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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと勇者たち

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155話

「変身!」

「ただしのスキルを考えれば仕方ないことだけど、見た目がね」

「そういうことは言わないでくれ」


俺はすぐにパンツを被ると応戦していた。

こういうところで、俺以外のアイラたちなんかは別にスキルを使わなくてもかなり強いのだが、俺はというとそうではない。

スキルを使わない場合は一般人と大差ないのだ。

それくらいには弱い。

だからこそ、スキルを発動する必要があるのだが、相手含めて知らない連中にはばかにされるのが通例だ。

そこで黙らせるのが、ヘンタイスキルではあったが、問題点もあった。


「やべえ、ストッキングがない」

「別にあってもなくても、一緒じゃないの?」

「いや、あれがあるのとないとじゃ全く違うだろ!」


そう、武器であり、防具でもあり、拘束具でもある、あのストッキングが俺の手元にないのだ。

普通で戦うといっても、使うのはこの拳のみになってしまった。

こんなことが起きることを最初からわかっていたのなら、すぐに買いに行っていたのに…

そんな俺たちの会話を聞いて、余計に囲んでいたやつらは笑う。


「なんだ、なんだパンツを被るだけでは飽き足らず、そんなものまで使わないと戦えないのかよ!」

「いや、やられたときの言い訳にしているだけかもしれませんよ」

「確かにな」


下品に言う男に対して、俺はすぐに動いた。

前に踏み込む。

大勢の人に囲まれているということは、それだけ俺のことをヘンタイと思っている人がいるということになる。

俺のスキルは、ヘンタイだと思われれば思われるほど、強くなる。


「へ?」

「ふ!」


男からすれば、急に俺が現れたと思われたのだろう。

俺は男を殴り飛ばす。


「うん?なんだ一撃で気絶したのか?」

「な、なんだ今の速さは!」


その速さに驚いた敵たちとは違い、俺は弱さに驚いていた。

これまで戦ってきた相手がいかに強かったのかがよくわかるな。

俺程度の速さを簡単に見失っているようでは、少しでも強いやつらと戦ったときには、簡単にやられてしまうからな。

そんなことを考えながらも、俺は次のやつらを殴る。

その間にも、他のみんなも同じように倒していく。


「もう少しみためがあれなら、カッコいいのに…」


アイラはぶつぶつとそんなことを呟きながらも、セイクリッドで再度新しいものを作ることになった、棍棒によって敵を近づけることもなくしばいている。


「ふふ、ほらほらほら、もっといい声で鳴きなさい!」


バーバルは、ほら、うん…

いつも通りなのかもしれない。

シバルも堅実に敵の相手をしているが、どこかぎこちなさは否めない。

まあ、自分のことが片付いていないからだろう。

ヤミはというと、じじいとミライ、ジルの守りをしてくれている。

ジルとじじいは仕方ないとしても、ミライにはもう少し戦力になってほしいものだ。

よくある、未来を視るスキルで、全ての攻撃を避け、自分の攻撃を当てる。

そんな戦闘を見たことも多いが、ミライに関してはそんなそぶりが全くないのだ。

これはあれだな、修行が必要になってくるのかもしれないな。

俺はそんなことを考えながらも、相手をすること数分、そこにはうめき声をたてながら倒れる団体さんができあがった。


「一応なんとかなったが、ここからどうするかだよな」

「何かやりたいことがあるの?」

「拘束とか、そういうことだな」

「なるほどね。いつもストッキングでやってたものね」

「まあな」

「縛るものがあればいいんじゃないの?」

「縄とかか?」

「うん」


その言葉を聞いて、俺たちのパーティーを見たが、誰も持っている様子はない。

まあ、そうだよな。

馬車にあることはあるが、まだ町に入ってから、それほどまでに時間がたっていないというのに、これだけのことが起こっていることを考えると、馬車が奪われていないのかも心配だ。

一応預かりやというものが町に入ってすぐにあるので、そこに預けたのだが、宿屋で休みをとることもなく、ここまでのことが起こるとは思っていなかった。


「シバル、馬車に戻るっていうのはどう思う?」

「難しいと考えるべきですね」

「そう思うよな」


ということは、セイクリッドに行くのさえも、徒歩でという、鬼畜の所業を行わないといけないということなのだろうか?

そんな俺の雰囲気を察したのだろう、シバルは何かを考える。


「ここは少数精鋭ということで、馬車を見に行くのはどうでしょうか?」

「それはいいけど、誰が行くのがいいと思う?」


そこでお互いに顔を見合わせる。

これだけの大所帯だ、さすがに厳選した人だけじゃないと、厳しいだろう。

といっても、俺たちのパーティーメンバーで馬車を運転できるのは俺とシバルだけなので、どちらかが馬車に行くしかないことは決まっている。

まあ、シバルと俺とであれば行くのは俺になるだろう。

簡単にいえば、攻めと守りをヘンタイというスキルでこなせるのが俺だからということもあるが、身軽という意味でも俺が適任だからだ。

後は誰がいいかだよな…

俺がそう思っていると、シバルが言う。


「ここはボクとただしで行くのがいいかと…」

「だけど、シバル…それだと何かあったときに俺たちしか馬車は運転できないのに、二人が一緒に行くのはまずいんじゃないのか?」

「はい、それはそうなのですが…逆にいえば、一緒に行くことによってどちらかが馬車に辿り着ければ、運転できますから」

「確かに、どっちかが辿りつけばいいというのと、俺かシバルのどちらかしかがたどり着けないと無理では、成功度が全然違うよな」

「はい、だからボクとただしで行くのがいいと思います」

「なるほどな。あとは、ヤミを連れていくか?」

「ヤミさんをですか?」

「ああ、いけるかはわからないが、ドラゴンになれば逃げられるだろ?」

「なんじゃ、結局はわらわの力を借りないといけないのじゃな?」

「その機会があればな」

「なんじゃ、その態度はあ。わらわが優秀なドラゴンだということはわかっておるじゃろ」

「まあな…」


これで話はまとまったな。

俺は、アイラたちに向き直る。


「それじゃあ、こっちはアイラたちに任せるぞ」

「任せなさい。ミライは頼りないけど、他のみんなは頼りになるからね」

「そうだな」

「ちょっと、二人ともそんなに失礼なことを言わないでよ」

「それじゃ、行くか!」

「はい」

「仕方ないの」

「ちょっと、訂正していきなさいって!」


俺たち三人は、ミライの言うことを無視して馬車を取りに行くべく、その場を後にした。


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