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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
2章 ヤンデレ妹は兄を宿泊研修に同伴させたいそうです。
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夜にしか出来ない何か

 自室に戻った夜は、ひたすら悔やみ、嘆き、怒りに身を震わせていた。


 今まで、例えどんな苦しいことがあっても、辛いことがあっても、夜の前では決して弱音を吐かなかった夏希。


 そんな夏希が、初めて夜の前で弱音を吐いた。


 それほど、辛かったのだろう。


 それほど、苦しかったのだろう。


 きっと、心が折れてしまったのだろう。


 だというのに、自分は何も出来なかった。


 盟友なのに。


 相棒なのに。


 何もすることが出来なかった。


 それどころか、一度逃げてしまった。


 すでに傷付いた夏希をこれ以上傷付けまいと、一歩踏み出すことを躊躇ってしまった。


 そんな夜の弱さが、この事態を招いたのだ。


 つまり、何が言いたいかと言うと。


 夏希を泣かせたのは、誰あろう夜自身だということだ。


「くそ……」


 本当なら、気が済むまで、否、済むことがないとわかりきっていても、それでも尚叫んでやりたかった。


 けど、そんなことをしたら夏希に聞こえてしまうから。


 そもそも、そんなことをしたって誰も許してはくれないし許しを請うつもりもないのだし許されるとも思っていないのだし。


「……悔やんでても嘆いてても何も始まらない……よな……」


 どう足掻いたって歯向かったって、過去を変えることは出来ない。


 今という時間がすでに過ぎ去っているように。


 過ぎてしまった時間はどれだけ後悔しようと変わることはない。


 タイムマシンとか超能力が存在しない限り、過去を改変するなんて不可能なのだ。


 後悔するななんて無理な話だ。


 どれだけ些細なことでも、人とは悔やんでしまう生き物。


 ああすればよかったこうすればよかっただのしょうもない後悔から、どうしてあんなことをしてしまったんだだの人生を左右するかもしれない後悔まで様々だ。


 そして、これまでも、これからも。星の数ほどの後悔に苛まれながら生きていくことになるのだろう。


 だからこそ、前を向かなきゃいけないのだ。


 嫌なことから目を逸らさないで。しっかりと面向かって。


 深呼吸をして心を落ち着かせ、これからどうするかを考える。


 やるべきことは言わずもがな、夏希を救うこと。


 頼られたからには、全身全霊をもって応えなくてはならない。


 勿論、頼られなくともそのつもりではあるが……あまり大事にはしたくないという枷は外れた(考えは消えた)


 そのためにはまず、亜希達をどうにかするしかない。


 しかし、具体的にどうすればいいのかが全くと言っていいほど思い付かない。


 何が何でも反省はしてもらうし、謝罪だってしてもらう。もう二度とこんなことが起きないように約束もさせる。


 だが、他人をいじめることに何ら抵抗を覚えない人間は反省もしないし謝罪の言葉だって言わないし約束なんてもっての外だ。


 「反省してます」、「ごめんなさい」、「もうしません」だの言ったところで、本心からの言葉じゃない限りまた同じ過ちを繰り返す。


 それだけは、絶対に阻止しなければならない。


 かといって、同じことをそのまま仕返ししてトラウマを植え付けさせるというのも無理な話だ。


 もし、それで本当に亜希達が反省することになったのだとしても、やっていることは本質的には亜希達と同じことだから。


 世の中の認識では、やられたからやりかえしたという言い訳は聞き入れてもらえず、寧ろどちらも悪だと切り捨てられる。


 先に手を出した方が明らかに悪いはずなのに、言い分だとか関係なく同罪となってしまうのだ。


 それにあやかるというわけではないが、同じことをしてしまえば、亜希達と同様他人を貶すのに躊躇いのない人間ということになってしまう。


 別に他人からどう思われようが今更だし知ったことではないのだし、手段を選んでいる時間はとっくの間に消えているのだとしても、自分に嘘は吐きたくない。


 夏希の盟友として、相棒として、恥じることのない自分でいたいのだ。


 そもそもの話、亜希達は頑なに自分の非を認めないだろう。


 そんな亜希達に罪を認めさせるには、何もかもが足りない。


 否定しようのない物的証拠が。


 夏希の証言を認めさせる何かが。


 そして、何よりも時間が圧倒的なまでに足りない。足りな過ぎる。


 二年生である夜と夏希やあかり、亜希達を含めた一年生は部活動や委員会でもしていない限り殆ど関わりを持つことはない。


 体育祭や文化祭といった学校全体で盛り上がる学校行事は当然あるが……それでも、基本的には学年ごとクラスごとに行われるため、他の学年の生徒と関わりを持つことは滅多にないのである。


 つまり、この機を逃せば夜にはどうしようもないということなのだ。


 もし、宿泊研修が終わっても、教室に直接向かえば手の施しようはあるかもしれない。


 だが、逃げられたらそれまでだし、夏希がまた辛く苦しい目に合うかもしれない。


 それだけは何としてでも避けねばならない以上、夜に残された猶予は宿泊研修が終わるまでの短い時間だけなのだが……。


 今日のこれからの予定はすべて外で行われる予定だったため、生憎の雨天により中止。明日の朝にはバスに乗って旅人の宿を発つことになっているから猶予なんてあってないようなもの。


 そんな極僅かな限られた時間で、自分が出来ることは……。


「……何もない……いや、何かあるはずだ……!」


 確かに、自分には何もない。


 この状況を打破する力も、夏希の言っていた強さも。


 何もかも持ち合わせてなどいない。


 だが、何もないからこそ、何か出来ることがあるはずなのだ。


 一見、誰もが出来るようなことでも、今この場では夜にしか出来ない何かが……!

ども、詩和です。

さて投稿できましたねぇ。テストだってのにここの作者は暇なんですかね?

急いで書いたため、投稿直後は誤字が目立つと思いますが後日校閲していくので何卒……。

さて、並行で「2度目の人生を君と」の執筆もやっているのですが、まったく違う作品といってもいい作品になっています。(おもしろくなったとは言っていない)

さて、今回はこの辺で。

それではまた。

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