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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイの敗北?

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118話

松明の方へ向かっていくと。案の定俺が思っていた通りだった。

アイラとは違うが、似たような外套を着ているやつらと、シバルよりも重そうな鎧に身を包んだものたちがいる。

修道女と…

男もいるってことは、あっちは神官とかなのか?

さっき殴られていた男がそう呼ばれていた気がしたしな。

そして、それと一緒にいるのはシバルと同じであれば、騎士になるのだろう。

まあ、騎士と言っても、武器は様々だな。

シバルよりも大きな盾をもち、さらには槍を構えるものもいる。

重装歩兵とかっていう名前でああいうのがあったな。

そんなのんきなことを考えながらも、俺たちは地面に穴を掘っていた。


「こんな古典的なものが役に立つのか?」

「それは、やってみないとわからないのでねえ」

「なんだよ、ピエロっていうんだから、マジックでなんでもかんでもできるものだと思ってたがな」

「そうですねえ。ほんの小さなことであれば、スキルでできるのかもしれませんがねえ。あれだけの人数を相手にするのであれば、前もって準備が必要ですからねえ」

「そういうものかよ」

「付き合わせてしまって、申し訳ないとは思っているんですがねえ」

「そう思うなら、さっさと終わらせるぞ、こんなところを敵に見つかりでもしたら、俺たちは完全に間抜けだ」

「あと少しなのでねえ」


そう言葉にしながらも、二人で必死に穴を掘るという…

傍から見れば、かなりシュールな光景だ。

最初のときから言っていたことだけれど、タネも仕掛けもございます。

って言ってたからな。

こんなのが仕掛けで用意していたのであれば、無茶苦茶だなとしか思えないな。

魔力を使った魔法なんかで、仕掛けを作るのかと思えば、これだけの物理技で行っていたのだから…

そして、穴は出来上がる。


「これは、どうするんだ?」

「そうですねえ。まあ、こうしますかねえ」


ピエロはそう言うと、パチンと指を鳴らした。

するとどういう原理かはわからないが、掘っていた穴がわからなくなる。


「すげえな、原理はわからないが」

「そうですねえ、原理がわかってしまうと、わたくしめのスキルが貴重な意味がありませんからねえ」

「確かにな…ちなみにこの上って…」

「歩こうとはしないでくださいねえ。落ちますよ」

「まじかよ。痕跡を隠すなんてすごいスキルだな」

「できることはまだまだあるのですがねえ。さすがにこの場ではあまり多くの仕掛けを用意することができませんからねえ」

「それは確かにそうだな。こんなものを大量に作るって考えると、さすがに骨が折れるな」

「まあ、そこも含めて前もって準備を行うというのが、マジックの基本ではあるのですがねえ」

「そんな気がするな」


俺たちは、穴の手前に立つ。

松明を持ちながらも、確実にこちらに向かってくる。


「こっちの向きでいいんだよな」

「間違いない。勘のいい奴がいるから火は消されてしまったが、焚火をしていたのを見たものもいるからな」

「それなら、間違いはありませんね」


会話が聞こえる。

なんだろうか、もう少し気を引き締めて向かってきてほしいものだ。

さすがに、それなりの大きな声で話をしているのを見ると、そこにいますと言っているようなものだし、大丈夫なのかよ。

俺でもここまで油断して行動を起こすことはないぞ。

人数の差で油断しているってところか…

こっちは精鋭なんだから、大人数できたところで返り討ちにできるということは考えないものなのか?

それに、今はピエロもいる。

相手がそれなりに強い部隊だとしても、俺たちなら、簡単に制圧できるものだと思っていた。

ただ、そうはならない。


「どうなってんだよ」

「わかりませんねえ、スキルで場所は隠したはずなんですがねえ」

「完全に掘ったままの状態に戻っているだろうがよ」

「何かをされているようなのですが、わかりませんねえ」

「まずはどうするんだよ」

「からくりがわかるまでは、逃げるしかないと思いますねえ」

「そうするしかないよな」


俺たちは、格好よく立ち向かっていくはずだった。

そのためにも罠として、先ほどの穴を使って、牽制を行うはずだったというのに、穴がある場所に近づいたときに、隠したはずの穴が、元の俺たちが掘ったあとの状態になっていた。

何かをしたのかわからないけど、何かはしたのだろう。

じゃないと、あんな不自然なことが起こるはずもないからな。

でも、それが何かはわからない。

わからないうちは、立ち向かうことはしない。

それが、普通の選択だ。

でも、それで本当にいいのだろうか?

俺は自分に問う。

逃げるということは簡単だ。

そして、無策に立ち向かうということも確かに簡単だ。

どちらも、今の思考から逃げているという点では同じだった。

だったら俺は何をすればいいのか?

答えは簡単だった。


「ピエロ」

「どうかしましたかあ?」

「俺のことをカバーしてくれ」

「ほほう、何かいい案を思いつきましたかねえ?」

「どうかな?わからないが、なんとなくいける気がする」

「ふむ、理由が曖昧なままでは、わたくしめもうんとはうなずきにくいのですがねえ」

「ふ…だったら、俺のヘンタイ力に任せてみてくれないか?」

「何を言っているのかは理解できかねますがねえ…」

「大丈夫だ、言っている俺もなんとなく不安だが、それしか俺にはないからな」

「そうですねえ、このままというわけにはいかないのも確かですからねえ、まあいいでしょうかねえ」

「よし」


俺は、いつものように頭に下着を被る。

今は暗闇の中で攻撃をしないといけない。

となると、ブラジャーはあの位置に装着するのがいいな。

俺は、ブラジャーを目の位置に装着する。

ヘンタイ眼…

開眼!

さあ、何が視えるんだ!

俺は下着の匂いに集中した。


「なるほどな…」

「な、何かがわかりましたのかねえ」

「まあ、俺のヘンタイ眼にかかれば、簡単だったな」

「その恰好でこちらによって来ないでほしいですねえ、さすがに仲間と思われるのも嫌なのでねえ」

「うるせえ、お前もたいがい変だろうが」

「これは、ピエロの正装なので、仕方ありませんねえ」

「それを言うのなら、ヘンタイの正装はこれでいいだろう?」

「…何かを言いたいですが、反対することができませんねえ」

「だろう」

「それで、何が視えたのですかねえ?」

「それはだな…」


俺はヘンタイ眼を開眼させた。

すると、すぐに目の前には普段とは違う景色が視える。

まあ、当たり前だ。

普通の人間であれば、ブラジャーを目のあたりにつければ、相当なスケスケなものでない限り、何も視えなくなってしまう。

ただ、ヘンタイスキルを持っている俺は違う。

ヘンタイ眼が前から視えていたもの、魔力の流れだ。

これによって、サキュバスが仕掛けていた罠だったりを完全に無効化したこともあったのだが、ヘンタイとして成長したからか、さらなる効果を得られている。

まあ、先にピエロの罠が無効化された理由を教えておくかな。

俺は視えていた魔力の流れを教える。


「あの腕につけているやつで、魔力を乱しているみたいだ」

「なるほど、魔力暴走による魔力霧散というところでしょうかねえ?」

「そうなるのか?俺が視えるのは、腕輪に魔力が当たると、パチッと弾けて無くなるってことだけだな」

「そうなのですねえ、ということは腕輪を破壊するしかないですねえ」

「だな…まあ、気になるのは、つけているやつらか…」

「どういうことですかねえ?」

「まあ、これからのことでわかる、任せろ!」


俺はそう宣言すると、不適に立ち止まる。

ピエロも少し…

かなり離れた位置で止まった。

ふ、敵同士、信用はまだないよな。

ヘンタイな俺の隣に立ちたくはないというピエロの理由を気づかないふりをしながら、俺はヘンタイとしてレベルアップしたヘンタイ眼の能力を発揮する。

ただ、これには相手が来てくれないとどうしようもない。

修道女たちの部隊、十人ほどが俺の目の前で立ち止まる。

下着を被った、危ない男の参上に警戒をしながらも、神官なのだろうか、メイスのような武器を持った男が笑いながら口を開く。


「なんだ、その見た目は、バカなのか?そんなものを被ったところで、何になるんだよ、顔を隠しているつもりか?」

「そうだな。一般人には何もわからない、至高の選択とでも言っておこうかな」

「は!至高の選択をするならもっとまともなことをしやがれってんだよ」

「この神々しさがわからないのか?」

「頭がおかしいのか?やるぞ」


男のその言葉で、散開する。

ただ俺は構えることもなく、冷静に力ある言葉を口にする。


「やってもいいのかな?アミちゃん?」

「き、急に何を言ってやがる?」

「ほほう、聞き覚えがないと?」

「ないに決まっているだろ」

「それなら、ミワさんはダメ、アミちゃんとヘブンと言っておこうか」

「おおおい、何を言ってやがる?」

「わからないのか?本当に?」

「ちょっと、急に焦ってどうしたのよ、ブル」

「いや、おかしなことをこいつが言ってるだけだよ、ミワさん」

「そうなの?」

「ああ」

「なるほど、パーティーに恋人がいるというのに、これは…」

「何を言ってやがる?」

「おおっと、あまり口を滑らすものではないな」

「えっと、ブル?」

「ち、違うんだ」

「何も違うことではないだろう?もっと、言ってもいいんだぞ」


そう口にしながらも俺は顔に手をあてて、さらには右足を片足だけあげる。

ヘンタイ度が増す、このポーズをしながらも、新しい能力について考えていた。

それは、男女の相関図に、どう思っているのかが視れるというものだ。

ふ、そんなものが視えたところで意味がないって?

確かに、一対一の戦いであれば男女の相関図が視えたところで意味がないだろう。

でも多数の相手をしている場合ならどうだ?

人間関係を、特に男女がいるこの場合では戦いの上で必要な揺さぶりが必要なときに使えるということはどれほどの意味をもっているのか教えておいてやる!

そんなことを考えながらも、俺はさらに混乱を招くために口にした。


「ほほう、そちらの女性たちも、何…セコにもらったこれは大切なものだと?」

「え?」

「何を言ってるの?」

「一番は、うちだけだと言っていたのに」


三人の女性たちが、腕輪のほうを触りながら何かをブツブツと言っている。

これで、女子四人男子一人の半分はもう部隊として成り立っていない。

それでも、しっかりと装備をした盾と槍を持ったやつらは喧嘩や、おかしな状況になった今でも、冷静に対処しようとしてた。


「落ち着け、今はそんなことよりも、こいつを倒すことが重要だ!」

「ふ、お前の声は届くのか?」

「うるせえ、それにな…お前みたいな変な恰好をしているやつに何かを言われたところで、信用がないんだよ!」


男はそう言うと、俺に向かって槍を突き出す。

ただその突きを俺は右手でしっかりとつかむ。


「なに!」

「どう感じるのは人それぞれ、そうは思わないのか?」

「離せ!」


必死に掴まれた槍をとろうともがく重装歩兵の男に言う。


「ヒイラギちゃんサイコー」

「なぜ、それを…」

「アイドルをバカにしたが、ヒイラギちゃんのことは推せる」

「うるせえ!」


俺は力いっぱい槍を振り回されたことで、少し後ろに下がる。

ただ、顔は余裕に満ちていた。

それは、あとの重装歩兵のやつらが、先ほど俺に突進してきた男に向かって言ったのだ。


「そ、そんな、あんなものを好きな奴は部隊にはいらない、そう言っていたじゃないですか」

「いや、別にあんなものを好きなわけでは…」

「みー、ふー」

「「ヒイラギ」」

「みー、ふー」

「「ヒイラギ、ヒイラギ!」」

「やっぱり、ファンじゃないですか!」

「く、コールを勝手にやってしまうとは…」


何も言い訳ができなくなった、重装歩兵の男はその場で部下に詰め寄られる。

男同士の嫉妬、女同士の嫉妬、そして男女の嫉妬…

全てがこの戦場にあふれているとはな!

そんなアホなことを考えながらも、この混沌とした戦場を俺は終わらせるべく力をためる。

ヘンタイには重要なことだ。


「おい、いい加減に仲間割れはぐは…」


男女の欠点がないやつらを気がそれたタイミングで近づくと、一気に昏倒させると、俺はさらにもう一人にも近づく。

慌ててもっていた武器で攻撃を仕掛けようとしてくるが、それも間に合わない。


「フハハハハハ、混沌、混沌!」


俺は悪役のような言葉を発しながらも、部隊を殲滅するのだった。

最後に残ったのは戦闘そっちのけで喧嘩をしてしまっている、最初に話しかけた男女のみだ。

いつも思うが、こういうときは女性のほうが強いよな。

そんなことを思いながらも、俺は残る二人に話しかけるのだった。


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