第7話
そのまま、シャーンブルック侯爵の腕に抱きしめられる。
「シャーンブルック侯爵?!」
「ニコラスだ」
「ニコラス?」
「婚約者なんだから、名前で呼ぶべきだろう?」
「婚約した覚えはないですってば!」
ローズは、ニコラスの腕から逃れようと必死だ。
「じゃあ・・・ダイアナ・ロザリン・クレアモント、私の妻になってくれますか?」
ニコラスは、そう言うとローズの指に、指輪をはめた。
「君が社交界に出て、ライバルが増えてからだと、何かとめんどくさいからね」
そう言って、ローズの額にキスをする。
「なにそれっ」
ローズはますます不機嫌になる。
「私に興味なんてないくせにっ」
そう言われて、ニコラスは唇を歪める。
「興味を持って欲しいってことかな?」
「そんなことないけど・・・」
ローズは、どう言えばいいのかわからなくなる。
「婚約は、レディ・エミリーも承知されている」
そう言われて、ローズの肩から力が抜けた。
お母さまったら、騙したわねっ。
そんな脱力感に襲われる。
「ちなみに、僕はレディ・エミリーのいとこにあたるんだ。
公爵の年の離れた妹の子供が僕でね」
ローズは身じろぎもせず聞いている。
「婚約は、君も了承したよ。
3歳の時に僕がプロポーズして、君は了承したからね」
ローズは、かぁ〜っとなる。
「そんなの、覚えてないものっ、無効よ!」
「ところが、君のご両親もうちの両親も、文書にしちゃったんだよな」
そう言うとニコラスが、内ポケットから封筒を取り出した。
ローズは、その封筒を奪い取るとピリピリと破いてしまう。
中に入っていた紙は細切れになる。
「大丈夫。
中身は、白紙だから」
嬉しそうに言うニコラスに、ローズは不快感を隠さない。
「ていうか、あなたいくつよ?」
ローズは、ふと思い出して聞いてみる。
「おや、僕に興味が出てきたみたいだね?」
ニコラスは含み笑いをする。
「ちっ、違うわよ!」
「僕は27だよ」
27ってことは・・・私が16だから・・・
「14歳で3歳の子供にプロポーズしたっていうの?」
ローズは驚く。
「まあ・・・そういうことになるね」
「あなた・・・ロリコン?」
ローズは、不信に満ちた眼差しでニコラスを見つめる。
「まさか」
ニコラスは、ローズの言葉を気にする様子もない。
「ロリコンなら、もう10年前に手を出している」
真剣にそう言われても、困ってしまう。
「まあ、君が了承してたっていうのもわかったことだし、戻ろうか?
公爵夫人が心配しているといけないから」
何となく言いくるめられた感もあるものの、不承不承公爵夫妻のもとに戻る。
ふと気づくと、ローズの指にはニコラスにはめられた指輪がはまったままだった。