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魔女のオルガン  作者: 華色
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八章 『救済の魔女』

 次の日、私は言われた通りにエルカビダの教会に向かった。

 まだ秋だというのに、このあたりは雪が降っている。朝になって降る雪の量は少なくなったようだが、夜は吹雪いていたようで地面が一日で真っ白になっていた。


 きっと普通の人間からすれば凍えるほどの寒さなのだろう。しかし、魔女は人間に比べて気温の変化に強いようで、まだ耐えられる。

 高い屋根にある美しい彫刻像に雪が乗っている。

 指がかすかに震えているが、それは寒さのせいだけではなかった。


 大きな扉を前にして立ち止まる。

 昨日の事を思い出す度に、心臓がドクドクとうるさくなる。

 息も浅くなり、昨日の出来事がトラウマになるほど恐ろしく思っていたことを悟る。

 でも、私には彼女を悪魔と罵る権利がない。なぜならば私も、過去に人を殺してしまった同類だからだ。


 意を決して、扉を開ける。


 すると、目の前に悪魔が立っていた。彼女は礼儀正しくお辞儀をする。


「ふふ、来てくださったのですね。ありがとうございます、サファイア様」

「私が来ることは分かっていただろう。形だけの謝礼は要らない」


 そう言ってシヴァニの横を通って教会の祭壇へ歩く。

 すると、聞き覚えのある声が聞こえた。


「サファイア!」


 エイダンが縄に縛られた状態で、膝をついて座っていた。


「サ、サファイアさん!」

「……」


 エイダンだけではない。サナエ、ミィナも同じように縄に縛られていた。

 その三人のすぐ側に立っているのは、白い包帯で目を隠した長い金髪の青年。神聖な雰囲気の白い服を着ている。


「『犠牲の魔女』、よくここまで来た」

「お前は誰だ、何のつもりだ! 早く三人を放せ!」

「サ、サファイアさん、ダメッス! その方は」


 サナエが何か言おうとしたのを遮って、下を向いたまま黙っていたミィナが口を開いた。


「『救済の魔女』様だよ」


 『救済の魔女』……?

 確かに、身がビリビリするように圧倒的な魔力を感じる。

 でも、まさか本当に……


「その通り」


 彼は感情の抑揚がない話し方で、私に語り掛ける。


「我が魔界を統べる神、『救済の魔女』だ」

 

 言われてみれば彼の服は白を基調とした高級な生地が使われていて、それに古代的なデザインだ。ビジュアルからも彼が『救済の魔女』と連想できる。


「『救済の魔女』がどうしてここにいる?」

「『救済の魔女』を絶やしてはならない、という我らの規定を守るため。我以外の『救済の魔女』は全滅した。我は安全に世継ぎを作る必要があった」

「何故私をここへ呼んだ」

「お前が『破壊の魔女』を滅する最後の手段だからだ」


 訳が分からないことばかりだ。

 だが、『救済の魔女』は私の疑問の全ての答えを持っているようだ。


「ギアス様、全てお話致しましょう、彼女たちには納得のいる説明が必要です」

「承知した。必要ならばそうしよう」


 『紅血の魔女』が口を挟むと、『救済の魔女』は頷いて再び話し始めた。


「『犠牲の魔女』、『物語の魔女』、『紅血の魔女』。お前たちをこの人間界に連れてきたのは私だ」

「私は『救済の魔女』の世継ぎを産むための協力者として。『犠牲の魔女』はその能力を活用するため、『物語の魔女』は……『犠牲』の対象にするため」

「『犠牲』の対象⁉ どうしてわたしが……!」

「『物語の魔女』はもう戦力にはならないからだ。魔術回路は破壊され、もう修復できない」


 それを言われた途端に、ミィナは怒りの剣幕で『救済の魔女』に言葉を投げかけた。今にもバランスを崩して倒れてしまいそうだった。


「わたしはまだ戦える! そのために能力だって訓練したんだよ、勝手に決めないで!」

「『物語の魔女』一人では、能力を使うことしかできない。その能力が『破壊の魔女』との戦いのどこで役に立つと?」


 ミィナに必死の言葉を言われても、『救済の魔女』は動じない。その様子は、悪魔の『紅血の魔女』とどこか似ていた。


「『物語の魔女』はこの世に絶望し、過去に囚われたままだ。その姿が物語っているだろう」

「黙りなさい! 私はまだ生きる、目的を果たすまで絶対に死なない。例え神様に命を差し出せと言われても!」

「その目的を果たせば、命を差し出すか?」

「っ……」

「『物語の魔女』には、もうその目的しかないはずだが」


 その言葉を聞いて、ミィナは顔を真っ青にした。手を強く握りしめ、唇を血が出るほど噛み締めた。

 必死にただ生きたいと願う彼女に冷たく接し、自分勝手に物事を言い続ける『救済の魔女』に私は耐えられなかった。


「ふざけるな。私もこの能力を使うつもりはない。そもそも『破壊の魔女』を倒すのはお前の仕事だろう」

「そうだ。だが愚かな魔女が『破壊の魔女』を逃がした。生存していることが分かった頃には、『破壊の魔女』の力は強くなり過ぎていた。我らではもう手に負えない」


 淡々と語る『救済の魔女』。神様と言われる彼が、こんなにも頼りない存在だったのかと失望する。


「それ故に『犠牲の魔女』に協力を頼んでいる。お前の能力には上昇の限度がない」

「『破壊の魔女』を倒せるのは、魔界を救えるのは貴女だけなのです」

「私の、能力が……?」


 私の能力が必要とされている。こんなこと、生まれて初めてだ。

 私の能力は嫌悪され、恨まれ、憎まれているだけだったのに。


「勿論、タダでという訳ではない。『玩弄の魔女』を殺害した事件の無罪を証明しよう」

「今、何て……⁉」

「我は見ていた。『玩弄の魔女』はその能力を以って、自分を『犠牲』の対象にした。だから『犠牲の魔女』は殺人を犯してはいない」


「いいや、いいや違う。私の能力が、私があの子を殺したのは紛れもない事実だ! 私は確かに魔力を望んでいた、周りの人たちと同じ暮らしがしたいと思っていた!」


「『犠牲の魔女』は、『犠牲』の対象が能力の使用者に対して、愛情を抱く程に得られる魔力量が大きくなる。長く使用されていなかった能力だ、どこぞの魔女が本に間違った認識で書いたのだろう」


「サファイア様が持っている膨大な魔力量。それこそ、貴女が『玩弄の魔女』を私欲で殺さなかった証拠です」


「そうだったんスか……」

「つまり……どういうことだ?」

「サファイアさんが魔女を殺したっていうのが、あたしたちの勘違いだったってことッス」

「……」


 先程まで鋭かったサナエの視線が、少し優しくなった気がする。

 エイダンもある程度話は理解したようで、ホッとした表情を見せてくれた。

 ミィナはずっと黙って俯いている。


「『物語の魔女』は候補から外す。『犠牲』の対象として、愛情が欠けている」

「サファイア様、お選びください。サナエ様か、エイダン様か。自分の『犠牲』に相応しい方を」



 どちらかを選べだと?

 あの残酷な行為をもう一度繰り返せと?

 『救済の魔女』と『紅血の魔女』を嘲るように鼻で笑う。



「私はもう、二度とこの力を使わないと決めているんだ」

「それは自分自身が許すことのできない、過去の罪への償いに過ぎない」



 そうだ。

 これは罪滅ぼし。


 でも、それだけじゃない。

 何の罪もない、明るい未来を抱えた三人。

 精一杯今を思い悩んで、強く生きようとしている。

 私は三人の未来を守りたい。


 自分が歩めなかった輝かしい人生を、三人に歩んでほしい。



「その能力を使わなければ、魔界は滅亡する。魔界に存在する幾多の命より、少数の命を優先するのか」



 体に魔力を纏う。

 守りたいものを守る。

 そのためならば、神にだって、悪魔にだって、『災厄』にだって立ち向かおう。


「ならば私は、今のこの力で『破壊の魔女』を倒す」

「それは不可能です。貴女の今の魔力量では『破壊の魔女』には遠く及ばない。それに貴女は片目の魔術回路を破壊してしまった」


 そう言うと、『紅血の魔女』は静かに大剣を手に取った。


「身をもって教えましょうか。貴女がどれだけ無力なのかを」


 彼女は何人もの魔女を殺した凶器を構え、私に振りかざそうとした。


「お前の力や魔女騎士団の力を借りても無力なのか?」


 そう言うと、ピタリと『紅血の魔女』は動きを止めた。そして微笑を絶やさないまま、私を冷たい視線で貫いた。


「貴女は思っていたよりも愚かだったのですね」

「『紅血の魔女』、避けろ」


 『救済の魔女』は端的に言った。『紅血の魔女』がサッと横に避けると、彼女のいた場所に銃弾が飛んできた。

 銃弾が飛んできたのは、教会の入口から。


 そこには、二人の魔女が立っていた。


 背の高い白髪の女性と、赤髪の少年。

 白髪の女性は髪を一つに結っており、黒を基調とした軍服を着ている。彼女が纏っているマントが風に揺れる。スマートな体型に美しい顔は、『紅血の魔女』とそっくりだった。


 赤髪の少年はカーキのジャケットに、ファーのついたフードが付いている。両手に二丁の銃を持っている。


「ああ、心からお待ちしておりましたわ!」


 それを見た瞬間、近くにいた悪魔が目を輝かせて反応した。

 腕を広げて恍惚の表情で二人を歓迎する。

 ……いや、二人ではない。その目に映っているのは、女性ただ一人だ。

 そんな彼女に冷たい視線を送る凛々しい姿をした女性が誰かは、初めて見る私でも理解した。


 魔女騎士団団長、ベディヴィア。


 常に団長の自分に誇りを持ってそこに立つ姿はとても美しい。

 気高く、穢れなき戦士。

 かつて数十万を超える魔女の軍隊を、彼女はたった数百人の団員達を指揮して殲滅させた。

 そしてその戦いには彼女自身も参加し、前線に立ち続けた。

 最後に残ったのは山のような魔女の死体と、その場に立ち続けるベディヴィアの姿だけだったという話だ。


「突然の訪問を許せ、『救済の魔女』」


 そう言って、彼女は美しく『救済の魔女』に礼をする。その後、背中に背負っていた大きな槍を取り出した。刃は柄よりも長く、刃こぼれは一切ないが何十年も使い込まれているようだ。


「娘を、処刑しに来た」


 美しい睫毛に長くはらりと流れる髪、そして整った顔立ち。

 親子だと一目で分かるくらい、シヴァニとベディヴィアは似ていた。

 だがそれは外見だけ。内面は真反対のようだ。


「ふふっ、会いたかったですわ。もう何年ぶりでしょう」


 そう言いながら、悪魔はベディヴィアに歩み寄る。

 彼女が私たちからある程度離れた途端、ヒュッと風が吹いた。

 刃同士がぶつかる轟音が室内中に響く。


「私は話をしにきた訳ではない。迅速に終わらせる」

「あら、残念ですわ。こんなに貴女に会えて嬉しいと言うのに!」


 凍った表情のベディヴィア。そこからは強い嫌悪は感じられる。

 対して悪魔のシヴァニは、ずっと微笑んだまま。ただ、いつもより心から笑っているような気がした。


「さぁ、あいつらは勝手にやらせておいて……あとはお前だ」


 ベディヴィアと一緒に現れた少年がこちらにやってきた。持っている銃をおもちゃのようにくるくると回している。


「久しぶりだなぁ、兄貴。俺だよ、ヴィンゼルだ」

「……生きていたのか。規定を破り、能力と魔力を失った無能力者」

「おお、覚えていたかぁ~! じゃあこれも覚えておけよ」


 ニカッと笑った後、彼は一丁の銃を天井に向かって投げる。その間に、ナイフを三本取り出した。


「能力も魔力も必要ねぇってことをな。要はココ、だ」


 自分の人差し指でこめかみをつつき、ナイフを全て壁に向かって投げた。壁に当たったナイフは跳ね返り、ミィナとサナエ、エイダンの縄を切った。


「えっ⁉」

「わあああぁぁぁーっ⁉」

「きゃっ!」


 縄が解けた瞬間、エイダンは私に飛びついてきた。それをしっかりと受け止める。

 サナエは気まずそうに私に寄ってきて、言葉をこぼした。


「ごめんなさい、サファイアさん。あたし……」

「大丈夫だ。ミィナやお前に怪我は? 『旋律の魔女』も無事か?」

「あたしたちは大丈夫ッス。ライウェさんも生きてます、まだ目を覚まさないんッスけど……」


 よかった、と安心して力が抜けそうになった。


「話は全部聞いたぜ。『犠牲の魔女』がやむを得ず能力を使ってしまったこと、お前が何を企んでいるか。ったく、カミサマのくせに一人じゃなんにもできねーのかよ」

「元はと言えば魔女騎士団が『物語の魔女』を守れなかったせいだろう。我は常に魔界のための行動を取る、間違いなどない」


 『物語の魔女』を守れなかった?

 一体何の話だろうかと首を傾げていると、ミィナの様子がおかしいことに気づいた。彼女はぶつぶつと何かを呟いている。


「そうよ、魔女騎士団が守ってくれれば……!」

「俺に言われても困るぜ? 無能なおっさん二人の失敗なんて俺は知らねー」


 ヴィンゼルは気に留める様子もなくそう言うと、銃を回していた手を止め、天井から落ちてきた銃をキャッチした。


「さぁ、このまま大人しく魔界に帰って来い。俺たちにも『災厄』を止める策がある」

「まずその策を聞いてからにしよう」


 ああ、と言って素直にその策を講じるヴィンゼル。

 だがそれもまた、私の大切なものを犠牲にする策だった。


「人間界に、『破壊の魔女』を落とすんだよ」


「そんなことが許されるとでも思っているのか⁉」


 気づいたら、私は大声をあげてヴィンゼルを睨みつけていた。

 彼は、きょとんとした目でこちらを見た。


「人間界にも私たちと同じように生きる命がある!それなのに、私たちの都合で人間界を犠牲にしようだと⁉」

「じゃあ、あの化け物にどうやって対処するんだ? ベディヴィアも片腕を失くした上に敵わなかったんだぞ?」

「片腕を……?」


 彼女の姿を鮮明に思い出す。

 確かに彼女の左腕は……義手だった。

 魔女騎士団の団長が敵わない相手。団員たちとの戦闘でもあれほど苦労した私に、本当に『災厄』を倒すほどの力があるのか?


「今はなんとか『微睡の魔女』が『災厄』を眠らせているが、もう時間がない」

「待ってくれ」

「ん?」


 私が『破壊の魔女』を倒せないと、人間界が危ない。

 だけど、もし本当に私が何かを『犠牲』にしないと倒せないのなら……サナエかエイダンを失うことになる。


「『救済の魔女』、私の身はどうなっても構わない。他に何か策はないのか? 私だけの犠牲ならば、喜んで身を捧げる、だから……」

「魔女の堕落」


 思いついたように、『救済の魔女』はそう言った。


「魔女の堕落を利用すれば、『破壊の魔女』を倒せる可能性がある」

「待て、暴走しすぎると理性がなくなる。サファイアが暴走したらどうするんだ」

「その心配はない、大丈夫だ」

「お前、何を根拠に……」


 ヴィンゼルの続きの言葉を、遠くで爆発音のような大きな音が遮った。戦っていた二人は、いつの間にか外に出ていたようだ。


「やっと決着がついたようだ。思っていたより長かったな」

「どういう意味だよ、それ」

「規定を破った『救済の魔女』に幸せになる権利はないことを覚えておくといい」

「まさか……ベディヴィア⁉」


 ヴィンゼルは真っ青な顔で音がした方へ走っていく。

 それに続いて、教会にいた者も全員外に向かった。







「そいつ、しぬぞ?」


 俺はある日、おかしな女に出会った。


 その女は血をだらだらと垂らしながら、死体がそこら中に転がる道を歩いていた。でもその女は自分の怪我など気にも留めず、腕の中にいる幼い少女の心配をしていた。


 俺と同い年くらいの、可愛らしい少女だ。

 その子は深い傷を負っていて、もう十分ももたないくらいの命だった。


「わたし、しぬの?」

「ああ、まちがいなくしぬよ」

「死なない、私がなんとかしてみせる。だから大丈夫だ、シヴァニ」


 腕の中の少女がもう助からないことは、その女も分かっているだろう。

 だから、こんなにも辛く悲しそうな顔をするのだろう。


「やめてくれ、そんなかおをするのは」


 それを見て心が痛くなる。そんな顔をしないで欲しいと願った。

 だから俺は、それを罪と知らずに能力を使用する呪文を唱えた。



「我は『救済の魔女』。この世界を統べる神として、命を救済しよう」



 少女の傷は跡形もなく消えた。

 女はそれを見て、涙を流して俺に礼を言った。


「『救済の魔女』だったのか。ありがとう、この恩は忘れない」

「いいよ、でもそのかわりにたのみがあるんだ」

「なんだ?」


「もしおれがしにそうになったら、たすけてくれ」


 これは別に、意図があったわけではなかった。ただ純粋に自分が望むことがそれだけだった。

 それを聞くと、その女は俺の前で跪いた。


「私は魔女騎士団団長、ベディヴィア。いつでも呼ぶといい、『救済の魔女』。必ず私が助けに行こう」

「ありがとう!」


 腕の中の少女もにっこりと笑い、僕に感謝の気持ちを伝えてくれた。

 嬉しくて、俺も精一杯の笑顔を返した。

 


 だが、幸せな時間は終わる。



「『救済の魔女』ヴィンゼルは、私益のために能力を使った。これは『救済の魔女』の規定に反する」


 帰るとすぐに俺は親の手で、縄で縛られて宙づりにされた。

 その場に全ての『救済の魔女』が集まり、俺の処罰について討論していた。


「これは『救済の魔女』としてあるまじき行為だ」

「命をもって償わせるべきだろう」

「そうだな、それが良い」


 俺の処刑が決まりそうになった時、自分の兄にあたる『救済の魔女』、ギアスが口を出した。


「生きたまま苦しませた方が良い。魔力を剥奪し崖の上で永遠に宙づりにする。本人が心から償わなければ意味がないからな」


 ギアスのその非情な案は、いとも容易く通ってしまった。

 その刑が執行される直前、ギアスと俺は言葉を交わした。


「あにき、あとでたすけてくれるんだろ? なぁ」

「お前の罪は許されない。我も父も、お前を決して許さない、助けない」

「どうしてだよ……? いのちをたすけて、わるいのか⁉」

「我らは正義より平等を守るもの。『救済の魔女』に優しさはいらない」


 そう吐き捨てられた後、俺は目を潰されて魔術回路を潰された。

 俺はその時、決意した。



 もう他人に優しくなどしない、と。



 能力は、『救済の魔女』の規定を破ると同時に剥奪されたようだ。

 それが『救済の魔女』の強力な能力にかけられた呪いだった。


 そして、俺は来ない助けをひたすら願いながら、底が見えない崖の上に吊られたのだった。

 


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