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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイの敗北?

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106話

「おぬしの、おかげなのじゃ!」


そんなことを言われながら、バシバシと背中をたたかれることで、ようやく正気を取り戻した俺は、何も言えないでいた。

そんな俺の状態に気づいたのだろう。

ヤミは楽しそうに目を細める。


「なるほどのお」

「なんだよ?」

「おぬし、もしかしておなごとの経験がないのかと思ったのじゃが、どうじゃ?」

「なかったら悪いのかよ…」

「別に、そんなことは全くないのじゃ。むしろ、それならばわらわが骨抜きにして、今後も協力する体制を作るのもよいと思っての」

「はあ?」

「任せるのじゃ、わらわがリードするのでな」


そう言うと急に上着を脱がされる。

この世界で多数の戦いを経験したということもあるが、昔の体なので、かなり引き締まっている。

それを見たヤミは、先ほどまでの勢いが急になくなる。


「の、のじゃ…こ、これがいい裸なのじゃな」

「どうしたんだ?」

「何にもないのじゃ、わらわのリードで骨抜きにしてやるのじゃから、少し待つのじゃ」


そう言葉にするヤミはあわあわとしている。

なるほどな。


「こじらせ幼女か…」

「こじらせ幼女とかいうでないのじゃ」

「だって、ほら!」

「のじゃ、少しは前を隠すのじゃ」


いや、さっきまでの妖艶さはいずこに…

そう思わせるほどの戸惑いっぷりに、俺は思わず笑う。


「ちょっと、笑うのでない!」

「いや、面白くて、つい…」

「わらわじゃってな。好きで経験がないわけじゃないのじゃ」

「じゃあ、どうしてないんだ?」

「だってだって、子供っぽすぎるから相手にされなかったのじゃ。だから、ちょっと暴れてみたら、力を封じられて、こんなことになっておるのじゃ」

「ぐ…さっきまでの余裕はどうしたんだよ」

「じゃって、仕方ないじゃろ。わらわだって、久しぶりに男と会ったのじゃからな」

「それじゃあ、これまでどうしてたんだ?」

「もちろん、毎日少しずつ魔力を回復させておったのじゃ」

「ほう、それで、どうしてそれを辞めたんだ?」

「ちょっと久しぶりに龍化したら楽しくてのお、空を飛んでいたら気づいたら、迷っておったのじゃ」

「なるほど、ババア幼女はおっちょこちょいと…」

「そういうことを言うでないのじゃ。落ち着きがないからちょっと…なんて言われたことも思い出したのじゃ」

「ぶはっ…最高に面白いな」

「くー、なぜじゃ。わらわのことを話すたびに、わらわの恥ずかしい過去がばれていくのじゃ」

「自分で言ってるだけじゃん」


のじゃーと頭を抱えてしったヤミを横目に、さすがに肌寒くなってきたので服を着た。

先ほどまであった緊張感はどこへやら、完全にヤミは面白い幼女になっていた。

俺はひとしきり笑うと、ヤミに問う。


「それで、骨抜きにするのか?」

「うう…無理なのじゃ」

「だろうな。アイラたちでさえ、あんなに戸惑わないぞ」

「なんと、そんなに今の若い子たちは冷めておるのか?」

「いや、ヤミの反応が良すぎるだけだと思うぞ」

「そうじゃったか…自分で脱ぐと、少し高揚するのじゃけど、男の裸を見ると、緊張してしまうのじゃ」

「そういうものなのか?」

「そうじゃ…なんじゃろな。でも、魔力が少し戻った気はするのじゃ」

「へえ、それはよかったな」


俺は適当にそう返すと、ヤミはこちらを向く。

どうしたんだと思っていると、ヤミは俺に向かって突進してくる。

そのままゆっくりと、俺に抱きしめられた。

ふむ…

よくわからんが、とりあえず頭でもなでておくかな。

俺は急に抱き着いてきたことを怪訝に思いながらも、なでなでとしておいた。


「はあ、気持ちよいのじゃー」

「そうか、それならよかったな」

「こうやって、頭をなでてもらうなんて久しぶりじゃからな」

「そうか、そうか…」

「って、違うのじゃーーーー」

「おう、どうした急に?」


幼女の頭をなでるという、よくあるイベントをこなしていたというのに、急にヤミは手を払いのけた。

なぜか、かなり憤慨しているように見える。

意味がわからず立ち尽くしていると、ヤミは愕然としていた。


「どうしてなのじゃ、わらわはおぬしのことを、魔力を纏ったこの拳で殴り飛ばそうとしたのじゃ」

「まじかよ…そのわりには全く勢いがなかったぞ」

「そうなのじゃ、おぬしに触れる前には、力が入らなくなってしまったのじゃ」

「へえ、どうしてなんだ?」

「それを聞きたいのはわらわじゃ。わらわに何か変なことをしたのじゃな?」

「いや、してないだろ。というか、したとしたらどのタイミングでやったんだよ」

「わからないから聞いておるのじゃ」


そんなふうにして項垂れる。

理由はわからないが、俺を殴ろうとしたらしい。

俺は仕方ないので、項垂れるヤミに近づくと頭をなでる。


「や、やめるのじゃあ」

「ふ、俺を痛めつけようとした罰だ」

「なんじゃと、それはだっておぬしがわらわの言うことを聞かないからじゃろ」

「言うことってなんだ?」

「それは…なんじゃったかな?」

「もしかして忘れたのか?」

「いーや、わらわは考えておったのじゃ。そうじゃ、おぬしをわらわの言う通りに動かして、力を取り戻すために利用しようとしていたのじゃ」

「なるほどな」

「どうじゃ、だからこそ、わらわの力を見せることでおぬしを駒のように扱う予定じゃったのにー」

「無理になったな」

「そうなのじゃ!というか、いい加減に頭をなでるのをよすのじゃ」

「嫌だね、俺に酷いことをしようとしてたんだから、これくらいは我慢してもらわないとな」

「なんじゃとって、それ!」

「うん?そんなふうに気をそらそうとしても無駄だぞ」

「違うのじゃ、手を見るのじゃ」

「はあ…」


ヤミの必死さに、俺は手を見ることにした。

そこには何かの紋章みたいなものがあった。

タトゥーなのか?

いやいやいや、いつの間にタトゥーなんかほったんだよ。

違うだろ、ということはこれはなんだ?

俺が疑問に思っていると、ヤミはそれを見て、頭を抱える。


「さ、最悪なのじゃーー」

「どうしたんだ?」

「わからんのか?」

「いや、わからないな」

「これはの、わらわがおぬしの奴隷となる、契約紋章なのじゃ」

「ほう、なるほどな…ってえ?」

「わからぬか?」

「ちょっと、状況がのみこめないってだけで…」

「わらわもじゃあ」


俺たちは二人で騒いでいた。

だからだろう、扉がバンと開く。


「ただし?」

「へ、へい」

「ちょっと、うるさいんだけど」

「いや、これにはちょっと…」

「アイラー!」

「ちょっと、ただし、あなた泣かせたの?」

「違うってわけでもないんだが…」


最悪のタイミングで、アイラが部屋に入ってきた。

うまくヤミはアイラの方へ逃げたことによって、俺がこれから向かう先は一つだ。

さあこい、ビンタ!


「ぐは…」

「ふん!それじゃ、ヤミちゃん行こう」

「わかったのじゃ」


その言葉とともに、悪そうな笑顔で部屋からでていくヤミが見える。

なんだろう。

このちょっとの時間しかたっていないはずなのに、いろいろな出来事がありすぎた気がする。

頬の痛みをなんとか我慢しながらも、俺は眠りにつくのだった。


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