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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと勇者たち

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151話

「ここがそうなんじゃな」

「ああ…ただ、なんとなく嗅ぎ覚えが…」

「ただしも、そう思う?」

「わたくしも…」

「なんか、そんな気がするよな」

「なんじゃ、おぬしら、わらわは先に入っておるからの」


そう、紹介された料理屋についたのはいいのだけれど、そこから漂ってくる匂いは、どこか知っているものだ。

それも、看板には…

合わせるもの、それこそが至高の美味しさへとさらなる高みに連れて行ってくれると書かれている。

あれだな。

入ってみないことにはわからないよな。

先に入ったヤミをこのままにすることはさすがにできないので、俺たちはお店に入った。


「らっしゃっせーい」


そんな言葉とともに出迎えてくれたのは、何か見覚えがあるようなハゲ頭の男だ。

どこかで会ったことがあるのだろうか?

俺が疑問に思っていると、ハゲ頭の男はあーっと声をあげる。


「あのときの兄貴じゃないですか、お久しぶりです」

「お、おう…」

「誰なの?」

「いや…」


さすがに俺も誰かわからず困惑していると、次はアイラに向かって頭を下げる。


「おう、姉御じゃないですか。あのときのホーリーバリアは最高でした」

「ホーリーバリアって、もしかしてあのときの盗賊!?」

「はい、そうですぜ」


うーん、盗賊だと…

よく思い出せないな…

そんな俺とは違い、アイラはわかったらしく、会った場所のことを教えてくれた。


「あの、バーバルを助ける前のやつね」

「うーん…ああ!あれか、アイラのホーリーバリアを素手で殴ってきた」

「そうですぜ、あのときに力の差に愕然としたワシらは、ただしの兄貴が作る料理を見て、衝撃を受けたのです」

「そうなのか…」

「はい。これまで料理は出されたものはそのまま食べる。作ってくれた人にしっかりとした感謝を持つためにという認識が強かったのですが、組み合わせて食べるという良さをしったワシらは、このお店を開いたってことですぜ」

「なるほどな」


そこで納得する。

要するに、盗賊でやってきたけど、アイラというわけのわからない強さの修道女魔法を前にして、何もできないと悟ったこいつらは、盗賊業を諦めて、さっさと料理人になったというわけか…

なるほどな。

俺たちが更生させたって感じになるのか…

そんなことを思っていると、すでに食事を食べていたヤミが俺たちを呼ぶ。


「おーい、おぬしらも食べるのじゃ!」


そして、俺たちは各々食事を楽しんだのだが…


「二人とも、よく食べるな…」

「そう?」

「そうかな?」


最後まで食べていたのは、アイラとミライだ。

確かに、ハゲ頭たちが作った料理はおいしかったが、それにしてもかなり食べることに驚いた。

修道女といえば、確かに質素な食事をとるというイメージが強かったので、そこから美味しいものをよく食べるということになったのだろう。

ただ、それでも食べすぎたとは思うけれど…

そんな俺たちの視線に気づいたのだろう、二人は動きをとめる。


「何かあったの?」

「いや、よく食べるなと思ってな」

「それは当たり前でしょ、私もミライも育ち盛りなんだからね」

「そ、そうか…」


俺はアイラの胸と、ミライの背を見たのは言うまでもない。

二人の視線がかなり俺にはきつかったのも、言わなくてもわかるだろう。

そんなことがありながらも、食事を終えた俺たちは次に鍛冶屋に来ていた。

行くのは、最初のときに行ったあの場所だ。


「おお、じじいは健在だな」

「おう、お主らか、久しぶりよの」


鍛冶屋について、一番最初に会いに行ったのは、ゴットハンドスキルをもつという、ゲンタだ。

これによって、鍛冶屋を含めて全てのことを行っているらしい。

これについては、後々聞いてびっくりしたものだ。

ゴットハンドというわりには、観察眼に優れているような気もするが、そんなことを思っていると、ゲンタは俺たちを見て言う。


「なんじゃ、お主らは面白いやつたちを仲間にしておるのか」

「へえ、触れる前にわかるのか?」

「こう見えても、できるじじいだからの」

「そういうものなのか?」

「当たり前よの、人生経験の長さがあるからの」


言っていることはなるほどだよなと思いながらも、俺はヤミの方を見る。

俺の視線に気づいたヤミはさっと目をそらす。

自分の方が明らかに年上なのに、そういう経験を生かした何かができていないからだろう。


「それで、ここに来た理由はなんとなくわかるが、武器を求めてやってきたのか?」

「お願いできるのか?」

「任せろといいたいのだが…ワシにはもう工房がないからの」

「ううん?どういうことだ」

「まあ、話せば長くなるが聞いてもらえるかの、じじいの話を…」


そうして話してもらった内容というのは…

かなりひどいものだった。


「まじかよ、勇者がもう一人いるのか?」

「うん?お主たちも出会ったのか?」

「いや、話を聞いただけだけどな」

「まあ、そのことがあるのでな、武器を作るということが難しいの」

「そうか…」


じじい…

ゲンタから聞いた話というのは、無理やりに武器や防具を創れという勇者たちの要望だったようだ。

それも、俺たちが誰も知らない。

飛び道具を使うやつらしい。

同じ武器を、ゴットハンドスキルを持つ、ゲンタであれば作れると思ってのことらしい。

そいつは一人でやってきたらしい。

それに、アイラも気になって聞く。


「結局、その勇者が使っていたのは、弓矢ってことでいいの?」

「いや、それが火薬というもので、弾を飛ばす武器みたいだったの」

「なんでしょうかね…」

「わからないわね」

「わらわも聞いたことがないの」


火薬によって弾を飛ばすと聞いて、アイラやミライたちはわからないみたいだったが、俺には覚えがある。

銃ってやつだ。

剣と魔法の世界で、それをやっていいのかと疑問に思うくらいには、ヤバい武器だよな。

ただ、それがアイラたちの修道女魔法で防げないとは思えないので、強いのか弱いのかがわかりにくい武器だ。

まあ、そのあたりについてはスキルで補えるということか…

今はそのことを考えても仕方ない。


「とりあえずは、ゲンタの工房を探すところから探さないといけないよな」

「そうね」


そうして、俺たちはこの場を離れようとしたときだった。

人影が現れる。


「やっぱり、こうなるのか…」


俺はゲンタの話を聞いたところから、こうなることは予想していたのだが、こんなに速く来たということに少し驚いていた。

人影は一人、まあ見なくてもわかる俺は、その男に言った。


「勇者だな?」

「へえ、わかるのかよ」

「なんとなくな」


俺たちは新たな勇者と顔を合わせたのだった。


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