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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
2章 ヤンデレ妹は兄を宿泊研修に同伴させたいそうです。
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夏希の選択

「けど、これを聞いて皆が皆お前のようにしらばっくれると思うなよ?」


 確かに、夜が突き付けた亜希達の会話という証拠はとても重要なものだった。


 しかし、亜希に指摘された通り、夜が影から録音した会話からは、亜希達が誰かしらに何かをやったという証言は取れても、その誰かが夏希だという確証は得られなかったからだ。


 それに気付かないほど亜希は馬鹿ではないと夜は確信を持っていた。過小評価をし過ぎれば痛い目を見るのは自分自身だからというのもあるが、誰の目にも触れない場所で犯行に及んでいた人間が気付かないはずがないと思ったが故に。


 そんな夜の確信はやはり的を射ていたようで、亜希から反省の色を窺うことは出来ない。


 まぁ、それも当然のこと。何せ、反省するどころか「確かにやったけど相手が夏希という証拠はない」と開き直っているのだから。


 まさか開き直るとは流石の夜も思ってはいなかった。が、さして問題はなかった。


 何故なら、夜は最初から影で録音した会話内容だけでは、亜希が自分の非を認めるはずがない、夏希に謝るはずがないと確信していたから。


 だから、夜は賭けることにしたのだ。


 罪悪感に苛まれ一度は謝ろうとした二人が、証拠を目の前で突き付けられることによって取ってくれるであろうとある行動に。


「は? 何言って……」


 「何言ってんの?」という亜希の発言を遮ったのは。


「「ご、ごめんなさい!」」


 夜にごめんなさいと、心の底からの謝罪なのだと伝えたいが故に深々と頭を下げた茜音と舞だった。


 二人の目尻に浮かぶは涙。きっと、本当は謝りたくて謝りたくて仕方がなかったのだろう。


 けど、バレるのが怖くて、結局は自分の保身に走ってしまって謝ることが出来なかった。


 その所為で、時間が経つにつれて増していく罪悪感。押し寄せてくる後悔という名の波。


 その二つの感情をせき止めていたものが、夜に突きつけられた証拠によって崩壊し、いても経ってもいられなくなったのだろう。


「舞っちと亜希っちと三人で朝木さんに酷いことをしちゃいました……!」

「最初はちょっとした嫌がらせのつもりだったのに、どんどんエスカレートしちゃって……」

「二人とも何言って……」

「「本当にごめんなさい!」」


 亜希の抗議の声も掻き消えるほどの声量で謝罪の言葉を紡ぐ茜音と舞。


「……二人とも、謝る相手は俺じゃなくて夏希だろ?」


 夜のもっともな指摘に二人は即座に夏希の前へと歩を進める。


「酷い子としちゃってごめんなさい、朝木さん!」

「許してもらえるなんて思ってないけど……本当にごめんなさい!」


 目の前で、深々と頭を下げる二人を見て、夏希は。


「……いいよ。僕は気にしてないから」


 笑顔でそう答えた。


「「本当に……本当にごめんなさい!」」


 夏希の優しさが身に染みたのか、耐え切れずぽたりと二人の涙が雫となって地面へと落ちた。


 気にしてない、とは言いつつも完全に許したわけではない。


 夏希とて一人の人間だ。聖人君子じゃあるまいし許せないことの一つや二つくらいある。


 今回の事件だって、本来なら許せなくても当然のことなのである。


 だが、夏希は気にしてないと答えた。


 何故なら、二人の謝罪の気持ちが本物なのだと気付いたから。


 仮に、二人がこの場凌ぎのためだけに謝ったのだとしたら、夏希はきっと、否、絶対許してなどいなかっただろう。


 二人の謝罪が心の底からの謝罪だとわかったからこそ、夏希は許してあげようと思ったのだ。


 一方で、拳を握りしめながらふるふると震える人影が一つ。亜希である。


「二人は謝ったけど、お前はどうするんだ?」

「……あたしは絶対に謝ったりなんかしない……! あたしは悪くない……!」


 舞と茜音の証言により、亜希に逃げ場はない。


 被害者の証言はそこまで有力な証拠とはならないが、犯人自らの証言となればそれは十分な証拠になる。夜の録音した会話も合わされば、真犯人の身代わりという可能性は皆無となり、亜希達の犯行であることは明白である。


 しかし、それでも尚、自分の非を認めない亜希。


「……なぁ、夏希はどうしたい?」

「え、僕……?」

「今回の当事者は夏希で俺じゃない。だから、こいつをどうするか、どうしたいかを決めるのも俺じゃなくて夏希だ」


 優しい夏希には酷かもしれない。


 それでも、夜は夏希に選択を求める。


「僕は……」


 途中で言葉が詰まる。


 けれど、最後まで紡ぐ。


「僕は別に謝られなくてもいい。けど、もう二度と僕とナイトには近づかないで……!」


 謝罪の言葉なんていらない。元々、貰えるとは思ってもいなかったものだ。だから、欲しようとは思えない。


 だけど、これだけは言っておきたかった。


 自分達をどう思おうがその人の勝手だ。だから、それに関してはとやかく言うつもりはない。


 けど、自分達の邪魔だけはしないで欲しい。


 それが、それだけが夏希の亜希に対する願いだった。


 そんな夏希の言葉を聞いて、夜は夏希らしいなと笑みが零れた。


「そろそろ時間だし戻ろ、ナイト!」

「そうだな……」


 みんなが待機しているであろう場所へ駆け出す夏希。


 口元に浮かぶは嬉しそうな笑顔で、ここ数日付き纏っていた負の感情はきれいさっぱり消えているようだった。


「ナイト、はやくはやく!」

「今行くって……」


 夏希の背を追いかけて歩いていた夜は立ち止まり。


「次はないと思え」


 それだけを言い残し、歩みを進めた。


 だが、夜と夏希は気付かなかった。


 亜希が、ぎりぎりと音が鳴るほどの歯軋りをし、未だに拳を握りしめ、怒りのあまり震え続けていたということに。

 ども、詩和です。いつもお読みいただきありがとうございます。

 さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけましたか?

 漸く亜希も反省しスッキリ終わる……と思いきや……? というところで終わりましたが、まだ続きます。

 正直、自分も虐められていた経験があるのでわかるのですが、亜希のような人間は絶対にやめませんし謝ってもそれは上辺だけです。だからこそ、亜希もそのようにしました。

 でも、書いてて困ったのが口調なんですよね。三年近く書いてますけど、そこは未だに慣れません……。

 不完全燃焼で終わってしまった今回。ですが、安心してください。もやもやしたままで終わらせるのは俺自身嫌なので。

 そんなわけで、今回はこの辺で。

 それでは次回お会いしましょう。ではまた。


※カクヨムでもあとがきを書くようになったのでなろうのほうにも書くことにしました。

※2020/09/19に割り込み投稿しました。

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