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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
3章 ヤンデレ妹の兄は先輩の彼氏を演じるようです。
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偽物の恋人

「私の、恋人になってもらえませんか?」

「………………え?」


 あまりにも突飛で突然で想定外な瑠璃の告白に、夜は素っ頓狂な声を上げる。


 本音を言えば、夜の反応は最低最悪なものだろう。


 告白とは、いわば人生を共にしたいと、あなたの時間を私に下さいと、あなたが好きですと自分の秘密にしていた想いを打ち明けるのと同義。つまり、それ相応の決意が必要で、覚悟が必要なもの。


 そんな告白を受けて、驚くなと言う方が無理な話だとは思うが、そうだとしても夜の反応は覚悟を決めて、決意をもって告白してくれた相手を傷つけてしまうものだった。


「え、えっと……」


 しかし、かといって何を言えばいいかわからない。


 自慢ではないが、本当に自慢ではないが、夜に告白された経験も告白した経験もない。皆無だ絶無だ虚無だ。


ある――と言っていいのかはわからないが――のは、ラノベやマンガ、アニメで培った偏った知識のみ。


 だから、告白されたとき、何を言えばいいのか、正解なのか皆目見当もつかないのだ。


 もちろん、正解なんてものはないというのはわかっている。これだと言えるような返答がないのもわかっている。


 故に、夜が考えに考え抜いた返答が最適解だというのもわかっているのだ。


 だとしても……。


「あ、えっと、その……ち、違うの夜クン!」

「え? 違うって……?」


 慌てふためきながら違うと否定する瑠璃に、夜は小首を傾げる。


 もしかして、今のは告白じゃなくて単なる夜の聞き間違い……?


「今のは告白じゃなくて……その……」


 頬を赤らめ、しどろもどろな物言いの瑠璃。


 だが、先程のはやはり夜の聞き間違いなんかではなく、告白だったらしい。


 しかし、告白じゃない、と瑠璃は言った。明らかに告白だった気がするのだが……。


「よ、夜クン。わ、私の彼氏のフリをしてもらえませんか!?」

「彼氏のフリ……ですか?」

「う、うん。私にこ、恋人っていないでしょ? だから、恋人がいるからって理由で断ろうとしたら、声を聞かせろとか実際に連れてこいとか言われると思うんだよね……」

「確かに……」


 瑠璃の言う通り、ありえそうなことではある。


 恋人がいるからお見合いは出来ない、という理由で断るのは別にいい。問題なのはその後なのだ。


 本当にいるのかどうか、それは声を耳にするなり姿を目にするなりしなきゃ信じることは出来ない。


 何としても断るために、苦し紛れに嘘を吐いた、と捉えられても仕方がない。


 実際に恋人がいるというのは嘘なのだ。証拠を見せろなんて言われたら即座に嘘だと言うことがバレてしまう。


 そうすれば、瑠璃にお見合いを断る理由はあるにはあるが、というか断固拒否なのだが……そんなのはお構いなしにと結婚させられてしまうだろう。


 もちろん、恋人がいるからといって断れるとも思っていない。けれど、少しでも考え直させることが出来れば……そう考えたのだ。


「それで、俺に彼氏のフリを……」


 夜は瑠璃の言葉をもう一度反芻する。


 瑠璃が告白のようなものをしてきた理由がようやくわかった。きっと、慌てて言葉足らずだったのだろう。


 彼氏のフリ、といっても具体的に何をどうすればいいのかわからない。だって、彼女いた経験がないのだから、彼氏としての立ち回りも振る舞いもわかるわけがない。


 けれど。


「わかりました」


 夜はこくりと頷いた。


 自分には荷が重すぎる役だ。小学生の学芸会でも出番が一、二度しかない役や木の役ばかりだった。


 演技だって上手くない。下手とまではいかなくとも、いつボロを出してバレるかわかったものではない。


 それでも、夜は彼氏役を引き受けた。


 瑠璃が頼ってくれたからだ。お願いと言ってくれたからだ。


 同じ部活のメンバーとして、否。


 先輩後輩の関係として、否。


 友達として。期待に応えねばならない。


「俺に任せてください」


 そう言う夜の声は震えていて、このまま任せてもいいのかと疑問が浮かび上がる。


 だが、瑠璃は夜クンが、夜クンだからいい! と迷いを断ち切る。


「……よろしくね、夜クン」

「こちらこそよろしくお願いします、瑠璃先輩」


 そうして、二人の関係は偽物の恋人となった。


 しかし、夜は知らない。知るはずもない。


 本当は本物の彼氏彼女になりたくて告白したのに、恥ずかしさを誤魔化すあまり偽物の恋人を、彼氏のフリを頼んだということを。


「今はそれでも……」


 今は偽物でもいい。仮初でもいい。


 けれど。いつか、本物の恋人に……。



ども、詩和でございます。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回は予定よりも早めの投稿となりました。さぞ驚かれたことでしょう(多分)。

さて、展ラブの投稿をした理由、それは書きたかったからです!

実は、先日。友達と自分の小説について話していて、その場でこの先の展開を決めていたんですよ。どうしようか、見合い相手は? 結婚は? 夜と瑠璃は? っていう具合に。

そして、納得のいくものが決まり、これは書くっきゃねぇ! というわけで今に至ると言うわけです。一応、三章の終わりまで流れを決めているので、投稿頻度を上げようと思います。出来ればの話になりますが、三章が終わるまで毎日投稿をやろうかと。まぁ、今週のにどきみは休みですね。皆さんあんまり読んでないから。

そして、展ラブの投稿頻度を週に一回(三章終了後)、にどきみを隔週一回にしようと思います。

さて、長くなってしましました。今日はこの辺で。

また明日会えることをご期待くださいw

それでは、また次回お会いしましょう。ではまた。


※2020/10/27にちょっと改稿しました。

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