう。


「ただしは?」

「それがその、やることがあるからと…」

「そうなんだ」


絶対に何かがあったってことね。

ただしはただしでいつも何かと戦ってたりするものね。

そんな勘違いなことを考えながらも、来たシバルにどういう状況なのかを言おうとしたときだった。


「おう、シバル、久しぶりだな」

「!、お兄様…」

「え?」

「いやいや、こんなところでこちらの目的が達成できるとはな」


その言葉とともに、二刀の男が動く。

それも先ほどの非ではない速さで…


「ちっ」


攻撃は私に向いていた。

そのスピードに対応できなかった私は、攻撃をくらうはずだったが、それを仮面の女性が弾く。


「へえ、今のにもついてくるとはな」

「油断している女性を狙うとはスマートではありませんね」

「は!こっちの目的が達成できそうなんだ。手段なんか選ばねえよ。それにな…真剣なやりあいに、卑怯も何もかもないんだよ。弱い方が、攻撃力が足りないほうが負けるだけなんだからな!いくぞ!双剣、一の型、ダブルスラッシュ」

「!」


そして、二刀の男は構えると剣技を繰り出す。

それを仮面の女性は受けるが、さすがの勢いに数歩下がる。

まずい。

私は魔法を唱える。


「我の前に絶対に通さない聖なる壁を作りたまえ、ホーリーバリア」

「ふは、そんなバリアくらいでは止まらないぜ!」


ただ、そのバリアは簡単に二刀の剣によって破られる。

強い。

それに、この強さで勇者じゃないっていうのだから、驚きだ。

先ほどのことから、シバルの兄だということはわかったので、どれほどの戦闘をこなせばこの強さになるのかが、わからない。

ただ、悠長に考えている暇もない。

すぐに私に向かって剣を振るう。


「速い!」

「く!」


一振りめはなんとか防ぐが、二振りめは、仮面の女性が防ぐ。

さっきまでの強さとは全く違う。

これが本来の強さだというの?

そう感じるくらいには、先ほどまでとは違う。

確かに速さに関しては少し上がっている程度で、ただしという存在がいる以上はそれほどの脅威だとは感じない。

でも、驚くのはその力だ。

私と、仮面の女性二人で一振りずつ抑えるのが精一杯だというの?

それほどまでに、普通であれば両手を使っている私たちの方が有利だというのに対して、二刀の男は片方ですら私たちの両腕と同じ力で押し込んでくる。


「へえ、なかなか耐えるじゃないか!」

「なんていう力なの!」

「その言い方、少し嫌ですね」

「は!だったら、押し返して見せろよ」


その言葉に対して、私は何も言えない。

だって、この状況を打破できる何かを私はもっていないから…

ただ、仮面の女性は違うのか嬉しそうな声音で言う。


「いいのですか?」

「ああ?生意気だな、やれるものならやってみろ!」

「では、やってみせましょうか」


そう仮面の女性は言うと、力をふっと抜いたように見えた。

その瞬間に均衡は崩れる。

二刀の男の態勢が崩れたのだ。

ただ、態勢を崩されながらも、男は剣を振るう。

だが、その剣が斬ったものは、丸い球体の何かだった。


「何!」

「え?」


驚くのもつかの間、すぐに球体が破壊されて煙が出る。

こ、これは煙幕ってやつなの!

その武器というべきか、アイテムは私もよく冒険譚で読んだときにでてきたけむりを発生させる丸い玉。

けむり玉や、煙幕玉なんて呼ばれているもので、私も使っているのを見るのは初めてだった。

すぐに視界が煙に支配されて、こんな感じなんだね…

などという感慨にふけていたけれど、すぐに首根っこを掴まれて、現実に引き戻される。


「うひゃ!」

「少し、おとなしくしなさいね」

「はい」


すぐに誰が首根っこを掴んでいるのかはわかった。

その仮面の女性と私は距離をとる。

なんとかやり過ごせたみたいね。

そう思っていたときだった。


「アイラ様!」


シバルの切羽詰まった声と、視線を見る。

上!

見上げると、そこには黒い太陽のように炎が出来上がっていた。


「黒火よ、燃えて燃えて黒い太陽となって敵を焼き払え、ブラックサンファイアー」


まずいと思った私はすぐに魔法を唱える。


「我の前に絶対に通さない聖なる壁を作りたまえ、ホーリーバリア」


なんとか魔法を使ってとめようとするが、黒い太陽によってバリアは破られる。

こんな一瞬で破られるなんて!

ただ、すぐに隣にバーバルがくる。


「水よ、その水を柱にして守る壁となれ、ウォータータワー」


すぐに水柱が出来上がり、黒い太陽に当たるが、それでも相殺できない。

隣に立つバーバルを見ると、服が焦げている。

それですぐにわかる。

相手の魔法でやられたということが…

いける、私!

魔法の連続発動は私にはかなり負担になるけれど、やるしかなかった。


「我の前に絶対に通さない聖なる壁を作りたまえ、ホーリーバリア」


ズキンと頭に痛みが走るのをなんとか我慢しながらも、私は魔法を発動した。

それによって黒い太陽は消滅する。

すぐに私は片膝をつき、荒い息をする。


「はあはあ…」

「アイラ、ごめんなさい」

「ううん、バーバルのせいじゃない。あの魔法はなんなの?」

「わたくしも見たことも聞いたこともないから、わからないけど…でも、くるわ」

「え?」


その言葉に上をまた見ると、再度黒い太陽が出来上がっている。


「さあ、何発耐えられるかな?黒火よ、燃えて燃えて黒い太陽となって敵を焼き払え、ブラックサンファイアー」

「うそでしょ…」


再度放たれたのは、先ほどよりもさらに大きな黒い太陽だ。


「ジーク!」

「は!聖騎士剣術、奥義、ホーリーソード」


それに向かって放つのはジークのホーリーソード。

ただ、それでも拮抗のもと、破られる。

黒い太陽はまだ、壊れていない。

隣では仮面の女性がスッと何かを取り出す。

それは、ジョウロだった。

うーんとどういうこと?

ふざけているのかなと思っていると、仮面の女性は魔法を唱える。


「水よ、湧き出る水によってあまたの炎を消化せよ、ウォータークエンチ」


その瞬間だった、ジョウロから大量の水が出始めたのは…

どういう原理なのかは全くわからないけれど、それは勢いを増す。


「火消はメイドの役目ですから」


仮面の女性は何かを言ったかと思うと、その水を黒い太陽に当てる。

そして、その勢いのまま黒い太陽を消化した。

ただ、それでも勢いは止まらない。

なにこれ?

そんな感想がでるくらいにはよくわからないこの状況に、戸惑いを見せながらも、黒い火を使う男に向かってジョウロの水は飛ぶ。


「いいねえ、今のを二度も破るとはな!黒火よ、その炎を黒き火柱にして相手を燃やせ、ブラックファイアータワー」


すぐに男は魔法を唱えると仮面の女性が放つジョウロの水に当たる。

そして魔法はお互いに相殺した。

なんというか、すごい魔法ね。

そんなことを考えながらも、仮面の女性を見るが、いつの間にかジョウロはなく。

そもそもジョウロもかなり大きく見えたので、どこに隠しているのかもわからない。

なんだろう、こういう滅茶苦茶な感じ、ただしに似てるかも…

失礼にもそんなことを考えつつも、片膝をついたまま、まだ立つのは難しい。

さすがにホーリーバリアを二連続、しかもかなりの魔力を込めたものだったので余計に体に負担がかかっていた。

今、一応無傷なのは仮面の女性と、ジーク、そしてシバルだ。

そのシバルは兄と向かい合っていた。

それに黒い炎を使う男が話しかける。


「お、なんだ、感動の再会か?」

「お前のそういうところが嫌いだと言ったよな?」

「いや、ごめんよ」

「まあいい。それで愛すべき妹よ」

「…」

「どうした照れているのか?」

「ボクは戻りませんから!」

「言いたいことがわかっているんだったら、わかるだろ!お前がこちらに必要だということを!」

「でも…」

「そんなにわがままを言うのか!

「ボクは…」


シバルと兄との間に何があるというのだろうか?

私にはわからない。

それでも、その会話を聞いているだけで、何かよくないことなのだということだけはわかった。

それでも、シバルは断っている。

だから、これで兄があきらめてくれれば収まる。

そう思っていたというのに…

兄である二刀の男は言う。


「だったら、お前が慕っている人をやるしかないな」

「え?」

「いいぞ」

「え?やっちゃっていいんだね?」

「ああ」


二刀の男は言う。

何をしようというのだろうか?

私たちはただ疑問に思っていた。

けれど、すぐにその疑問は解消される。

魔力の高まりを否が応でも感じたから…

それはここにいる全員で、全員が身構える。

それを男は笑いながら見ると口を開く。


「黒火よ、燃えよ燃えよ燃えよ、黒炎となりてすべてを包みすべてを焼き払う黒き厄災の炎となれ、ブラックフレイム」


それは黒く、どす黒く燃える炎の塊だった。

嫌な雰囲気を漂わせているその炎は、こちらに向かって飛んでくる。

速度は先ほどまでの黒い炎の魔法よりはゆっくりだ。

でも、背筋を流れる、この嫌な汗はこの魔法がいかに異質なのかを感じさせる。


「あれは、まずいですね」


そしてどす黒い炎はそのまま私たちの元へ…

くることなどはなく、横から飛んできた人影のようなものに貫かれて消えたのだった。

そして、その人影は何かを肩車しているように見えたのだけれど…

疲れているかもしれないと私は視線をそらしたのだった。


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