100話
「大変だったな」
「本当よ、いろいろあったんだからね」
「わかってるよ、さっきも聞いたよ」
「そうですよ、ただしボクも褒めてください」
「両手に花ですわね。わたくしも加わろうかしら」
「そうだな」
「ほら、ただし君もどんどんのんじゃって」
「ありがとうございます…でも、これどうするんですか?」
「そりゃ、ただし君が一人一人を連れていくんでしょ?」
「え?」
「嘘ですよ、ただしさん」
「そ、そうですよね」
今現在俺たちは、ベルさんに招かれる形で食事をしていた。
あんなことがあったので、それのお疲れ様会の意味もある。
だけどだ、お酒を飲ませていいのかと思う。
完全に三人は出来上がっていて、さっきから絡みがいちいちウザいのだ。
ただ、いつものようにメイさんはメイド服に身を包み、いろいろ対応を行ってくれているので、かなり助かっている。
この後の対応もメイさんに任せれば大丈夫なことに安心する。
よかった。
またヘンタイスキルをなんども発動させるっていうのも…
さすがの俺も疲れたしな。
そういえば、ここで気になったことを聞いてみる。
「そういえば、レメは?」
「あの子は、お城でお留守番ね」
「そうなんですか?」
「ええ、少し外に出掛けすぎてるのよね。だから、おうちで少し大人しく剣術をメイちゃんにお願いしようと思ってね」
「はい、任せてください」
どうやら、レメは城にいるらしい。
あれだけ好き勝手にやった後なので、仕方ないのかもしれない。
ちなみに、ベルさんはオーガたちとの戦いで無理をしすぎたので、ほんの先ほどまでは疲れて眠っていた。
だからこそ、どういうことが起こったのかはちゃんとわかっていない。
俺がヘンタイとして参戦し、勇者と戦ったことも知らないだろう。
酔っ払い三人を相手にしながらもなんとか食事を終えた俺はメイさんに後を任せて部屋に戻った。
今日はいろいろあった。
後は…
「起きてるか?」
【うん…】
「なんだ?元気がないな」
【だって、仕方ないでしょ、だって…】
「なんだ、話を黙っていたことを気にしてるのか?」
【それはそうでしょ】
「本当に、なんていえばいいのかわからないけど、あんまり気にするな。今日のお前はちょっとおかしいぞ」
【おかしいって、こう見えてもあんたを転生させた張本人なんだけど…】
「ふ…いい憎まれ口だ」
【何をバカなことを言ってるのよ】
「何を言ってるんだ?俺はいつでもバカだろう?」
【まあ、ヘンタイを認めているところを見ると、そうとしか思わないわね】
「く…急に切れ味が鋭い言葉を言ってくるな」
【あんたが望んだことでしょ?】
「そうだな」
俺たちは笑いあう。
一応これで、いらない緊張は簡単だけど解消されただろう。
さあ、ここからが本題だ。
「それじゃ、この際だからな…知ってることを教えてくれ」
【そうね。まずはあのときの話からね】
「ああ、最初に魔王を倒したやつが何か願いを叶えてくれるってやつか」
【それね】
「なんで俺には教えてくれなかったんだ?」
【教えてあげなかったわけじゃなくて、あなたは気が動転して、話をできる状況じゃなかったでしょ】
「確かにな…」
俺は最初のことを思いだした。
確かに、何が起こっているのかわからなくて、いろいろなことをブツブツと言った記憶がある。
何を言ったのかは覚えていないけどな。
面倒くさがられて、すぐに転生世界であるこの世界に送られたな。
その後は激動の日々だったので、忘れていたのだろう。
これについては、俺にも悪いところがあるので、何も言う気はない。
でも、ここで疑問に思うことはここではない。
「あとはだな。どうして俺は召喚じゃないんだ?」
【それについては、あなたが死んでいたからね】
「だから、転生したってことなのか?」
【そういうことになるわね】
「それについての理由は分かったけど、別に俺は神殿からも出てきたわけじゃないぞ」
【それは、あなたが完全にイレギュラーな存在だから】
「イレギュラー?」
【そうね。普通は召喚させる存在じゃなかったってこと】
「どういうことなんだ?意味がわからない」
【わからない?あたしが無理やり送り込んだのが、ただし、あなたなの!】
「え?俺は適当に選ばれたんじゃないのか?」
【それだったら、あたしもさっきのやつみたいに体をさっさと乗り込むわよ】
「おい、その言い方はどうなんだ…」
【だって、あたしは…】
「どうしたんだ?」
【ごめんなさい。ここがばれたから、少し通信ができなくなるけど、心配はしないで】
「どういうことだ?」
【落ち着いたら連絡する。だけど、忘れないで、確かにスキルはあたしが望んだものじゃなかったけど、それでもただしはあたしたちが…】
「おい、おい…」
どういうことなんだ?
何が起こってるんだよ。
急に展開がわからなくなってきたな。
せっかく意味のある内容を期待していたというのに、結局はわけのわからないままになってしまった。
今後、この世界で何が起こっていくのかわからないまま、俺はスターとの会話も終わり、一人夜の時間を部屋で過ごした。
まだ、この後のことがわからないまま…