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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは聖域を犯す

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132話

「ねえ、アイラ?」

「なに?」

「この国っておかしいと思わない?」

「…」

「素直なことを私に言わないと、悪い未来を教えてあげちゃうからね」

「わ、わかった。おかしいよ」

「そうだよね」

「うん、ミライちゃんもそう思うの?」

「当たり前でしょ、むしろ私は、こんな国を壊したいんだから」

「そう…」


私にそう言う、ミライちゃんはどこか嬉しそうで、楽しそうだった。

そんな私とミライちゃんとの身分は全く違う。

私は、本当に最底辺だった。

仕方ないことなのかもしれない。

このフルネームの通りの最底辺をたださまよっている人間だった、ミライちゃんに出会う前は本当にそう思っていた。

私の親は…

母親しかしらない。

それでも、母親は私の知っている限りでは、男に媚びをうっているだけの人間だった。

職業柄仕方ないといえ、それでもそんな母親が嫌いだった。

セイクリッドでは確かに、普通の人たちは神官として魔法と武器を使うのか、修道女として専用の魔法を覚えるために勉強をするのかの二択に変わる。

清廉潔白。

そんなものが、周りから見たセイクリッドという国のイメージだった。

でも、内部は全く違う。

神官と修道女になれる人だけが優遇を受け、それ以外の人でも、商人たちのようにお金を持っている人であればお布施としてお金を払うことでそれなりの地位が得られる。

それでセイクリッドの国は回っていた。

そんな中でも、最底辺とされている人たちもいた。

そう、私の母親は娼婦だった。

セイクリッドではそんな人なんかいるはずがない。

普通の人たちはそう感じるのかもしれない。

でも、セイクリッドでだって、どこでもだけれど、人の欲望というものは存在する。

そのはけ口となっている人たちも同じように必要だった。

それが私の母親で、私も同じ道をたどるものと思っていた。

だけど、そんなときに一人の少女と出会った。

それが、ミライだった。


「ねえ、この女の子は使えるよ」

「ですが、この女は娼婦の娘ですよ」

「そうなの?でも、魔力は多いと思うな」

「わかりました、調べてみましょう。おい!」

「はい」


ミライについていた男性たちは、何かを言うと母親に何かを渡す。

それはチラッと見えたが、お金だった。

母親はいやらしい笑みでそれを受け取ると、私のことをしっしと手で追い払った。

そっか、私はいらなくなったんだね。

そう感じながらも、私は伸ばされたミライの手を握るしかなかった。


「ねえ、どう?」

「えっと…」

「これはね、私には壊せないんだ」


ミライはそう言う。

そこにあったのは、何かわからないもの。


「えっと、これって何なの?」

「あ、そっかアイラはこれが何か知らなかったんだね」

「うん」

「これはね。この国を悪くしている原因だよ。これのせいでね、この国は発展しないんだ」

「そうなの?」

「そうだよ。知ってる?この国の外にはたくさんのいろいろなものがあるんだよ」

「ほんと?」

「本当だよ。私が読んだ本にはたくさんのことが書いてあったんだ」

「見たい」

「そうでしょ!」


私たちは二人で修道女を育成する機関である、修道院をよく抜け出していた。

そこでよく私たちが読んだのは、セイクリッド以外のことが書かれた本ばかりだった。

それに目を輝かせて、読み漁り、私は冒険者になるという夢を叶えるために聖女というものまで努力してなれることができた。

旅立ちのときには、ミライに冒険した内容を伝えることを約束した。


「これで、アイラは自由だね」

「そうなるのかな。私は…」

「うん、でも私の未来には…」

「どうかしたの?」

「なんでもないよ」

「そっか…」


ミライは私に何かを言いかけた。

それが何かはわからないけど。

でも、外の世界は驚きがいっぱいだった。

最初に出会った勇者は最低で、最悪の人間だったし、いろいろなことがあった。

そして知った、セイクリッドがおかしいということに、この国では普通では逃げらない。

修道女として、神官として外に出るときでも、その魔力はセイクリッドに監視されているように感じていたから…

そのシステムがあるのが、あのとき教えてくれたそれだった。

でも、今はそれが壊れつつある。

私はミライが言った、このセイクリッドを壊すのはアイラかもしれないね。

小さい頃にボソッと言ったその言葉を今でも覚えている。

壊すのは私じゃないじゃん…

そう口にしながらも、体の中に熱がたまるのを私は感じた。

そんなときだった、扉が開いたのは…

そこにいたのはミライとただし…

私はそれを見た瞬間には中にできたはずの熱はすっと冷えてしまった。


「どうして来たの?」


そんな私から出た言葉はそれだった。

感情がぐちゃぐちゃになりそうな私は、誰かと同じなのかもしれない。

そんな私にただしは言う。


「えっと、誰だお前…」


その言葉は沈黙に包まれたのだった。

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