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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは聖域を犯す

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129話

「これであとは破壊するだけだな」

「そうね」

「どうしたんだ?」

「これは外してくれないの?」

「いや、面倒くさいしな」

「本音は?」

「いいおっぱいだ」

「ふーん…」

「完全な誘導尋問だろ」

「まあいいよ。私の胸で興奮するならね」

「そういうものなのか?」

「そうだよ。それに嫌な相手ならこんなことすらも許さないからね」

「それは確かにそうだな」

「そうでしょ」


そんなことを話しながらも、俺はまた一つの塔を破壊する。

ちょっとした作業になってきたこれに対して、俺は再度ミライに聞くことにする。


「なあ…」

「なあに?」

「どうしてセイクリッドを壊したいんだ?」

「何?別に興味がなかったんじゃないの?」

「一応気になっただけだ。どうせ、ここからの道のりはまだあるしな」

「それは確かにそうね。でもなんでかなんて簡単よ。私がこの国を嫌いだから」

「それだけか?」

「それだけ?あなたはこの国がどれくらい腐っているのかも知らないくせによく言うね」

「まあな、俺はまだこの国に入って一日もたっていないからな、知らないのも当たり前だろ?」

「そ、そうだけど…なんだか調子が狂うなあ…」


ミライは怒りながらも、俺に言葉をぶつけてきたが、俺が冷静に答えを返してきたことで冷静になっていく。

そこから正直なところ、セイクリッドを壊したい理由というのもなんとなくわかってしまう。

これでも、一応ミライたちよりも十年以上は本来年上なのだから、そんなことで威張っても仕方ないかもしれないがな。

でも、あれだな。

闇の部分があるというのは、たぶんこういう場所でもあるのだろう。

思惑というべきか、欲望というべきか…

そんなものを未来が視えるスキルのせいでたくさん視てしまったのだろう。

でも、この国だってここまでただ塔を破壊しているだけではあったが悪いことではなかった。


「なあ」

「なあに?」

「悪いところがたくさんあるのはわかったぞ」

「そうなの?」

「まあな。でもな、いいところもすでにあるぞ」

「どんなのよ」

「ミライみたいな美女が多いことだな」

「ふえ…急に何を言ってるのよ」

「いや、結構まじめに言ってるんだけどな」

「そうなの?」

「ああ」


何か間違えてしまったのだろうか、その後はあまり会話も続かなくて、気づけばすべての塔を壊した俺たちは、でかい城壁の前に立っていた。


「ここからが…」

「うん、この中がセイクリッドになるわね」

「どうやって入るのが正解なんだろうな?」

「どうだと思う?」

「ミライなら、最適な未来が視えるんじゃないのか?」

「そうね、ただしが私が視た未来通りに進んでいたなら、そうなのかもしれないけど…」

「違うのか?」

「全然違うのよ。そもそも私が視た未来だったら、すぐに捕まってるからね」

「まじかよ、俺ってそんなに弱かったんだな」

「そういう感想がでてくる時点で、どうかしてると思うけど」

「そうなのか?」

「当たり前でしょ、ただの嫌みにしか聞こえないからね」

「そういうものか?」

「そうよ。それで、どうするのか決まった?」

「そうだな。どうせなら都市の内部を見ながらでも行くか」

「別に見なくても、私のスキルがあるからいいんじゃないの?」

「まあ、念のためだ」


そう言葉にしながらも、俺は気になっていた。

ミライが嫌がるこの都市の内部がどうなっているのかというのと、あとはアイラも帰りたくないと言っていた理由を知りたいからだ。

そのためにも、いろいろと見て回るのは必要だからな。


「行くぞ!」

「え?きゃんんんん…」


俺は助走をつけると、壁に向かって今回も同じように走って登る。

さすがのミライも慣れてきたのか、声を出すのをなんとか我慢している。

あまり大声を出されると、すぐにばれる危険性があったからナイスだ。

そんなことを思いながらも都市の中に入ったが…


「暗いな」

「裏路地なんて、どこもこんなものでしょ?」

「そうなのか?」

「逆にそうじゃないところを教えてほしいけど」

「俺が見た国では、ここまでは酷くなかったぞ」

「そうなんだ…でも、ちょっと納得したかな」

「どうしてだ?」

「セイクリッドでは、私たちのような特殊なスキルをもっているか、修道女、神官になれる人がまずは偉いからね」

「そういうものなのか?」

「そういうものだよ」

「それじゃ、ここにいる人たちはどうなんだ?」

「わかってるでしょ、男や女の性欲を満たす人達よ」

「歓楽街ってことになるのか?」

「どうでしょうね…」


そう言うミライの顔はかなりゆがんでいた。

これには何か理由があるのだろう。

ただ、何かを聞くということはできない。

そんなことを思っていたときだった。

一人の女性が建物から出てきた。

俺はその女性を見て、口から出そうになる言葉をなんとか飲み込んだ。


「あ、ああ…」

「これは…」

「腐ってる理由がわかった?」

「これは、そんな言葉で片づけられることじゃないけどな」


俺は目が少しうつろな女性の前に立つ。

見た目からして俺の予想が当たっていれば、あれだろう。

それを揶揄するような今の言葉を聞いて、俺は拳を無意識に握りしめた。

そのときだった。

女性に手を握られる。


「いい手をしているね」

「ただし!」


何かを言いかけようとするミライを俺は手で制した。

さらに女性は続ける。


「そして、いい目。こんな理不尽な世界で、その手と目をもっているなら、わたしにできなかったことがたくさんできるだろうね」

「俺にそれができるのかはわからないけどな」

「ふふふ、できるわよ。わたしには全くできなかったけど、わたしの子もそんな目をしていたんだから…」

「そうなのか?」

「ええ、変えるっていう意思がある雰囲気があるもの」

「そんなことがわかるのなら、あなたにだって変えられると思いますよ」

「わたしがもう少し若かったなら、それを本気にしていたかもね」


女性はそう言いながらも、額に大きな汗をにじませていた。

あきらかに血色の悪い顔といい、握られている俺の手も力の込め方をわからないくらいには、強く握られていて少し血がでてきた。

それでも俺は女性を振り払うことはしなかった。

女性は、そんな顔ながらも一生懸命に笑顔を作ると俺に笑いかける。

俺は笑いかけながらも、手刀にて彼女を昏倒させた。


「これがこの国の本当の闇か…」

「ええ…どう?幻滅した?」

「かなりな」

「でもこれが現実なの」


ミライはそんなことを言う。

俺たちは、女性の家だという質素な作りの部屋を訪れていた。

そこのベッドに女性を寝転ばせてから、さらに話をする。


「だから壊してほしいっていう意味がわかったでしょ?」

「まあな」


あの感じからして、どう考えても女性は何か薬物的なものを飲んでいる。

それは強制なのか、もしくは自分から飲んでいるのかすらもわからないが…

変えたいと思っているのはみんな同じなのか…

女性の見た目。

それはアイラと似ていた。

あのときにミライが何も言わなかったのも、俺のその考えが当たっていたからだろう。

こんなことを許してはいけない。

俺は再度拳を握りしめた。

でもそこで俺は先ほどのことを思いだした。

この国を変える。

そう考えているのは、誰だったのかということを…


「なあ、ミライ」

「なあに?」

「俺に考えがあるんだけど」

「話してみて…」


そこで俺は考えていることを話した。


「ほんとに、そんなことが?」

「ああ」

「それなら、やってみたいけど」

「ならやろうぜ」


俺は驚くミライにそう力強く言う。

その言葉と、俺の視線によって未来も決心する。


「そこまで言うならやってみようかな」

「ああ」


そうして俺たちは情報を集めることにしたのだった。



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