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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイの敗北?

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117話

「う、うん…」

「起きましたか?」

「あなたは…」

「ははは、そうです、僕は…」

「誰なの?」

「ひどいじゃないですか、僕ですよ」

「顔がボコボコすぎて、誰かわからないわよ」

「ちっ、あの勇者め…」


そう言いながらも、舌打ちをする男のことはわかっていた。

セコ・インダー…

私の元婚約者だった男だ。

修道女として、勇者パーティーに入ることが決まるまでは、この男と結婚させらそうになっていた。

だから、頑張って実力をあげて、聖女になって勇者パーティーに選ばれたというのに、そのあとに出会った勇者は最低なやつだったからさらに逃げて…

結局私のパーティーとして選ばれる相手は最低なやつばっかりだったけど、そのおかげかせいで今いい仲間と出会えたのだから逆に良かったのかもしれない。

そんなことを考えていると、セコは私を触ろうとしてくる。

すぐにその手を弾いた。

弾かれた手をわざとらしく触ると、セコは言う・


「おっと、元婚約者にひといな」

「元婚約者だからって、やっていいことと悪いことくらいわかるでしょ」

「ひどいな」

「酷いことを言われたくないなら、この首のやつを外して」

「ダメですよ、魔力封じの首輪である、それを外してしまうと近くにいる僕はやられてしまいますからね」

「ちっ…」

「おやおや…その顔で怖い怖い」

「バカにしてるでしょ」

「そんなことはありませんよ。ただ、国に帰れば、僕と今度こそ結婚しましょうか」

「あなたみたいな顔をした人と結婚なんて嫌」

「この顔は勇者がやったせいであって、僕の顔がイケメンだということはわかっているだろ?」


そんなことを言われるが、私としてはそうは思わない。

この男がたとえ顔の怪我が治ったところで、どう考えても私たちのパーティーメンバーでただ一人の男である、ただしよりもイケメンではない。

それは性格もあるが、顔がというよりも、その顔が作り出すその表情が、この男のものは気持ち悪いとしか思えないからだった。

そんなセコに私は最初からずっと嫌気しかなかった。

ただ本人はそれをわかっていないのか、流暢に自分の話をする。


「この間も、若い修道女の子にね、声をかけられてね…」

「ねえ、そんなことよりもミライはどこにいるの?」

「せっかく話をしているというのに、聞かないのですか?」

「興味ないもの」

「まあ、いいでしょう。確かに元親友がどうなったのかを知っておいた方が安心して、僕の話を聞けるというものですね」

「前置きはいいから、教えなさいよ」

「あれですよ、勇者様と一緒にいられるのです」

「どういうこと?」

「簡単ですよ。僕たちが乗っている、この馬車の横にはもう一台の馬車がありますからね。そこではミライと勇者様二人きりになりますね」

「なんで…」

「ああ、どうして二人きりになられたということですか?」

「それもあるけど、そもそもどうしてあなたたちがいるのよ」

「そうですね。それには少しばかり事情が…まあ、たいしたものではありませんよ。それでもミライの能力は便利ですからね」

「ふん、私の親友だもの、当たり前でしょ」


私とミライは、修道女として同期。

同じタイミングで、私たちは修道女学園へ入学した。

その中でも、ミライは異質な存在だった。

ヨチスキルという少しの未来を視ることができるそのスキルは、すでにセイクリッドの行く末を視るために使われていた。

でも、どんな未来も視ることができるというものではなかった。

ミライが視る未来は、基本的に自分がかかわっているものか、関わるものしか視ることができない。

だから、セイクリッドで監視されて、外に出るにも、たくさんの人が護衛につくことが必要だったりした。

そんなミライと違い、私は落ちこぼれだった。

最初は魔力が多いことから期待はされていたけれど、本当に魔力が多いだけで、修道女魔法も使えるのか微妙なものだった。

その私に、ミライが言ってくれた。

大丈夫だよ、あなたは未来に強くなっている。

その言葉で、私は修道女として成長した。

スキルがどんなものなのかは、未だにわからないけれど、それでも聖女として選ばれるくらいには成長できたのはミライのおかげだった。

そんなミライが教えてくれたヨチスキルというものは…

一つは、一日先までの自分の未来を視ることができるというもの。

これは集中すれば視れる、どのタイミングのものを視たいのかなど、いろいろと前もって考える必要はあるがいつでも視れるものと聞いた。

でも、今回ミライがここに来たときに視た未来は違う。

気づいたら視えたもの…

そんな未来が視えたからここに来たんだ。

それはいつ、どのタイミングで視えるのかはわからないけれど、視えたということはミライの未来にそれが起こるということ。

ミライが視た未来を少しだけ聞いただけではわからないけれど、それでもわかったのは…

あのとき転送陣から出てきた人がミライの相手だとミライは言っていた。

だからあそこから現れた勇者が、ミライの将来の相手だっていうの?

わからない。

すぐにでも確かめたいけど、こっちも嫌なやつに絡まれている。

このままこいつと結婚させられてしまうのだろうか?

もう、セイクリッドには、聖女には戻りたくないのに…

助けてよ、みんな…

そう考えた私を見て、セコは笑う。


「何がおかしいの?」

「いえ、そんなお顔をするのはいいですが、ただ僕たちがセイクリッドへと帰ると思っているのですか?」

「どういう意味?」

「わかりませんか?この場に僕たちしかいないことがおかしいということが!」

「まさか!」

「そうです。まあ、今更可愛く懇願されたところで、命令を出した以上は、もう止めることはできませんがね」

「あなたねえ」

「くは!たまりませんね。その表情を出せたことを僕は喜びを感じます」

「でも、シバルたちなら…」

「そうですね。あのモンスターたちと渡り合えるものであれば、精鋭を集めたといっても、僕たちの部隊もやられてしまうこともあるかもしれません、だからこそのこの新兵器なのですよ」


セコはそう口にしながら、何かを見せてくる。

それは何の変哲もない腕輪に見えた。

でも、この男が自信満々に言っていることを考えると…


「擬似アーティファクト…」

「そうですね。確かに、これまでは僕のスキルである、創造でアーティファクトを模倣することでセイクリッドでも地位を確立してきましたが…これは違います。そう、僕のオリジナル!」

「なんですって…」

「効果のほどは…アイラの仲間が捕らえられた報告とともにしましょうか!」


そう言って腕輪をなでながら自信満々に笑うセコに、嫌な気配を感じながらも、魔力を封じられた今どうしようもない私は、馬車に揺られながらも、みんなの無事を祈ることしかできないのだった。


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