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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイの敗北?

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105話

「ちょっと待ってくれ、その黒龍っていうのは本当なのか?」

「本当じゃよ。黒龍の姿になるのは、さすがにこの場所では小さすぎるからできないのじゃが、一部だけやるのじゃ」

「一部?」

「そうじゃ、龍化というやつじゃな」

「はあ…」


どういう意味だ?

わけがわからないままそれを見ていると、右手がキラキラと光りだす。

どういう原理なのかはわからないが、カッと強い光が当たりを照らしたと思ったときには右手は、俺が見たことがあるものの小さな手になっていた。


「まじかよ…」

「まじじゃよ」


そう言って笑うヤミの手は確かに、先ほどまでの白い小さな柔肌というわけじゃなくて、黒光りした大きな腕に変わっていた。

変身か…

どういう原理なのかが、全くわからないな。


「結局はどういうことなんだ?」

「ふふふ、そうじゃな。どうしてわらわがあそこにいたのか、そしてお主らに声をかけたのかを教えるのじゃ」

「ああ…」

「それはの、わらわの力を取り戻してほしいからじゃな」

「どういうことだ?」

「そうじゃな、わらわは昔に少し無茶をしたのじゃ」

「どんなことだ?」

「それはいずれわかるのじゃ」


そう言いながらも、ヤミは頬を恥ずかしそうにポリポリとかく。

それで、なんとなくどんなことをしていたのかというのが、わかった。

黒龍というのだから、どうせ何か厄災をおかしそうになったとかそんな感じなのだろう。

でも、力を取り戻してほしいというのはどういうことなのだろうか?

今も別に龍としての姿を出せているような気がするのだが…

俺が不思議そうに見ていたからだろう、ヤミはすぐに変身した手を解除する。

また、光に包まれると元の幼女の手に戻った。


「理由は今のじゃな」

「どういうことだ?」

「ここに来る途中で魔力がつきてしまったのじゃ」

「うん?でも、魔力っていうのは、毎日回復するんだろ?」

「それが普通じゃな。だけどわらわは違う。一日に回復できる魔力が普通ではなくほんの少しなのじゃ。だから龍化ができるのが、魔力を使ったあとじゃとあの程度しかできないのじゃ」

「うん、なるほどよくわからん」

「なんでじゃ」

「だって、結局どうしてそうなったのかの説明が今一つわからないからな」

「だからじゃな。わらわが若気の至りで昔やんちゃしたせいで、力を封じられてしまったのじゃ」

「それで?」

「それで、魔力を封じられてしもうとわらわは、今では一日に回復できる魔力がごく少量になってしもうて、さっきの手を変えたので、昨日回復できた魔力が尽きたのじゃ」

「それは、なんとなくわかったけど、そんなの一人で探せばいいんじゃないのか?」

「それは無理じゃ」

「どうしてだ?」

「わらわの魔力を封印した箱には、魔力をもたないものしか開けらないことになっておるのじゃからな」

「うん?それって?」

「そう、お主じゃ!」

「っていうことは、俺に対して面白い奴を見つけたというのは?」

「そうじゃ、わらわの力を取り戻してくれるかもしれない唯一の存在ということじゃな」

「なるほどな、そういうことか…」

「そうじゃ、わかってくれたのじゃな」

「ああ、だが断る」

「なんでじゃ?」

「だって、面倒くさいじゃん」

「そんなことを言うなじゃ」

「いやいやいや…だって、若気の至りをしたのだって、自分が悪いだけなんだろ?だったら別に力が封印されていたとしても仕方ないと思うんだけど」

「ぐは!わらわの一番痛いところをついてくるのじゃな」

「だって、悪いのは昔の自分だろ?」

「何も言い返せないのじゃ」


この世界のイレギュラーとしているからこそ、こういった面倒ごとが俺に降りかかってくるのは、もう運命として仕方ないとして、それをするかどうかくらいは考えさせてほしいものだ。

今回に限っていえば、力を取り戻してしまえば、若気の至りだということになっていたことを再度起こすかもしれないのだ。

そんな厄介な相手の力をわざわざ取り戻すのはどう考えてもいいことがないだろう。

俺の微妙な表情に気づいたのだろう、ヤミはおろおろとしている。

でも、何か思いついたのだろう、服の裾を再度持っている。


「何をしようとしている?」

「こうなったら、わらわが裸でお願いするしかないと思うのじゃ」

「まてまて、俺をこの世界から抹消させる気か!」

「だって、断れると思ってなかったのじゃからな。こうなったら、この体を好きにしてよいからとお願いするために脱ぐのじゃ!」

「うん?裸で襲われたって言うんじゃないのか?」

「…!」


俺は思わず口にしてしまったせいで、ヤミはその手があったのかという顔になる。

いらない情報を与えてしまった。

ヤミは余裕そうにニヤニヤと笑っている。


「それじゃ、やるのじゃ」

「ちょっと待て、話し合おうじゃないか」

「イエスと答えないと、大きな声を出すのじゃ!」

「くそ、俺の負けだよ」


俺は自分のミスによってヤミとの勝負に負けた。

こうやってまた、いらない厄介ごとに巻き込まれていくのか…

そのことに頭を悩ませながらも、俺は力を取り戻すための方法を聞くことにした。


「それで、その力を取り戻すにはどうやるんだ?」

「そうじゃな、黒い卵のようなものに封印されておるのじゃ」

「へえ、もしかしてこんなやつか?」


黒い卵、そう言われて、俺はストッキングの中に収納しておいた箱を取り出した。


「どうして、そんなところに箱が入っておるのじゃ?」

「仕方ないだろ、持ち運んでいていいものがなかったんだ」

「だからといって、女性ものの着るものをカバンにしておるやつは初めてなのじゃ」

「仕方ないだろ…」


俺はヘンタイスキルの使い手だから、こういうものが必要になってくるんだとは言えなかった。

これ以上、下手なことを口走ってしまって不利になりたくないからな。

いや、これがある意味フリになっているのか?

か、考えるな。

いらないことを言わなければいいだけだろう。

俺は頭の中を切り替えて箱を開ける。

箱は簡単に開いた。

そこには黒い卵が入っている。

それを見たヤミはすぐに手を伸ばして触れようとしたところで、バチっと手を弾かれた。


「やっぱりなのじゃ」

「どういうことだ?」

「これが、わらわが必要な封印された力の一部なのじゃ」

「そうなのか…」

「そうじゃ!というか、触れないのじゃ!」

「え?俺は普通に持てるけど」


俺は箱から黒い卵を取り出す。

箱から取り出すことで、ヤミは卵に触れられると思ったのだろう、再度手を伸ばすが、またバチっと弾かれる。

まるで、静電気みたいだな。

そんなことを思いながら、涙目になっているヤミを見る。


「なんでじゃ、触れないとはどうすればいいのじゃ」

「いや、俺に言われてもわからないんだが…」

「だって、お主は簡単に触れておるのに、わらわのものなのに、わらわが触れないとかどうやって力を取り戻せばいいというのじゃ」

「わかるわけないだろ…」

「そんな、なのじゃ…」


肩を落としてしまったヤミには悪いが、俺にも方法はさっぱりだ。

こういうときに頼りになる、自称神であるスターに頼ることも今はできない。

どうすればと考えているうちに、箱の中から一枚の紙が落ちる。


「なんだこれ?」


疑問に思いながらも拾いあげると、そこには文字が書かれている。

この世界の言葉だ。

バーバルのスパルタ教育によって鍛え上げられたおかげで読める内容は…

魔力を持たないものの血をつけて飲ませるというものだった。

こういう展開、あるよな。


「おい、どうやらできるようだぞ」

「なんじゃと!」

「これを見てみろ」

「おお、なのじゃ」

「それじゃ、早速やってみるか」

「よし、なのじゃ」


痛いのは嫌いだが、今回ばかりは仕方ないと諦めた俺は、部屋にあったペーパーナイフで指を軽く切る。

それによって血がぽたぽたとたれる。

俺はその血を黒い卵にかけた。

少しずつコーティングされる卵。

恐る恐るという感じでヤミが卵を触るが、弾かれることはなかった。

そして、ヤミは卵を口に運ぼうとするが、唇でパチッと弾かれる。


「うう…ここまでしてもダメなのじゃ…」

「それじゃ、どうするんだ?」

「ちょっと手を貸すのじゃ」


手に持つことができたが、取り込むためには食べる必要があったのだろう。

唇で再度弾かれて、どこか悔しそうなヤミにそう言われて、俺もホイホイと手を差し出した。

次の瞬間温かさに包まれる指。

ちゅうちゅうと音を立てて、血を口に含む。

見た目幼女のヤミに指を吸われるという現実離れした光景に、驚きを隠せないながらも、ある程度血を口に入れ終えたのだろう。

口を開く。

中からは赤い俺の血が見えて、ドキッとし…

卵を口に入れるさいには、口の中からあふれ出た血が唇を伝っていく。

あまりにも衝撃的な光景に、童貞の俺には刺激が強すぎたようで、ヘンタイスキルを発動させながらも、どこか現実に今起こっているのだと理解が追いつかないでいた。

そうして、俺の血と、自分の力を取り戻すために卵を飲み込んだヤミを見て、俺は生唾を飲み込んだのだった。


「力が少し戻ったのじゃ!」


そんなことを嬉しそうに言う、ヤミに俺は何も反応できないでいると、おかしそうに笑っている。

幼女の見た目と、さっきまでの妖艶さのギャップに、俺はただ見とれることしかできなかった。

お互いの手に紋章が現れていることを知らないまま…


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