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第3話

 目が覚める。

 頭が痛いのはきっと大斧のせいではないのだろう。


 あの少女はどうなったのだろうか。『一緒に』と言っていたから死んだのだろうと思いたいが。


 とにかく落ち着いてまわりを確認する。


 とても落ち着いてはいられない光景がそこにはあった。


「ここは……!?」


 ここは高校の校舎裏。私が先程いた場所。


 そして私がカナに告白された場所。


「だがもうカナは……」

「私がどうかした?」

「…………は?」


 なんだこれは。私は何か悪い夢でも見ているのか?


 カナは死んだはずだ。ならここにいるこいつは誰だ?


 いや、それだけではない。私自身もそうだ。大斧で頭を割られたのはカナだけではなかった。


「もう、さっきからどうしたの?何か悩みでもあるの?」


 しまった、カナを不安にさせてしまっている。

 …………しかし、これは現実なのか?


 これが現実でないのなら。

 これが夢であるなら、むしろ夢から醒めるべきであるのではないか?


 しかし、夢から醒めるにはどうすればいいのか。

 私はどうすればよいのか。

 カナをどうするのか。

 あの少女をどうするのか。


 夢の中で死ぬと目覚めるとか。痛覚がなければ夢だとか。

 そんなもの当てはまらないじゃないか。


 頭の中の混乱は収まらない。


 感情に任せて駆け出す。

「あっ、ちょっと待ってよ!」

 カナが言うが、構っている暇はない。


「もう、さっきから何なの?君に言いたいことがあるから呼び出したのに!待ち合わせ場所にいたから聞いてくれると思ったのに!」

 そんなもの知らない。告白を受け入れたらどうせ殺されるのだろう?


 ん?


 私は立ち止まる。カナもつんのめりながらなんとか立ち止まった。


「そうか、そういうことか」

 そうだ、告白など受け入れなければいい。断ればいい。謝ればいい。

 私は呼吸を落ち着けてから言う。


「すまなかったな、急に逃げ出したりなんてして」

「もう、本当にびっくりしたよ」

 やめてよね。とカナは文句を言う。自分の命に比べればこのくらい安いものだ。


「それで?話っていうのは何なんだ?」

「ああ、うん。それはね……えっと………」


 カナは言う。


「その、私と。付き合ってくれないかな?」


 そう、ここだ。


「すまない。君の気持ちに応えることは、俺には、できない」

「そっか………」


 カナは続ける。

「そっか…、私、フラれちゃったかぁ…………」


「ああ、その、なんと言えばいいか分からないが、その……」

「ふふ………」


 …………え?


「ふふふ、ふふふふ、ふふふふふふひひひひ、ふふふひひひひひへへっ、ふふふふふへへへへへへへっ、へへっ、へははっはははは、あははははははは」


 !?

 なんだこの光景は……!いい加減イカれてる!!


「ふははははははははははははははははははははははははあははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」


 なんだこれは。なんだこれは!


 本当に辛いときに本能的に笑ってしまうという説は確かに聞いたことがある。聞いたことはあるが………!


「本当に何なんだよこれは……「あはははははははははははははははははははははははははは!!!!!!」


 駄目だ。もう駄目だ。こんな奴に構ってなどいられない!


 逃げるんだ。早く、速く、疾く!!!


 私は駆け出す。奴に追いつかれないように。


 駆ける、駆ける、駆ける。


 声は聞こえなくなった。


 ゆっくり後ろを振り向く。いない。


 安堵して前に向き直る。いる。


 !?


「おかえり。もしかして、やっぱり告白、受けてくれるのかな?」


 後ろを向き、また駆ける。


 しばらく駆けると、また気配が消えた。


 後ろを振り向く。やはりいない。


 前に向き直る。いる。


「もう、君は本当に恥ずかしがり屋だなぁ。そういうところも大好きなんだけどね!」


 また駆ける。気配が消える。振り向く。


 向きなおらずに、さらに駆けようとする。


 地面が迫る。わけもわからぬまま倒れる。


 足がもつれたのだという実感は、その後だった。


 しかし、そんなことを考えている余裕はない。


 這ってでも逃げなければ………!


 そうでないと……


「だーれだ!」


 突然、視界が黒に染められる。


 塞がれているのだということはすぐに分かった。


 こんなことをする奴の心当たりは一人しかない。


「なあ、助けてくれよ……、カナ………!」

「助ける?助けるってなんのことかなぁ?」

「助けてくれよ……!お前はどうして俺のことをそんなに追ってくるんだ!?」


 カナは心底可笑しそうに笑う。


「あっははは!嫌だなぁ、好きだからに決まってるでしょう?」


 当然のように言うのだった。


 呆然とする私にカナは続ける。


「あっ、でもどうせ君はまた逃げるよね?それなら今ここで動けなくしちゃった方がいいのかな?」

「は?お前、何を言って……」

「それじゃあ、動けなくしちゃおうか!あっ、でも刃物がないや。殺しちゃうしかないかぁ。しょうがないね」


 そう言うと、カナは私の首に手をかける。


「………!」

「大丈夫だよ、体は残さず食べてあげるからね。ずっと一緒になれるよ」


 首が締まる。


「………」

「君は私の体の一部になって……、永遠に私と一緒になれるの」


 首が締まる。


「……」

「さあ、一緒に永遠の時を生きましょう……?」


 首が締まる。


「…」

「そろそろだね。ごめんね、苦しいよね?もうすぐ楽になるからね」


 首が締まる。


「」

「           」

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