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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは聖域を犯す

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137話

扉を開けると、とうとうというべきか、大きなものが目の前に見える。


「これが、あれの根源ってことか…」


そこにあるのは血が入ってるであろう、大きなビーカーのようなものだった。

かなり圧巻で、ここに入っているものが全部ドラキュラの血だと考えると、気持ち悪く感じる。

俺はミライを壁際に寝かせると、どうするのが正解なのかわからないまま、その前に立つ。


「これは破壊していいものなのか?」

「それは困りますね」

「お前は、セコ」

「ええ、セコです」


俺は構えをとる。

それをセコは面白そうに見ている。


「いやー、そんな恰好をしているということはなかなか面白いスキルを授かっているのでしょうね」

「どうだかな?」

「いやいや、誤魔化さないで大丈夫ですよ。僕もいいスキルをもらいましてね。本当に神様というものには感謝しているのですから」

「そうかよ」

「ええ、だって、僕の創造は最強なのですから」

「ふん、自分で最強だというやつは弱いって、どこかで聞いたけどな」

「それは、本当の強者と戦ったことがなかったからということでしょう」

「どうだかな」

「では、まずはこれを防いでもらいましょうか!」


セコはそう言葉にすると、自らビーカーのようなものを割った。

流れ出す血を、その身に浴びる。

嫌な予感を感じるよりも速く俺は、地面を転がっていた。


「ほう、いい反応ですね」

「ちくしょ、チートみたいな能力しやがって」

「だから言っているでしょ、僕は最強なのです」


セコは血をその身に浴びた。

それだけで、嫌な予感はあたった。

全ての血を制御できるようになったのだろう。

今の一撃も、俺が転がっていなければ、その血でできた槍によって貫かれていた。


「おいおい、こういうのは眷属化するものじゃないのかよ」

「普通であればそうするのかもしれませんが、あなたはいりませんからね」

「どういうことだよ」

「わかりませんか?僕の眷属にあなたのような汚い男はいらないということです」

「そういうことかよ」

「わかりましたか?だったら、踊りなさい」

「くそ」


俺はヘンタイ眼で、なんとか魔力の流れを読むことで攻撃を避ける。

ただ、相手の血の量は膨大だ。

すぐに限界がきた。


「では、行きますよ。血殺!」

「ちいいいいい…ぐうう…」


四方八方から押し寄せる槍によって、俺の体に傷をつける。

なんとか、貫かれるということだけは防いだが、血が流れるのは避けられない。

くそ、どうして転生した世界で、こんな命がけの戦いをしなくちゃいけないんだよ。

それに、結局ここでもパンツとブラジャーだけが俺の強化手段だということも笑ってしまう。

でも、なんだろうか?

ヘンタイスキルをちゃんと使うようになってから、変わると決めたあのときから、俺は自分の時間がちゃんと進んでいるように感じる。

だからこそ、俺はこんなところではやられない。

集中だ。

思い出せ、気の使い方ってやつだ。

俺はこの窮地によって、再度昔を思い出していた。


「ねえ、気の使い方わかってきた?」

「なんとなくな。それよりも、お前パンツ見えてるぞ」

「エッチだね」

「角度的に見えるんだよ」


俺はエッチなことを考えることで、気を扱えるということをなんとなく理解した。

だからだろう、彼女の行動が前よりもどこか積極的に感じてしまう。

といっても、どちらかが好きなどと告白をしたわけではないので、意識をしている程度なのか?

こんなことで動揺してしまうと、どこか恥ずかしいと感じた俺は誤魔化すように横を向いて、パンツから目をそらす。

彼女はあのときと同じように、俺の隣に腰をおろした。


「それで?どういうのがわからないの?」

「ああ。体の外に出すっていうのはなんとなくわかったんだけどな。持続がわからない」

「気を体内にもっておくってこと?」

「いや、気を感じることができることで、それはなんとなくわかるんだが、その後にあるあれだよ」

「えっと、体の一部に集めたままとどめるってやつ?」

「そう、それだ」

「あれね…」


そう言いながら、彼女は少し遠くを見る。

それで、何かを決心したように、うなずいた。


「ちょっと、あっち向いていて」

「ああ…」


前にもこんなことがあったなと思いながら、俺は逆方向を向く。

そんな中で、後ろから聞こえたのは、あのときと同じように衣擦れの音。

なんとなくどぎまぎしてしまっているからか、気は体内でつくられている。

衣擦れの音が終わると、彼女はそっぽを向きながらもあるものを突き出してくる。


「はい」

「こ、これって」

「う、うん」


温かさを感じることで、わかるが、どう考えても脱ぎたてのパンツだった。

これを使ってどうしろって感じだったが、彼女はそのままそっぽを向いて言う。


「それを握って」

「ああ…」

「あとは、そこに気を集中させるイメージ」

「お、おう」


俺は温かさを感じるパンツを右手に持ちながらも、集中した。

いや、集中できるはずもなかったが…

それでも、温かさをもったパンツに気を込めることをなんとなくわかってしまった俺は、右手に気をとどめることができた。

それも、これまでように一定に気を体内から体の部位に常に送るという形ではなく、その場所に気をとどめることで、足で使う技と手で使う技を組み合わせるということが可能になった。

これが、気の分断化と呼ばれているらしい。

生命エネルギーは…

俺にはエッチな想像であり、事象だ。

なるほどな。

今の俺には、まだヘンタイが足りないということか…


「なるほど、なるほど…」

「何を楽しそうにしているんだ?」

「楽しそうにしている?」

「ああ、ここは僕の圧倒的な力に絶望するところだろ?」

「そういうことか…」

「そうだ、今すぐにでもその余裕をなくしてやる。いけ、血殺」


また四方八方から、血の槍が飛んでくる。

俺はきた攻撃に対して、さらに体内に気をためる。


「うおおおおお」

「そんな拳ではじけるものか!」


俺は四方八方からくる血の槍をなんとか拳で弾こうとする。

ただ、そう簡単なものではなく、弾けなかった槍によってさらに体に傷がいく。

それでも、俺はここをなんとかやり過ごす。

満身創痍、そう見えるだろう。

でも、俺は拳を握ることができるし、足も動く。

だったら、俺のヘンタイスキルは…

さらなる高みへいける。


「うら!」


俺は地面を思いきり殴る。

ドンという音によって地面が割れる。

そして間髪入れずに、足を振り上げることで砂埃を巻き上げる。

目くらまし。

この間にやることは決まっている。

俺は懐からあるものを取り出すと、足に装備した。

ふ…

なるほどな。

この感触は実にいいな。

そんなことを思いながらも、集中する。

セコは、そんな俺の悪あがきのような行動に対して笑っている。


「なんだ、結局やっていることといえば、ただの目くらましか!こんなもの、無くなったときが楽しみだな」


すぐに砂埃は収まる。

そして、俺を見たセコは笑った。


「あははははは、なんだその恰好は!」

「笑っていられるのも今のうちだぞ」

「何を言っている、今の僕にいいようにやられているだけのくせに!」

「試せばいいだろ?」

「うるさい!血殺」


セコはそう口にして、先ほどと同じように血の槍を四方八方から降らせる。

傷ついた俺は、別に拳を構えるということもしない。

何も抵抗しないことに勝ちを確信したのだろうセコの口元が笑う。

そして血の槍は降り注ぐ。

ただ、その攻撃は俺に新しい傷をつけることはなかった。


「なに!」

「ふっ…こんなものだな」


戦況が動こうとしている。

そこに二つの声が響いた。


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