第24話
その後のオールマックスは、無難に過ぎていく。
何人かの男性と踊ったローズは、無難に夜を過ごしていた。
社交界の重鎮であるマンチェスター公爵夫人の言葉は、的確にローズをレディとして振る舞わせる。
最後まで待たずに、ローズはニコラスにエスコートされて家路につく。
マンチェスター公爵夫妻やクレアモント侯爵夫妻も、大成功に終わったローズのデビューに満足そう。
田舎暮らしのリズムに慣れているクレアモント侯爵夫妻は、あくびをしてそうそうに寝室に下がる。
公爵や公爵夫人も、それぞれに書斎や寝室へと消えていく。
あとに残されたローズ。
するっとコートを脱ごうとするローズを、ニコラスが手伝う。
ローズには、後ろに立つニコラスの顔は見えない。
なのに、なぜかドキドキが止まらない。
今日は、たくさんの男性たちと踊った。
けれども、その誰ともこんなにもドキドキしたりしなかった。
熱くなる頬を隠したいからか、ついついニコラスに素っ気なくしてしまう。
ニコラスはニコラスで動揺していた。
コートを脱がせた瞬間露わになったローズの肩。
白く滑らかだった。
ふわりと甘い香りが漂う。
今まで遊んだどんな相手とも違うほのかな甘い香り。
香水の匂いではない気がする。
何の香りなんだろう?
そんなことを考えていてつい、手の動きが止まる。
「ニコラス??」
ローズが不思議な顔をする。
ニコラスは、はっと我にかえる。
そんな自分を誤魔化すように、ニコラスは早々に家路についた。