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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイの敗北?

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120話

「それにしても、この腕輪はなんだったのでしょうねえ」

「まあ、誰かかのプレゼントって感じの話だったな」

「それは誰だったのですかねえ」

「セコっていう名前のやつだな。どんなやつなのかはわからないが、自分がここで戦わないからって、やり方がせこいな」

「名前の通りって言えてしまいますねえ」

「そうだな」


俺は使えるのかはわからないが、分析できればと思い、砕け散った腕輪を手にとるが、それは砂のようにさらっと手から落ちる。

どういうものなのかはわからないが、先ほどの状態になると、簡単に壊れえてしまうみたいだな。

まずは逃げたあいつらが、これを作ったやつに報告をしてどうなるのかを見る必要があるな。

アイラのことは助けに行きたいが、こっちが先だよな。


「さすがにこの恰好で、運ぶのは無理だよな」

「どちらが悪者かは見た目でほとんどの場合判断されるみたいですからねえ」

「こんな見た目じゃなかったらな」

「脱げばすむ話だと思うのですがねえ」

「しょうがないだろ、俺はこれをつけないと、力が発揮できないポンコツだからな」

「自分でポンコツだと言ってしまうんですねえ」

「ふ…もう評価は下がるところまで下がっているからな、さらに下げたところで意味はないからな」

「そういうところの分析能力は高いんですねえ」

「うるせえよ」


俺はそう口にしながらも、下着を脱ごうとしたところで動きを止める。

何かが来る。

そう感じたときにそれはやってきた。


「これは、予想外のものがきましたねえ」

「こいつはなんだよ」

「聖騎士ですねえ」

「聖騎士?そこにいるのがそうじゃないのか?」

「そうですねえ、聖騎士ではありますよ。ただ、聖騎士にもランクがありますからねえ」

「ということは…」

「そうですねえ、これは強い相手ですねえ」


俺たちは構える。

その前に現れたのは、槍を携えて、さらには馬に乗った人だ。

聖騎士だとわかるように、いい甲冑のようなものを着ている。

少し年上に見えるその見た目でありながらも、身長と同じくらいかもしくは長いくらいの槍を携えている姿は、かっこよさがあった。


「なるほどな、そなたらが我の相手をしてくれるものということか…」


男はそう言いながら、槍を構えている。

どう考えても強いことがわかる。

だって、俺のこの姿を見ても、油断が一切ないのだ。

ヘンタイな恰好をしていても、油断しない相手というのは強者だと決まっている。

だって、その程度では乱されることがないくらいには平常心というものが戦闘において、最重要なことをわかっているからだ。

だからこそ、こういう相手と戦わなくもいいのならそうしたい俺は声をかける。


「あんたは何をしに来たんだ?」

「我か?先ほども話しただろう、相手をしてもらうためだ」

「それは話し相手ってことか?」

「かははは、この姿を見ても面白い冗談を言うやつよのう」

「そりゃどうも…」

「いろいろな奴を見てきたが、お前たちのようなやつと戦うのは面白そうだからのお」

「そうかよ」


俺は拳を構える。

ピエロもジャグリングを構えた。

完全な急ごしらえな俺たちパーティーに対して、相手は一人…


「いや、二人か!」

「ほう、避けるか」

「当たり前だ」

「どういうことですかねえ」


ピエロが疑問に思うのも無理はない。

俺だって意味がわからない。

だって、この馬と人はどういう理屈なのか魔力が繋がっているように視えるのだ。

でも、視えていたからこそ、初撃の馬による足での踏みつけは距離を取ることでなんとかかわすことができた。

そんな俺のことを楽しそうに見ている男はさらに続ける。


「人馬一体という言葉をそなたらは知っておるかな?」

「人馬一体…そういうことか…」

「どういうことなんですかねえ」

「簡単な話だ。スキルかなんかで、意思疎通を何もとらなくても、お互いに行動ができるってやつだ」

「おお!やはり、そなたは素晴らしいな」

「それはどうも」


俺が言ったことが当たりだったのだろう。

正解したことにより、男は気をよくする。


「よいのお。こう我が戦うにはふさわしい思慮深さだ」

「敵から褒められても嬉しくねえよ」

「確かに、そうなのかもしれんが…強者からの誉め言葉は戦場では一番うれしいものという認識が我にはあったのだがな」

「そんな気色悪いことがあるかよ」

「まあよい。次は頭ではなく体を見せてみよ」

「言い方がヘンタイなんだよ、おっさん」

「行くぞ!」


その言葉とともに、槍のおっさんと馬は走りだす。

完全に俺のことを狙っているその攻撃は、避けたところですぐに追いかけてくるだろう。

受けるしかないか。

もってくれよ、俺のヘンタイ力。

俺は拳を固める。


「聖騎士槍術改、人馬一体一の型、重一閃」

「カイセイ流、一の拳、トルネードスター」


お互いの攻撃が当たりあう。

拳と槍の先端がバチっとはじけあう。


「く…」

「ほお、貫けないのか」

「完全に負かしておいて、その言い方かよ」

「褒めているんだぞ」

「大丈夫ですかねえ」

「これが、大丈夫かよ」


俺は右手から血を流しながらもそう言葉にする。

あの勇者といい、こいつといい、意味がわからねえ。

強すぎる。

これまでは、ヘンタイ力さえ高めることができれば、ある程度のことがなんとかできた。

それに、前の戦いで感じたことができた、気だってそれなりに全身にめぐっている。

だから、簡単に負けるはずはないと思っていたのに、簡単に右手の拳はなんとかなったが、槍が右腕の側面を削るようにして、えぐっていった。

いてえ…

そう口にしたいが、そんなことを言ってしまえば、さらなる痛みが全身をめぐってしまいそうで、怖いのだ。


「もう一度行くか!」


その言葉とともに、男は距離を取る。

またあの攻撃が来るというのだろうか?

俺に防ぐことができるのか?

痛む右手の拳を握りながらも、どうするべきか考える。


「おい、ピエロ…」

「なんでしょうかねえ?」

「あれをなんとかできるか?」

「難しいですねえ」

「じゃあ、どうするのが正解だと思う?」

「わかりかねますねえ」

「答えは一つだ!」


俺は後ろに向かって走り出した。

それを見て、男は少し残念そうに言葉にする。


「戦っても勝てないとなると、逃げる。ふむ、やはり我と戦うものは全員がそうなる運命なのか」


逃げる?

まあ、あいつの目にはそう見えているだろう。

でも、俺はヘンタイだ。

そんな俺がブラジャーを目の位置につけて、ヘンタイ眼を発動しているということは…

視えているものが違うってことだ。


「これで、しまいにしてやろう。聖騎士槍術改、人馬一体一の型、重一閃」


くるのは槍を持った男の突進。

そうただ、突進をしてくるだけなら俺はどうしようもなかった。

でも、ここでは俺以外にも戦えるやつはいる。

そして、さっきの言葉を言う前から、俺たちはというべきか、ピエロが何かをしているのをヘンタイ眼で感じとっていた俺は、視えていた。

俺は振り返る。


「距離をとったところで、この攻撃の威力が増すだけだぞ!」


男はそう言いながら、馬と一体となって、こちらに突進攻撃を仕掛けてくる。

人馬一体。

それは突拍子もないことに弱い。


「うおおおおお」


俺は渾身の力を込めて地面を殴る。

それによって、土が相手に飛ぶ。

当たり前だが、こんなことで止まることはない。

それでも、少しでもこれからやることに注意をそがれたのなら、やった意味があるというものだ。

そして、それが起こる。


「な、なに!」


ドンという音ともに、地面が抜ける。

こんなときに役に立つとは思わなかったが、落とし穴だ。

人馬一体となっていることから、目に見える攻撃であれば簡単に対処できたかもしれない。

でも、今回は違う。


「行くぞピエロ」

「わかっておりますねえ」


俺たちは、砂埃が起こっている落とし穴に向かって突撃した。

さすがに相手も地面に投げ出されるとか、何かになっているはずだ。

そう思っていた。

ただ、大きな声が響く。


「聖騎士槍術改、人馬一体奥義、大車輪トルネード」


その言葉とともに、落とし穴からは風の竜巻が起こる。

俺たちは足を止めた。


「くそ…」

「不意打ちでも難しいとは、本当にやっかいな相手ですねえ」

「そんなことを言ってる場合じゃないだろ、どうするんだよ」

「といっても、わたくしめのマジックに使える大がかりな仕掛けはもうございませんからねえ」

「だったら、普通に詰みじゃねえかよ」


俺たちは、落とし穴から竜巻を纏い名ながら出てくるおっさんに対して俺たちは構えをとることしかできないのだった。


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