表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/58

亭主元気で留守がいい②





 庭があんな調子だから、まあ屋敷の中もそうなるわよね……。

 屋敷の中を案内してくれるハーマンの後を、私はチベットスナギツネのような表情でついて歩いた。


 まあ確かに、昨日からちょっとだけ不思議だなとは思ってた。

 私が通ったのは、この広い広い屋敷の一部分ーー、玄関や自室や食堂といった僅かな場所だけだけど、美術品が少なすぎやしないかなって。


 この屋敷自体がとてつもなく立派なので違和感は少ないけれど、貴族ならどこの家にもあるような華やかな絵や壺なんかの美術品も、季節の花も飾られていない。


 飾られてるのは、歴史がありそうな鎧とか無骨な兜。それからちらほら絵もあるけれど、どれもこれも暗い色で、陰惨な光景を描いた陰鬱な絵ばかりだ。


 それはそれで好きだけれど、選りすぐりの憂鬱な芸術に囲まれているとこちらまで物悲しく暗い気分になる。主人の性格が反映されすぎではないだろうか。


「この絵はアルバート様がお選びに……?」


 私の言葉に、ハーマンは頷いた。


「直接お選びになったわけではございませんが……アルバート様がこの屋敷を引き継がれる際、屋敷にございました絵や美術品はこれらの品を残して手放されました」

「ここを引き継がれたのは数年前と聞いてましたけど、その時に?」

「さようでございます。今から六年前、アルバート様が十四歳の時に」

「なるほど……」


 色々と察した。

 確かに、十四歳の拗らせた男の子が好みそうな趣味ではあるかもな……。



 やっぱりその頃のアルバート様は右腕に包帯を巻いたり眼帯つけたりしたのかしらと思いつつ、その後もどこもかしこも暗く整えられた屋敷を歩き、前世で憧れたホーンテッドマンションの中(※ただし夢や希望や楽しさは取り除かれている)にいるような気分になった私は悟った。


 こんなところに住んでいたら、情緒が不安定になってしまう……。


 昨日から思ってたけど、この屋敷は暗いのだ。雰囲気が暗すぎる。最初はこの屋敷の主人のせいかなと思っていたけれど、彼がいなくても普通に暗い。


 なのでここはもう、綺麗さっぱりガラッと模様替えをすることにしよう。

 女主人とは屋敷の中の采配を行うものだ。それならば屋敷の中を住みやすく整えるのも、やっぱり私の役目であろう。


 ここは思い切って、素敵華やか空間にしてしまおうではないか。


 もしも私がアルバート様と仲の良い夫婦ならば、我慢して夫の趣味に寄り添うべくちょっと花を添える程度の模様替えでとどめておいたと思うけれど、初対面からクズムーブを発揮してきたアルバート様にそんな忖度をする義理はない。


 あの拗らせ夫のアルバート・フィールディングの度肝を抜くべく、この屋敷をまるっと一新してやるのだ!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月30日に、家庭内ストーカーのコミカライズ一巻が発売されます!
8u7tbi8686cv8vyw8ec1hzbdxg2_vbf_1d0_1xo_12bvx.jpg
石沢うみ先生による超絶美麗コミカライズ、本当にすごいです!
ご予約などいただければ大変ありがたいです…!ぜひよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
[良い点] チベットスナギツネでクスッと来た [気になる点] 屋敷内の差配は任せたと話た挙句に、2週間も留守とかさ、ハネムーン台無しにされた嫁が内外的に取り繕おうとするなら、後先考えずにガンガンやらか…
[良い点] チベットスナギツネのくだりで大笑いしましたw 今ネットで流行っているものを挙げてくださって、とてもわかりやすかったですw [一言] 軽快な文章で、どんどん読み進められます。最後まで楽しみに…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ