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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは聖域を犯す

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138話

ただしの隣にはミライがいた。

私じゃなくて…

ここに助けにくるのだから、ただしやシバルが来るものだと思っていた。

それなのに違った。

それも、どこか仲良さそうにしていたのだからもう私がいらないと思ってしまっても仕方ないことだと思う。


「私はいらない子になったんだね」


独り言を口にするが、それに反応が返ってくるというわけではない。

だって仕方ないじゃない。

私は選ばれなかった、それだけのことだから…

いつだってそうじゃない。

今に始まったことじゃないのに、どうしてか涙がでる。


「同情してくれる人もいないのに何をやってるんだろ…」


ミライとただしの二人が出て行った扉を見ながら、そんなことを口にする。

セイクリッドに帰ってきて、そこからはただあいつのいいなりとして、今はこんな格好をして…

そんなときだった、外から戦闘音が聞こえる。

戦っているの?

私は立って、再度座る。

そうだった…

今、ただしの隣にいるのは私じゃなかったんだ。

だから行かなくてもいいんだよね。

それでも戦闘は終わっていないのか、話声なんかも聞こえる。

ただ、それでもただしたちが負けるはずがないと思っていたときに、ドンという音とともに建物が揺れる。

誰かが破壊するために、攻撃をしたのがわかる。

ここから出て行こうと再度立ち上がるけれど、また座る。


「行ったところで何もできないよね」


私はこれまでの冒険者としてやってきた日々をどことなく思い出していた。

シバル以外は、出会ってあまり時間がたっていなかったが、それでも楽しかったし、息のあったコンビや、いろいろな冒険含めて、かなりの時間をともにしてきた。

だからみんなと離れたくないと思ってしまう反面、私には何もできないのだと、どこか感じてしまうこともある。

ただしたちと冒険しているときには、苦難だって、強敵の相手だって、かなりの数行ってきた。

だからこそ、隣に立っているのが自分じゃないというだけで、こんなにも打ちひしがれている。

私を縛っているものはない。

普通だったら、このまま部屋を飛び出して、ただしたちの元へ行っていたのに、それができない…


「何やってるんだろ…」

「本当にね」

「え?」


突然聞こえた声に、私は驚いてそっちを見る。

そこにいた人に、私は驚いて目を見開く。


「どうして、こんなところにあなたが…」

「それは、あなたがピンチだから。ピンチのときに、駆け付けるのが母親だから」


そんな言葉を言ってきたのは、私の母親だった人だ。


「今更、どうして来たの!」

「それは、だってあなたがピンチだったから」

「そんなのいらない。私は別にピンチでもなんでもない」

「そう?」

「そうよ!」


私は久しぶりに見た母親に、すぐに説教をされるという最悪な状況に言い返す。

ただ、母親も黙ってはいなかった。

さらに私に近づくと言う。


「だったらちゃんと立ちなさいよ!」

「なんで…」


あなたに言われなくちゃいけないのよ。

私はそう言おうとした。

でも、できなかった。

目の前にいる母親の顔に大量の脂汗が浮かんでいたから…

必死に私に訴えかける、その表情と同じように何かを我慢しているようだ。


「私みたいになっちゃダメなのよ」


その言葉とともに、母親は胸を押さえる。

何かを必死に我慢している状況に、私は言葉失う。

どういうことなの?

だって、母親は…

私の母親は私のことを売ったんじゃないの?


「ごめんね、こんなときに、こんな言葉しか言えなくて、それでも私はあなたが一番大切だから…」

「だったら、どうして…」

「私と一緒にいたら、あなたを不幸にしてしまうから…」


そう言った母親の顔はどこか悲し気で、そしてうつろになりつつある。

そんなときだった。

一人の女性が入ってくる。


「ちっ、少し目を離したら、これか!」

「アイラ、逃げなさい!」

「ふん、逃がさないよ。我の前に絶対通さない聖なる壁を作りたまえ、ホーリーバリア」

「え?」


私が驚いていたときには、すでに周りをバリアが出来上がっている。

わけがわからないまま、私は状況を母親の背中から見ることしかできなかった。

そのときだった、魔法の炎が飛んできた。

私が防がないと、そう思っていたが、母親は手を前に出すと唱える。


「く、我の前に壁をバリア」


飛んできた炎はそのバリアで防がれるが、母親はそれだけで満身創痍という感じだ。

何がどうなってるのよ。

私がわからないでいると、一人の男が部屋に入ってくる。


「やれやれ、あなたは速すぎますよ」

「ふ、おめえが遅いんだよ」

「まあ、これで裏切者はやれますね」

「そういうことだ」

「どういうこと?」


裏切者?

母親が?

わからない単語を聞きすぎて、余計に固まる私を見て、男女は笑う。


「なんだ?何も知らなかったのか?」

「そういうことなんじゃない?だって、知っていたら、こんなところでのんきにしていないものね。あの裏切者のお姫様と一緒でね」

「何が?」

「わからないわよね。母親とあのお姫様に守られていたんだから!」


女性はそう言葉にしながら、持っていた棒で突きを放ってくる。

母親も持っていた棒で迎撃するが、一撃で棒は弾き飛ばされる。

それをつまらなそうに女性は見ると、少し距離を置いた。


「本当に、過去最強だったあなたは、もういないものね」

「最強?」

「そう、元聖女だったのよ、あなたの母親はね。そして、父親は元最強の神官だった」


驚きの事実に、私は何も言えない。

それをいいことに女性は続けて話をする。


「そして生まれたのはあなた。でもね、そのタイミングで悪魔はもう動き出していた」

「どういうこと?」

「セコ・インダー。知ってるでしょ」

「そりゃ、だって…」

「そうね。奴は普通の神官だと、誰しもが言っていた。でも本性は違った。あれは悪魔が乗り移った何かよ」

「どういうこと?」

「気づけば皆が逆らえないように、特殊な薬を製造して、それをこの国に蔓延していた。それをなんとかしようとしたのが、あなたの父親だった。でも、計画は失敗に終わり、父親は処刑され、母親では娼婦に落とされた。そんなときに一人の少女があるスキルを使えることがわかった」

「それがミライ?」

「そう、ヨチスキルを使うことによって、なんとか信頼できる仲間と、そしてうまくあなたを救出した」

「どうして、私なの?」

「それは、簡単な話、あなたならこの国を変えられると思ったんじゃない。そして、あなたは庇護下の元、この国で学びを得た。実際、落ちこぼれてたはずなのに、ものすごい成長速度だったそうじゃない」

「それは…」


確かに覚えがあった。

私には修道女としての才能があったのか、普通よりも強い上級の修道女魔法である、ホーリー系を使うことができていたのだから…

でも、そこで疑問があった。


「それじゃ、どうして今ここにあなたたちのような人がいるの?」

「ああ、これだけ強いのに何をしているのかってこと?」

「そうだよ。私と同じように上級の修道女魔法が使えるのなら、セコにだって立ち向かっていけたんじゃないの?」

「最初は確かにそう思っていた。でもできなかった」

「どうして?」

「家族を人質にとられていたから」

「それは、どうやって…」

「薬があるんだ、あいつの眷属になるな」


なんて卑怯なと思ったけれど、セコのことを考えるとそうだったのかもしれない。

でも、そこで私は思う、そんな薬を普通に作ることが可能なのかということに…


「言いたいことはわかる。セコは、何か得体の知れない何かなのかもしれない。でも、うちらはあいつに逆らうことはできないから」

「ま、そういうことだな」

「だからって、私を攻撃するの?」

「攻撃?違う。うちらは、あなたをここから出さないためにいるだけ」

「そうだな。ここから出て行こうとしない限りは、別に何もしないってだけだ」


出て行かないよ。

私はそう言いかけるが、その言葉は口からでなかった。

それは私を母親が見ていたから…

息をのんでしまってしまうほどの力強い目に私はどうしたらいいのかわからなくなる。

結局どうするのが正解なのだろうか?

私はどうすれば…

そう考えても、誰からも答えが返ってくるわけではない。

でも、なんとなくわかっている、ここで何もしなければ、一生このままになってしまうという恐怖と…

さっきの話からして、今この瞬間にもただしとミライが何かと戦っている可能性が高いのだ。

それを知って、私は今この場にいられるの?

ううん…

無理だ。

だって、なんでかなあ、こんな一大事のようなことがあっても、考えることはただしとミライのことばかり。

私はただしの隣で戦うことをずっとしたかっただけ…

だったら、こんなところで立ち止まっていていいの?


「いいわけないよね」


私は立ち上がる。

そして、前にいる母親含めて、三人を見た。

さっきまでの話を聞いても、私はセイクリッドでも重要な存在だったということなのだろう。

だからこそ、私は…


「私の好きにしたって、いいってことだよね」


びりっと勢いよく、ドレスのスカートを破く。

それを見て、男女は私の方を見た。


「ふん、今更やる気になっても、うちはこの国で現最強なんだよ」

「それで?」

「武器もないのにどうやって戦うのよ」


そう女性は言う。

確かに武器はない。

でも、いつだっただろう。

ミライがあるものを教えてくれた。

修道女魔法には守るためのものや治すものだけが存在している。

でも、守るためには力も必要だから…

それで、棒術というものを扱うようになったらしい。

理由としては、元々、この国を創ったとされる修道女が使っていた魔法が槍に酷似していたからというものだった。

だから、その魔法の名前はなんとなく教えてもらっていた。


「我の手に、守るための聖なる力を与えよ、ホーリージャベリン」


その言葉によって、私の手には光の槍が握られる。


「できた…」

「それは、槍…どうして」

「それは私が選ばれた人だからでしょ」

「そういうことね…これだから才能ってやつは嫌なのよ」

「それなら素直にここを通してもらえない?」

「たおせるならいいよ」

「それなら通させてもらうね」


私は光の槍を構える。

そして私と女性の槍はぶつかりあった。


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