第22話
モードは赤みがかった金髪の美女で、社交界の花形だった。
ジェイムズとモードは、仲のいい兄妹で有名だった。
年の頃はローズとあまり変わらないが、ローズに比べて豊満な体つきをしたモード。
彼女が何かしたわけではないのに、その社交界での評判は決して良いとは言い難い。
まわりの婦人たちは、辛口で知られるマンチェスター公爵夫人によって、レディ・モードが致命傷をおうのを、固唾をのんで見守った。
あんな評判の芳しくない、豊満な体つきの女をデビューしたての孫娘の側に置いておきたいわけがない。
しかし、彼女たちの期待に反して、マンチェスター公爵夫人は、レディ・モードに寛容だった。
「私をお孫さんに近づけても、よろしゅうございますの?」
公爵夫人は、レディ・モードを一瞥した。
レディ・モードは、胸元の開いた青いドレスを着ていた。
「あなたが恥ずべき行いをしていないのに、私はあなたを罰する立場にはないでしょう?
それに、あなたはご自分に似合う服を知っているだけではないのかしら?」
確かに、大きく開いた胸元も、流れるように腰を包む布地も、レディ・モードのスタイルの良さや丸みを帯びた体つきを際立たせていた。
レディ・モードは、目をぱちくりさせたあと微笑んだ。
社交界のご意見番ともいえるこの公爵夫人から、このような言葉を聞けるとは思わなかったのだ。
「ね、僕の言ったとおりだろ」
傍らでジェイムズが言った。
「まあ、どんなひどいことを言ったのかしら?」
公爵夫人は、ジェイムズを軽くにらんだ。
「マンチェスター公爵夫人ほど、物事の本質を見抜ける女性はいらっしゃらないということですよ」
あっけらかんと言ってのけるジェイムズに、さすがの公爵夫人も苦笑するしかなかった。