第21話
そんな夢想を繰り広げていると、ローズがジェイムズにエスコートされて戻ってきた。
頬が薔薇色に染まり、美しい。
そんなローズを公爵夫人が優しく見守る。
ローズが戻ってきたのを見ると、男たちが再び世話を焼き始める。
男たちにちやほやされて頬を染めるローズに、ニコラスはムカムカしてきた。
けれども、表立ってローズを咎めるわけにもいかない。
このぶんでは、夜会のたびに男が増えていきそうだ。
マンチェスター公爵夫人は、にんまりしている。
「この・・・」
おそらくニコラス以外にローズをくれてやるつもりもないくせに、ニコラスをやきもきさせて楽しむおばに、ニコラスは生まれて初めて悪態をつきそうになった。
その後も、男たちに囲まれているローズを見守るという地獄のような時間が続く。
ジェイムズは、ニコラスの隣りで時間を潰すことにしたのか、ずっと横にいる。
マンチェスター公爵夫人の隣りに、優良な花婿候補が二人も集まっているのを、母親たちが遠巻きに見つめる。
マンチェスター公爵夫人の傍らにいるローズのまわりにも優良株が侍っているし、なんとかしてあの中に近づきたい。
そんな思いがひしひしと伝わってくる。
その時、一人の若い女性が近寄ってきた。
レディ・モードである。
「今夜は、珍しく逃亡なさらないと思ったら、ニコラスがいるからだったのね?」
ニコラスに微笑みかけるその顔は、ジェイムズによく似ている。
ローズが戸惑ったように顔を向ける。
「レディ・モード・キンバリー。
ジェイムズの妹だ。
モード、レディ・ダイアナ・ロザリン・クレアモントだ」
ローズとモードは、一目で互いに気に入ったようだ。