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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと勇者たち

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157話

「地味じゃなあ」

「うるさい」

「ですが、うまくいってますよ」

「ほらな」

「そのドヤ顔イラつくのじゃ」


そんなことを言われながらも、俺たちは今のところうまくやっていた。

何をやっているのか?

そうこれはあれだ、よくあるゲームでもあったやり方だ。

石などの投擲するものを使ってそちらに気をそらし、あとはこそこそと隠れながら歩くというものだ。

そこに用意したのが樽だ。

この世界の飲み屋というところの近くを通ったさいに、よくあった樽のことは知っていた。

その中に三人で入り、こそこそと壁際を移動していく。

こちらに意識が向くと、石を見えないように投げて警戒させる。

さすがに相手も樽の中に入って移動しているとは思わなかっただろう。

ただ、問題点があるとすれば…


「せまいのじゃ」

「仕方ないだろ、全員で移動するのが一番手っ取り早いからな」

「いえ、ボクも気になります」

「シバルもなのか?」

「はい」


まあ、確かに俺も気になってはいる。

この密着度にはさすがに女の子たちの匂いがきつすぎて、酔いそうだ。

ただ、そのおかげなのかヘンタイスキルはしっかりと発動している。

はあはあ、蒸れた女性の匂い、たま…

いや、違う違う。

俺はそんなヘンタイな至高にはなっていない。

大丈夫だ、落ち着いて進むんだ。

そのためにもしっかりと確認を…

そう思っていたはずなのに、俺たちは前ばかりを気にしてた。

だからだろう、地面にある段差に思いっきり躓いた。


「は!」

「へ?」

「ほ、なのじゃ!」


ドサッと倒れる俺たち、そしてそのまま樽は割れる。

蒸れた匂いから解放されたが、それだけではない。


「あー、これはまずいな」

「まずいじゃないのじゃ、見つかったのじゃ」

「どうしましょうか?」

「決まっている!行くぞ」


俺たちは駆けだす。

急な俺たちの登場に驚いて硬直していた見張り役たちを無視していく。

それでも、すぐに役割を思いだしたのだろう、一人の騎士が言う。


「守れ!」

『は!』


守りを固められる。

ただ、俺には今ヘンタイスキルが発動している。

それに、武器はさっきできた。


「なに!」

「ふ、扉を開けるとき、板を使うといいってどこかで読んだ気がしたからな」


俺は樽に使われていた木の板を両脇に抱えて突撃していた。

閉じられた扉を木の杭で破壊する。

よくあるシーンだ。

うん?

普通はもっと紐とかで振り子の要領を使って勢いを増したもので行うって?

残念だったな、俺たちにはそんな便利なものをもっているわけがない。

だから、こうやって突撃している。

ただ、相手はそんな俺の予想外な動きに対応できずに、扉が開くのと同じように吹き飛ぶ。


「ぐは…」

「やるのお」

「まあ、ここまでうまくいったのはたまたまだ」

「それで、これはどうするのじゃ?」

「いやあ、これはさすがに多すぎでは?」


扉を開けるまでは確かによかった。

でも、扉の先に待ち受けていた人たちの多さに驚きを隠せないでいた。

それほどまでに多かったのだ。


「おいおい、こういうのって中に入ればなんとかなるもんじゃないのかよ」

「わらわもそう思っておったのじゃ」

「ど、どうしますか?」


さすがの普段冷静なシバルですらも、この状況には驚いているようだ。

このままでは捕まる。

そう思っていた。

ただ、こういうときに声が上から聞こえる。


「なんだ?ピンチなのか?仕方ないから助けてやるよ」

「この声は!」

「ほら、飛んできな」

「了解だ」


俺はその声に聞き覚えがあった。

だから、それを信頼するとここで決死の戦いをしようとする二人を両脇に抱えた。


「え?」

「なんじゃ?」

「行くぞ」

「ええええええ」

「なんなのじゃあああああ」


そして、俺たちは黒い穴に吸い込まれた。


「イタ!」


すぐに俺は尻餅をつく。

両脇に抱えていたおかげで、二人はなんともなってはいなかったが、景色が急に変わったことに驚きを隠せないでいるようだ。

そんな二人とは違い、俺はすぐに上から影がさすのを感じると顔をあげる。


「おい、わかってたんだろ、どうして受け身をとらないんだよ」

「まあ、デレを見れないからだな」

「はあ?別にあたいはデレてなんかないぞ」

「そうかよ」


と言いながらも手を差し出してくる彼女は、黒い肌に長い耳。

ダークエルフのエルだ。

ワープという黒い穴を作り出して転送できるスキルを持つ女性だ。

そして、ここでエルが助けてくれたということは…


「おお、全員勢ぞろいってやつか」

「最初はあたいへの感謝の言葉が必要だとおもわないのかよ」

「おう、そうだな。ありがとう」


俺はそう言いながらも、頭をなでる。


「そうそう、感謝は行動でも示さないとだよな」

「ああ、だな」

「って、やめろ」

「なんだよ、せっかく感謝を態度で表していたっていうのに」

「絶対あたいのことをバカにしてるだろ」

「そんなことはないぞ、なあ」

「わたくしめにそういうことを言わなきでくださいよお」

「それじゃあ侍のおっさんにか?」

「何もいわまいよ」

「じゃあ、当主さんか、ほれ正義マンでもいいぞ」

「…」

「正義マンと僕のことを呼ぶのはやめていただきませんか?」

「そうかよ。それで、シバルは何をしてるんだ?」

「それは、構えています」

「しなくていいぞ」

「どうしてですか?前は特例でしたが、今回はこの人数…襲われれば簡単にやられてしまうのです」

「確かにそうだけどな。ということらしいぞ、当主さん」

「いえ、こちらが襲うことは全くありえませんよ」

「だそうだぞ」

「そんな言葉だけでは信用できません」

「だそうだぞ、ヤミ」

「なんじゃ、なんじゃ、わらわに話題をふるのでない。というか、わらわにはそういうことを言われてもわからないということがわかっておるじゃろ」

「そうかい…シバル、俺はラグナロクという組織のことをそこまで知っているというわけでもないが、それでも助けてもらったんだぞ…」

「た、確かにそうですね」


ようやく納得してくれたようで、武器を収めてくれた。

これで、ようやく気になったことを聞けるな。


「それで、俺たちをどうして助けてくれたんだ?」

「おい、あたいの方を見て聞くな」

「だそうだ、ピエロ…」

「わたくしめが説明係なのでしょうかねえ?」

「仕方ないだろ、なんとなく参謀感があるってことじゃないのか?」

「そういうものなのでしょうかねえ」

「ああ、まずはここはどこだ?」

「そうですねえ、アジトの一つと言っておきましょうかねえ」

「ふ、お前が言うと、嘘にしか思えないけどな」

「どうなのでしょうかねえ、わたくしめの言っていることが嘘か真なのかは、あなたのみが知るということでしょうかねえ」

「そういうところが面倒くさいんだよ」

「まあ、ピエロというものなのですから、少しは話し方に特徴があるのも仕方ないものだと思っていただけるとよいのですがねえ」

「わかったよ。それで、目的は?」

「わかっているのではないのですか?」

「勇者の見極めか?」

「さすがですねえ」

「はいはい、男に褒められたところで、何も嬉しくないぞ」

「では、その勇者についてはあなた方のほうが知っているでしょうしねえ、話を聞かせていただけるといいんですがねえ」

「そうだな。俺たちも、これからのことを含めて、少し整理しておきたいしな。いいぞ」

「それは嬉しいですねえ」


俺はこのオンスフルで起こっていることをラグナロクのメンバーに向かって話した。


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