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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイの敗北?

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116話

「ふむ、そういうことなら、わたくしめたちが近くまで送っていければよかったですねえ」

「ま、起きたらそうしてくれ」


俺たちは森から出たところで、置いていた荷台に来ていた。

そろそろ夜も更けるというところで、どうせなら一緒に野営を行うことになった。

いい機会だった。


「シバル、そんなに警戒するなよ。それに、俺たちが寝てから一人で行くってこともなしだぞ」

「それは…はい、そうします」

「それにだ、一人で行っても助けられなかったら意味ないだろ」

「そうですね」

「あとは、これだ」

「こ、これはいいんですか?」

「ああ…渡したいって言ってただろ?」

「ですが、これがなければ…」

「大丈夫だ、俺にはこれがある」

「おぬし、それをどこから…」

「うん?なんかあったぞ」

「合法の年寄りじゃからと、そんなことが許されると思っておるのか?」

「いや、あれだけのことをしておいて、言うのか?」

「くう、そのことは言うのでないのじゃあ」


俺たちは、野営をしながらも、少し騒がしくしていた。

というのもだ、森から抜けるまでの道中にアイラが連れ去られてしまったことを話していたからというのもある。

そして、話し終わった今では、シバルにみんなの前で釘を刺すということをしておかないといけなかったからだ。

責任感が強いというのもあるが、最初から二人でいたからこそ、言っておかないと絶対に二人で行くと思った。

それくらいには、俺も一応は二人とは一緒にいた時間が長いのだ。

それに、隠すようにしてあるものをシバルには渡した。

それは、アイラの下着だ。

あのときにボクが渡すって言っていたからな…

これくらいは渡しておこう。

それに、俺には新しい下着があるから大丈夫だった。

それがヤミのものだったのだが、どうやら本人に見られてばれていたようだ。

ただ、からかうチャンスでもあったので、ここからは畳みかけておく。


「ほほう、俺のことを篭絡するつもりだったんだろ?それなら、これくらいは安いものじゃないか」

「そうじゃが…いざ持っておると考えると、さすがに引くのじゃ」

「俺も引くよ…こんな布の面積が小さいものをつけているなんてな」

「しょうがないじゃろ、魔力で全身龍化すると下着だけ弾けるのじゃからな」

「ポンコツ?」

「そういうことを言うのでないのじゃ!」


俺はぽかぽかと殴られる。

この状況だけを見れば、可愛い幼女に叩かれる男というところだ。

ただ、ヤミの姿が実は龍だということを考えると、そのうち吹き飛ばされる未来も見えるな。


「本当に、面白いパーティーですねえ」

「お互いにだろ?」

「そうかもしれませんねえ」


俺とピエロは顔を見合わせて、どことなくにやっと笑う。

いつものように野営をしながらも、アイラいないという初めての状況で時間は過ぎていく。

そしてそのまま夜にはいつものように一人で見張りをと思っていたが、今回は最初からそうはならなかった。

それは、ピエロたちがいたからだ。

俺の向かいにはピエロが座っている。

初めてこの状況を見る人がいれば、どこのホラー映画なのだろうかと思うだろう。

ただ、俺たちは真剣に火に向き合っていた。


「どこか、変わられましたねえ」

「そうか?」

「はい、わたくしめがわかるのですからねえ」

「まあ、遅かったけどな」

「そうなのですか?」

「ああ…もっと早く変わっていれば、アイラが連れ去られるなんてことも起きなかったからな」

「そうなのですねえ…」

「ああ」

「でも、それを運命ともとれますねえ」

「どういうことだ?」

「だってですねえ、もし、その修道女の女性が連れ去れていなければ、わたくしめたちがこうやって野営していることもありませんでしたからねえ」

「それは、そうだな」

「まあ、わたくしめ自身も、後悔などありすぎて、どれくらいしたものかわかりませんからねえ」

「レメのことか?」

「そうですねえ、それもありますねえ」

「どうして、ラグナロクってやつをやっているんだ?」

「それは、わたくしめたちの理想を通すためですねえ」

「そうか…」

「納得されるんですねえ」

「まあな」


だって、それは人ごとではないからだ。

俺だって、魔法使いになれると思って三十歳になるまで我慢をして童貞を貫こうとしていたのだ。

そういう意思というべきか、貫きたい、理想というべきか…

そういったものは持っているつもりだ。


「俺たちも出会うタイミングが変わっていれば、仲間になっていたのかもな」

「そうですねえ、そんなことがあればですねえ」

「まあ、今後共闘することを期待してるぞ」

「ふむ、どこかに行かれるのですか?」

「うん?ま、ちょっとな」


俺が急に立ち上がったためだろう、

ピエロにそう聞かれる。

どこかという距離ではない。

ただ、みんなが見えない位置であることに違いはない。

俺はトイレに向かった。

ま、そういうことだ、

いちいち言うのも面倒くさいからな。

ちょっとカッコつけてみたというやつだ。

トイレを終えて、また見張りに戻ろうとしたときだった。

松明が見える。

どういうことだ?

いや、もしかしてな。

俺は急いで野営に戻り、すぐに土をかけて火を消した。


「何かありましたかねえ?」

「急にやったのに、驚かないんだな?」

「あなたがやることには意味がありますからねえ」

「そうかよ」

「それで、何がありましたかねえ?」

「まずそうなことだな」

「では、どうするのですかねえ?」

「手はある」


俺はそう言葉にすると、ヤミを起こす。

女性のみがいるテントなので、入ることに多少のあれはあるが、ヤミはすでに起きていた。


「何かが来ておるのじゃな?」

「わかってるのなら、これからどうするのかわかるだろ?」

「ふむ、わかっておるのじゃ、行ってくるのじゃろ?」

「ああ、その間を頼む」

「仕方ないのじゃ、頼まれたのじゃ」

「頼む」


俺はここでの見張りを交代してそのまま出ていく予定ではあった。

ただ、服の裾をもたれる。


「ヤミ?」

「ほれ」

「手を出してどうしたんだ?」

「わらわの下着を返せなのじゃ」

「まじかよ、これがないと俺はスキルが仕えなくてやられてしまうんだぞ、それでいいのか?」

「そんなことは言っておらんじゃろ、これと交換じゃ」

「これは?」


そこには下着が握られていた。

ピンクですべすべしており、肌触りがいい。

誰のものなんだ?

俺は思わず鼻に近づけようとしたところを、ヤミに頭をたたかれた。


「匂いを嗅ぐなじゃ」

「し、仕方ないんだ、これはスキルのせいであって、俺のせいでは…」

「そう言っておけば全ての言い訳ができると思っておるのかの?」

「くう、するどい」

「まあよいのじゃ、とりあえずよこすのじゃ」

「へいへい」


俺はヤミの下着を返す。

女性ものの下着を交換する男と幼女という、傍から見れば完全に不審者同市のやりとりを行った俺は、ピエロと合流した。


「松明とは、どういうことなのでしょうねえ」

「考えられることは簡単だな」

「といいますと?」

「ほら、ここに来るまでに話をしただろ?」

「ああ、あの修道女が連れ去られたことでしたねえ」

「そうだ。だからやってくるとしたら、その集団だろ?」

「でも、どうしてこのタイミングなんでしょうねえ」

「理由なんて単純だと思うけどな」

「ほう、わかるのですか?」

「ま、あれだろうな」

「なるほど」


俺が指さしたのは、荷馬車だ。

そう、あいつらがこのタイミングでこちらに向かってきた理由は最低でも荷馬車を破壊することだろう。

そうすることで、俺たちのことを足止めできるということだろう。

後は召喚された勇者が、あの強さなのだ。

普通のモンスターくらいでは太刀打ちできないというのもあるから…

結構いた人たちもいらないと思われたのかもしれない。

それを今考えても仕方ないな。

俺たちは松明の方へ向かった。


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