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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと勇者たち

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149話

今のところわかっている勇者があいつと、どこかに去ったと思われる戦闘大好きなやつだ。

場所がわかっているのは、あの勇者だけなので、会いに行くのはそいつになるわけだけど…


「うーん、なんだかな…」

「なんだかね…」


俺とアイラはそれを見て、そう口にして、他のみんなはバカを見る目だ。

それはというと、町についた途端に勇者が犬のようにこっちによってきたのだ。

それに対して、俺とアイラは諦めたような顔をして、他のみんなはというとそういう目をしたという感じだ。

さすがに、あんなことがあったとしても、勇者が嬉しそうによって来るというのは、傍から見れば、おかしな感じだからだ。

まあ、今回よかったのは、ミライとアイラがここにいることだろう。

アイラは、あのことがあってからこの町では有名だし、ミライはセイクリッドの有名人ということで、それなりに知られているらしい。

この世界に来て、まだ日がたっていない俺からすれば、いろいろ疑問なことが多いが、俺以外の女性が多い、よくないパーティーメンバーになってしまったなということだけがわかる。

これじゃあ、目の前にいる勇者と同じじゃないか…

そんなことを考えながら、勇者が俺に話しかけるのを聞いていた。


「ただしさん、お久しぶりです」

「お、おう」

「そちらの方は、俺も少し聞いたことがあります、予知姫様ですよね」

「そういう呼ばれ方をしていたのか?」

「えっと、少し前の話だけどね」

「そんな有名なかたも仲間にされるとは、さすがのただしさんです」

「あ、ありがとう」


かなりグイグイくるんだけど…

勇者が、こんなに尻尾を振るみたいな感じでいいのか?

俺が疑問に思っていると、勇者の後ろにいた女性が減っていることに気づいた。


「あれ?パーティーメンバーは減ったのか?」

「は、はい。これからのことを話しあっているうちに…」

「そうか…じゃあ、未だに残っているメンバーは大事にしないとな」

「はい」


俺がそう口にすると、勇者は笑顔だ。

そして、後ろの女性たちも嬉しそうにしている。

なんだ、このいい雰囲気は…

も、もしかして…

俺は勇者の耳元に囁く。


「(もしかして、やっているのか?)」

「(何をでしょうか?)」

「(そりゃ、男と女がやる、チョメチョメなことだよ)」

「(は、はい。それはもちろん。ただしさんも、あれだけの女性がいるんですからお互いに、それくらいはしませんか?)」

「(いや、それは…)」


俺は女性陣を見渡す。

急な俺の視線に首をかしげている。

く…

俺だってな、パーティーメンバー全員が、かなりの可愛さだということはわかっている。

だけど、女性の誰かと仲良くなるなんてことは…

そのときにアイラと目が合う。

アイラは不思議そうにしているが、俺は先ほどの話から、アイラとキスしたことを少し思い出してしまってほんの少し顔が熱くなる。

普通に意識をしてしまった。

アイラがセイクリッドであんなことを言うから余計に意識をしてしまう。

あの後は、忙しかったこともあって二人きりになることがなかったから、大丈夫だとは思っていたのに、こんなときに意識してしまうとは…

このなんともいえない雰囲気になったときだった。


「あ、アイラ様」

「ジ、ジル?」

「はい、この町に帰ってこられたんですか?」

「まあ、いろいろあってね」


この雰囲気を壊したというべきか、普通に戻したのは、ギルドで受付嬢をしていたジルだった。

いつもの受付嬢の服装ではないところを見るに、お出かけか何かだったのだろうか?

でも、このタイミングで出会うとはなかなか驚きだ。

そんな今の場所は、今更ながらに町にあるギルドから近い場所の入り口を入ったところだった。

元指名手配を受けていたので、捕まることがあるのかなとも思ったが、そういうこともなかったので、簡単に入れて、入ってきたのを待ち受けていたかのように勇者がこちらに向かってきたのがさっきまでの流れだ。

これには、ちゃんとミライのヨチスキルによって、どこに勇者がいるのかや町に入ると捕まるのかを先に視ていたから、余裕をもってここにいる。

まあ、受付嬢に出会うことについては、そこまで聞いていなかったので、驚きだった。


「町に戻ってきたのは、何か用事があったからなのですか?」

「えっと、勇者についていろいろ知りたくなってね」

「なるほど、勇者についてですか?」


ジルの質問にアイラがそう答えると、ジルは俺といる勇者のほうを見る。

ああ、勇者はここにいるからな、本人に聞けばということなのだろう。

ただ、この勇者が、自分のことをちゃんとわかっているのかと言われたら、怪しいからだ。

それでも聞かないわけにはいかないのだろう。

ジルは勇者に質問する。


「勇者様」

「はい、なんですか?」

「町に帰ってきてから物腰も柔らかになられて、依頼も精力的に活動になられたのは、何かあったのですか?」

「いや…少し衝撃的な体験をして、勇者として自覚したという感じですかね」

「そうなんですね」


確かに、しゃべりからして前までの俺様な感じはなくなっている。

それが、ヘンタイの姿をした俺にボコボコにされたなんてことは言えないことはわかっている。

ただ、聞きたいところはそこではない。

ジルはさらに質問をする。


「それで、勇者とはどういう存在なのでしょうか?」

「勇者ですか…それについては、神から選ばれた存在ということくらいしか、俺もわかりません」

「えっと、どういうことですか?」

「神に与えられた情報はかなり少ないということですね」


その勇者の言葉に、さすがの俺もツッコム。


「そんなに情報は少ないのか?」

「はい。勇者に与えられる情報は、魔王を倒せば世界は平和になり、願いが一つ叶うということくらいですね」

「まじかよ。そんなので、よく勇者をやろうとしたな」

「それは…」


いろいろあるということか…

確かにこの勇者も、俺をまさかの殺した人物ということらしいので、そこから人生の転落を味わったということから、そんな荒唐無稽な話ですらも気にするようなことでもないと思ってしまったのかもしれない。

そして、後のあいつもかなりヤバい奴だったな。

戦闘大好きで、強い奴と戦えればそれでいいと思っていたやつだ。

あいつであれば、魔王という強い奴と戦うためであれば神様の願いというよりも自分がやりたいことという意味では、普通に勇者として向いているのだろう。

なるほど、そこを考えると、勇者は前世で満足していなかった存在ということになるのか…

やり残した後悔というべきか、それがあるからこそ、魔王を倒して願いをかなえる存在になればいいのにということだろう。

ただ、それにしては、この勇者は弱すぎる気がしたが…

俺が勇者の方を見ると、言いたいことがわかったのだろう。


「あのときは、調子にのっていたので…」

「いや、それはいいんだけどな。気になったところはそこじゃないんだよな」

「気になったのは、どういうことなんですか?」

「勇者と普通の人との見分け方というのはあるのか?」

「見分け方ですか?」

「ああ…俺たちでは普通の人と勇者の見分け方がわからないな」

「なるほど、そういうことですか…」

「わかるのか?」

「はい、簡単にいえば、魔力の波長です」

「魔力の波長?」


急に俺には、絶対理解できない言葉がでてきたことに驚いた。

魔力がない俺にすれば、全く理解できないことだろうけれど、それに気づいていない勇者はさらに言葉を続ける。


「魔力というのは、人によって違いがあるのはわかりますか?」

「それくらいはね…」

「そうですよね。魔力の違いによって、普通魔法、修道女魔法、剣術とありますよね。それが勇者のみ、そのどれにも属さない系統の魔力の波長をもっています」

「それはわかったんだが、どうやって魔力の波長を調べるんだ?」

「これです」


それに対して、勇者は指でわっかを作って目に当てる。

いや、そんなことをして何ができるというのだろうか…

俺はそう思っていると、勇者は俺たちを見る。


「なるほど…」

「いや、そんなことをして何が見えるんだよ」

「魔力の波長がこれで視えます」

「いや、それはどんなチートスキルなんだよ」

「勇者に選ばれると、これで相手のことを簡単ではありますが、わかるというものですね」

「マジかよ…」


これが、勇者としてのチートな能力ということなのだろうか…

さすがのことに、俺以外は誰も驚いて何も言えない。

理由はよくわかる。

急にこんなことを言われれば、どうしていいかわからないよな。

こういうのって、普通に考えればアーティファクトとかを使ってやれることだよな。

それが、ただふざけたような虫眼鏡!

みたいな恰好をするだけで見えるようになるというのは、勇者だからなのだろう。

まあ、だからこそ、少し気になることを聞いてみる。


「それで、この中で変わった人はいるのか?」

「そうですね。俺がわかるのは、ただしさんのパーティーメンバーは全員が個性的ということくらいでしょうか」

「なんじゃそりゃ…」


よくわからない言葉に、戸惑うことばかりだ。

ただ、個性的という言葉とともにヤミの方を見たということは、どういう存在なのかわかったのだろう。

そこを黙ってくれているというところは、優しさか…

それでも、次の勇者の言葉に、俺たちは驚いた。


「そういえば、最近他の勇者の人と出会いましたよ」

「え?」


それを聞きたかったんだよなと思いながらも、時間がたって注目されていることにようやく気づいた俺たちはギルドへと移動したのだった。


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