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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイの敗北?

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108話

「話は終わったのか?」

「ああ、すまないな」

「いや、ボクのほうは気にしないでくれ」

「ありがとう」


優しく微笑むシバルに、本当にいいやつだと思いながらも、アイラを見ると、少し不機嫌そうではあったが、小言を言われることがなかったので、少しは怒りが収まったのかもしれない。

バーバルの風魔法で馬を眠らせると、アイラの修道女魔法によって周りを囲む。

これで、馬たちに何かあっても大抵のことであれば大丈夫だろう。

いくつかの荷物はすでに、荷台から降ろして準備は万端だ。


「行くか」

「はい」

「しょうがないわね」

「頑張ります」

「仕方ないの」


ちなみに、ヤミが一緒に来るというのは、俺とシバルが馬車を運転しているときに決まっていたことらしい。

うん、ちょこちょこと俺の意見が無視されるのは、いただけないが、下手に反抗しても仕方ないことはわかっていたので、森へと足を進めた。

少し歩いてみたが、思ったよりも森は深い。


「少し暗いけど大丈夫か?」

「はい、ボクは問題ないです」

「私も、少しは鍛えられたから大丈夫」

「わたくしもですわ」

「わらわもじゃ」

「それならいいが…」

「大丈夫ですよただし、暗いことは暗いですが、そのおかげか、光の入り方が一定で地面に生えている草があまり深くありませんから」

「そうよ。それに段差もあんまりないみたいだし、これくらいなら余裕ね」

「わたくしも、今回はこれがありますから」

「そうじゃ、心配しすぎはよくないのじゃ」

「そうだな。お前だけは心配しないでおく」

「なんじゃと」


俺たちは、そんな軽口をたたきながらもさらに奥へと進んでいく。

今回は俺が先頭で、その後ろにシバル、アイラ、ヤミ、バーバルの順番で並んでいる。

基本的には俺とシバルが前衛なので、俺たちがはやめに動けるような位置にいる。

バーバルを襲われることがあっても、アイラのバリア魔法で時間を稼いで、あとは俺たちが前衛に回るというフォーメーションになっている。

正直、ヤミのことについては、俺だけは全く心配していない。

本来の姿が龍なのだ。

そう簡単にやられることはないだろう。

ただ、ヤミがいるせいで起こることはあった。


「またゴブリンだ」

「またあ?」

「文句を言うなよ、アイラ…」

「だって、仕方ないでしょ、これだけ頻繁に出会うことになるなんて、もしかしなくても、誰か狙われてるのかって思うでしょ」

「それはそうだけどな」

「そうでしょ」

「そうだが、まずは倒すぞ」

「わかってる」


俺たちは、三体のゴブリンを簡単に片づける。

なんで、こんなにモンスター、それも弱いやつらに襲われるのかというのには理由があった。

原因はヤミだ。

黒龍ということから、モンスターにも普通であれば恐れられる存在だ。

ただ、今は違う。

封印をされたためか、一日に回復できる魔力が少なくなってしまっている。

モンスターは魔力が低い相手を狙うことが必然的なことらしい。

ちなみに、魔力がない俺はどうなんだと聞いたら、弱いとも認識すらされていないのではないかということらしい。

魔力がない俺には、悲しいかな、モンスターは相手にさえしてくれないらしい。

結局のところは何が言いたいのかというと、魔力が少ないうちはヤミはゴブリンなどの知性があまり高くないモンスターに狙われやすいということなのだそうだ。

そして、そんな知性が低いやつらは、手柄を自分だけのものにしたいようで、襲い掛かってくるのも、適当な感じだ。

あれだな、飛んで火にいる夏の虫ってやつだな。

俺たちがいるのにも関わらずに襲ってくることを考えると、そんな言葉が頭に浮かんだ。

そんなことがありながらも、俺たちは森の奥へと進む。


「どうだ?」

「少し待ってくださいね」

「ああ」


シバルに声をかけることで、地図を見てくれる。

詳しい場所がわからないといっても、ここがどこなのかくらいはわかるようにしておかなければ、帰るときにも苦労することは明白だからだ。

地図への記入と、どう進むのかを確認し終わった俺たちは少しの休憩をとっていた。


「なあ、アイラ」

「なに?」

「いい加減に、怒るのをやめてくれないか?」

「怒ってないわよ」


いや、怒ってるんじゃん。

とは口がさけても言えなかった。

シバルは、ちょっと興奮しているな。

このドエムが!

どうすれば終わりが見えるのか?

そんなことを考えていたときに、バーバルがため息をつく。


「アイラ」

「何よ、バーバル」

「わたくしだって、昨日のことはまだ怒ってるんですからね」

「それは、だってごめんって…」

「そうよね。謝ってもらったわ。それで。ただしはどうしたの?」

「謝ってもらったわよ」

「だったら、もう少し大人にならないとダメよ」

「そうなんだけど…来るなら、私の部屋とか…」


何かをブツブツと言っているが、声が小さいのでよくわからない。

俺は疑問の表情で見ていると、そんな俺に気が付いたのだろう。

アイラが声をはりあげる。


「あーもう、わかったわよ」

「それでいいのよ」

「それで、ただし、さっき私に何を言いかけたの?」


切り替えが終わったアイラがそう聞いてきて、俺は気になっていることを質問することにした。


「アイラは、勇者召喚がどうやるものなのか知っているのか?」

「そうね、私は一応それに同行したしね」

「そうなのか?だったら、勇者が召喚される遺跡って、どういうものなのかわかるのか?」

「まあ、簡単に言えばあんなのよ」


そう言って指さした先には、蔦が絡みついている石だ。

どういう意味なのかわからない。


「えっと、石だと思うが…」

「そうね、普通であれば石に見えるけど、あそこには転送陣というのがあるの」

「えっと、転送陣はあるのはわかったんだが、あんなところにあるのか…」

「そうよね。私もそれを見るまではわからなかったけど、転送陣って何か壁とか、隠すように書かれているから、わかりにくいのよね」

「まじか」

「ええ、宝探しみたいにね」

「ちなみに、今までの場所は…」

「確認はしてたわよ。今のところは変わったところはなかったけどね」

「そうだったのか?」

「そうよ、バーバルにも協力してもらってね」

「そうだったのか」


バーバルの方を見ると、控えめにグッと親指を立てられた。

最初に教えておいてほしかった。

そう思っていると、アイラから言われる。


「だって、先頭がそんなものを気にしながら進んでいたら、何かあったときに困るでしょ」

「く…確かにな」


忘れがちだが、これでも転生した前では立派に社畜をやっていた。

だからこそ、ある程度周りを見ながら何かをすることはできるが…

こんな森の中では別ということだ。

それなりに一緒にいる時間が長くなっているとはいえ、アイラに先回りされてくぎを刺されるとは思わなかった。


「でも、それなら、どこか目星はつけているのか?」

「そうね、とりあえずはそこを見ればいいんじゃないの?」

「ちょっとだけ見るか」


俺はさっきアイラが言っていた場所を見ることにした。

そこには…


「いや、あるな…」

「噓でしょ?」


アイラが慌てて、さっき指さした先を俺と同じように覗き込む。


「嘘でしょ…」

「な…」


こうして見つかった勇者召喚ができる遺跡へと向かう転送陣を見つけたのだった。



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