158話
「なるほど、そんな武器が存在するのですねえ」
「まあな」
「もんなものを使ってやることは、どんな戦争を起こすつもりなんでしょうかねえ」
「知らねえよ…ただ、間違っていなかったらあいつはすべてを手に入れるためには手段は選ぶようなことはしない」
「そうですか…」
「ああ、そのための一番手っ取り早い方法が戦争で勝って奪い取るって方法になるんじゃないのか?」
「それは、困ったことになりましたねえ」
「かなりな。お金を使って、多くの人を雇っているみたいだしな」
「なるほどですねえ、それであなたはどうするのでしょうかねえ」
全てを話した俺は、ピエロにそう聞かれる。
まあ、これからどうするかなんてことは決まっている。
「俺たちをあの場所に戻してくれ。助けてくれたことには感謝しているが、仲間たちもあの場所にいるままだしな」
「そういいますのですねえ」
「ああ、だから俺たちを戻してくれるか?」
俺はエルに向かって言う。
ただ、エルは首を横に振った。
「いや、だったら力づくで道をあけてもらうことになるんだが、それでいいのか?」
「はあ…力づくなのはいいけど、別にあたいはそういうことを言いたいわけじゃないんだよ」
「どういうことだ?」
「ピエロ、いいんだろ?」
「そうですねえ、わたくしめたちラグナロクがどういうメンバーなのかをあなたたちに知ってもらういい機会になりますからねえ」
「もしかして、お前ら…」
「どういうことですか、ただし」
「最初に出会ったときのことを覚えているか?」
「ええっと、アクアでの出来事ですか?」
「いや、最初にジークと戦ったときのことだ。そのとき、こいつらは何をしようとしていた?」
「それは頼りない勇者を殺そうとして…そういうことですか…」
「ふむ、なんじゃ、勇者を殺すのかおぬしらは?」
「いえ、全ての勇者ではないのです。わたくしめたちがそうする勇者は、人に害をなすもの、勇者としてふさわしくないものに限りますのでねえ」
「ということは、おまえらは今俺が言ったやつのことを殺すつもりってことなのか?」
「そういうことになりますかねえ」
「そうか…だったら、戦うことになるな」
「どうしてでしょうかねえ?話しを聞いている限りでは、殺してもいい相手だと思うのですがねえ」
「確かにな…」
俺だって言っていることが、間違っているのではないかということはわかっている。
この世界の人にとって、勇者が害をなすということを考えればかなり厄介なのだ。
理由としては簡単だ。
普通の人よりもあきらかに強いスキルを持っているからだ。
俺だって、ヘンタイスキルがなければ、どの相手にだって簡単に負けていた可能性が高い。
でも、ここまでやってこれたのは転生者ということと、今はどうなっているかわからないが、神がたまに渡してくれたアイテム、それとヘンタイというスキル。
あとは仲間たちがいたからだ。
そんな仲間たちの前で、人を殺すということをしたくないということもあるが、俺自身がそういうことを全くしたことがないのだから、できるとは思えないこと…
後は簡単だ。
命乞いをされると油断をしてしまいそうだからだ。
よくある、命乞いをした相手に油断して逆にやられるか、もしくは逃げられるかということになる。
だから、相手を完全に無力化するには…
「ヘンタイ仮面をもう一人つくるか…」
「おぬし、何をやる気なのじゃ…」
「いや、だってな。俺は人殺しとか非人道的なことはできないんだ」
「へえ、あれだけ強いのにそれができないのですねえ」
「こう見えても、弱いんだ」
「そうなんですねえ、でも、わたくしめたちは勇者を殺しに行きますよ」
「ふ、大丈夫だ。俺が死ぬよりも怖いことを教えてやるからな。ヘンタイの伝説ってやつだ」
「まさか、ただしはあれをやるというのかじゃ?」
「当たり前だろ、俺はあれくらいしかできない」
「なんですかねえ、なにか面白いことをしているのですかねえ」
「まあ、ちょっとした俺のことだ」
「そうなんですねえ」
「ああ、とりあえず、俺たちを戻してくれ」
「そうですねえ、どうせわたくしめたちも行きますからねえ、それについてくるのであれば勝手にすればいいと思いますねえ」
「そうさせてもらう」
「なんだ、話はまとまったのかよ」
「そうですねえ、お願いしてもいいですかねえ」
そうしてエルがゲートを開く。
場所は、俺たちが囲まれた場所ではなく、少し見たことがあると思ったら、どうやらギルドの建物の屋根上みたいだ。
いるのは俺とヤミ、シバルの三人と、ラグナロクからはジークとエンドが来た。
「あれ…あれだけ言っていたピエロは今回のメンバーじゃないのか?」
「ただし、あなたはピエロと戦ったことがあるのでしょう?」
「あるな」
「だったら、わかるとは思いますが、ピエロは事前の準備をしなくては本来の強さを発揮できるものではないのです」
「確かにそうだな。でも、そんなことを言っていれば戦いをできないんじゃないのか?」
「確かにそうですが、今回は勇者ですからね。万全を期してということです」
「そういうことかよ。それで、エンドは戦えるのか?」
「ふふ、面白いことを言いますね。わたしは、ラグナロクでは一番強いんですからね」
「そうかよ、じゃあ、どっちが速く勇者をどうにかするか競争になるな」
「そうですね」
こうして俺たちとラグナロクは勇者をどうにかするべくその場を後にするのだが…




