玄関
華さんと出かけるようになって数か月、俺の思いを告げられずにいた。
今日は朝から一緒に読書をするため、華さんが俺の家に来る。
ここ最近は外は冷えるので家でなにかすることが多い。
同じ場所でも、会って一緒にいられる時間が長ければ長いほど嬉しい。
それぞれ別のことを楽しんでいても、同じ空間いるだけで部屋の空間が色彩豊かになる気がする。
けれど、夕方になれば帰ってしまう。
そのあと部屋が広く感じて俺は寂しくなる。
今日こそ言おう。
それが伝わってしまうのか、華さんが大丈夫ですかと聞いてきた。
それほど普段と様子が違うらしい。
今さっき来たばかりでまだ玄関にいるけれど、言ってしまおう。
久寿「華さん、俺と付き合ってほしい。」
華さんの頬がさくら色になる。
心情が顔に出やすいところも好きだ。
久寿「華さんともっと一緒にいたい。結婚も視野に入れておいてほしい。俺は心臓が弱くて体は頼りないが、心に頼ってほしい。」
華「あの…、ずっと言えずにいたのですが…」
と、言いずらそうに華さんは俺に出会う前のことを話してくれた。
5年前、華さんが19の時に親同士の紹介で出会った人と結婚したけれど、旦那の暴力がひどくどうしても耐えられなくなったので親や友人に相談し、みんなの手伝いがあってやっと別れられたそうだ。
若くして大変な出来事があり、やっと旦那と別れて、やっと好きなことを出来るようになり図書館によく通うようになったらしい。
華「離婚歴がある女となんて付き合いたくないでしょ。」
ぷいっと華さんは顔をそむけた。
その華さんは肩が震え、見えていないが泣きそうだ。
俺は華さんの顔に触れこちらを向かせると、華さんは瞳いっぱい涙で潤んでいた。
どんなことを経験して戸籍が傷ついたとしても好きなのは好きだし、その話を聞いていなくなるのは上っ面しか見ない人だと俺は思う。
久寿「そんなことない。過去になにかあったかは俺には関係ない。俺は華さんとなるべく一緒の時を過ごしたいと思っている。華さんは、これから俺とどうしたい?」
そう言うと、華さんは涙をぽろぽろと流し始めた。
すると、頬にある俺の手に華さんが両手で触れた。
華「久寿さんと一緒にいたい…。」
小さく絞り出した声で華さんは本音を言ってくれた。
どんな人も過去にとらわれていては、今は何も変わらない。
それが自分の好きな人であれば救い出したいと思う。
たとえ、この先将来的に二人が離れることがあっても
今いたいと思える相手といたいんだ。
そう思った俺は、ぎゅっと華さんを壊れないように抱きしめた。