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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
2章 ヤンデレ妹は兄を宿泊研修に同伴させたいそうです。
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リタイア?

 ウォークラリーが始まってから二時間ほど。


 聖なる泉という名のただの湖に、着々と一年生達が姿を見せ始めた。


 口々に零すは楽しかったや面白かったなどの感想。ちらほらと疲れたなどの感想も聞こえるが、それでも楽しかったと笑う生徒の数は圧倒的に多かった。


 今のご時世、ゲームが嫌いな人なんて早々いないだろう。いるとすれば、それほど家庭が厳格なのか、はたまたゲーム=オタクと断じて忌避する人くらいのものだろう。


 まぁ、オタクをバカにする者たちの中には、普通にアニメやマンガ、ゲームが好きな者が大半だと思うのだが、一体どういう心境でバカにしているのだろうかということはさておき。


 別に旅人の宿のスタッフではないにもかかわらず、夜は勝手に嬉しく思っていた。


 引率者として来たからわかったことなのだが、このウォークラリーを開催するうえで、スタッフさん達がどれほどの熱量をもっていたのかを知ることが出来たのだ。


 森の中を歩いてテントや小物などを設置する人達。


 それぞれの役になりきって接客する人達。


 小物を作る人達。


 そんな、多くの人達が楽しませようという一つの目的のためにこのウォークラリーに携わっていたのだと、夜は改めて実感した。


 勿論、よく考えてみればわかることなのだが、ただ参加しただけではあまり考えることはないだろう。


 故に、こうして裏から見ていたからこそ気付けたことなのだと、夜は思う。


 スタッフさん達がどれだけ頑張っていたかを知っているからこそ、スタッフさん達の努力が報われたことについ嬉しくなったのだ。


 何もしていない自分が嬉しがるなんてお門違いだということをわかっている上で。


「きっと、去年の俺もあんな感じだったんだろうな……」


 それぞれ感想を言い合う一年生を見ながら、夜は呟く。


 流石にモンスターを討伐したり、レベルアップ制度があったりしたわけではなかったものの、ゲームの世界を少しでも体験することが出来たのだ。


一年経った今でも楽しかったと思いだせるほど、楽しくて面白かったのだから。


 だからこそ、夏希にウォークラリーは楽しいということを伝えたのだが……。


「楽しむなんて無理だよな……」


 夜の脳裏にこびりついて離れないのは、旅人の宿を出発する前に見てしまった夏希の表情。


 恐怖や怯えとは比べられない、まさしく絶望に歪んだその表情が、どうしても最悪の展開を夜に予想させてしまう。


 やはり、怪しまれるとかそんなのそっちのけで夏希と一緒に行動するべきだったのでは……と思い至り、首を振る。


 夜がいれば尻尾は出さないだろうし、夜がいない時になれば寧ろ悪化する可能性だってある。


 不確定要素が多い以上、迂闊に行動は出来ない。だからこそ、夜の行動は最善策だと思うのだが、どうしてももっといい方法があったんじゃないかと考えてしまう。


 例え、過去は覆らないのだから考えるだけ無駄なのだとわかっていても。


 そんなことを考えていると。


「おにいちゃ~ん」


 あかりが手を振って夜のいる方へと走っていた。


 どうやら、いつの間にかあかり達はゴールしていたらしい。あかりの後ろに美優と志愛の姿も見えることから、夜に早く会うべく置いてきたということではなさそうだ。


 まぁ、二人は大切な友達だとあかりが言っていたのだし、置いてくるわけがないだろうが。


「お疲れ。楽しかったか?」

「うん、楽しかったよ?」


 笑顔でそう言うあかり。楽しかったのなら何よりである。


「それで、夏希はどうだった?」

「……よくわからない。でも、あの三人とは一緒にいなかった」

「いなかった?」

「うん。リタイアしたって言ってたけど……」

「リタイア……」


 夜は持ち歩いていた宿泊研修のしおりを手に取る。


 ページをぱらぱらと捲り、お目当てのページを見つけ目を通す。


 ウォークラリー中に、体長が悪くなったりケガをしてしまったりと何かアクシデントがあった場合、スタッフさんにリタイアを申告することが出来るのだ。


 リタイアした生徒はスタッフさんの案内の元、旅人の宿へと一足先に戻り治療させたり、休ませる手はずとなっている。


 しかし、ゴールにて生徒達の到着を確認している先生方はその生徒がリタイアしたとは知らないため、到着していない! もしかしたらはぐれたのかも! となってしまう。


 そんなことにならないよう、リタイアをした生徒がいた場合、齟齬がないように理事長である慎二の元に電話が来るはずなのだ。


 しかし、夜の知る限りでは慎二が電話していたところは見ていない。スマホの画面には随分とご熱心だったようだが、電話ではないだろう。きっと、最近はまっているというスマホゲームか何かだろうし。


 だとすると、明らかに妙である。


 あかり曰く、亜希達――正確には亜希は夏希はリタイアしたと言っていたらしい。


 しかし、慎二が電話をしていたところを夜は見ていないのだ。


 つまり、あかりか亜希のどちらかが嘘を吐いているということになる。


 あかりが夜に嘘を吐くとは思えない。ならば、嘘を吐いているのは亜希ということになる。


 亜希の言葉が嘘ならば、夏希はリタイアなんかしていない。つまり、一緒に行動しているはずなのだが、夏希の姿はなかったという。


 明らかにおかしい。おかしすぎる。


「……まさか」


 そこで、夜は一つの推測を思い浮かべる。


 正直、信じたくはない最悪の推測。ありえないと認めたくない憶測。


「悪い、ちょっと理事長に確認しに行ってくる!」


 夜は最悪な推測を否定するべく、慎二の元へと走った。


「……おにいちゃん」


 夜の背中を寂しそうに見つめるあかりには気付く事なく。

ども、詩和です。

さて、二章が10を超えた訳ですが……、まだ二日目終わってないんですもんね。まだしばらく続きそうです。

ラブコメは好きなんですが、付き合った経験がないので限界があるんですよね……。ホントどうしましょ。

まぁ、二章が終わったら夏休みに入るとは思うのでそこで誰かと夜をデートさせたいですねぇ……。

これはアンケートで決めましょうかね?

活動報告のところでアンケートとるので、詳細はそちらで。

まぁ、梨花と瑠璃の出番はなさそうですけど……。

今回はこの辺で。

誤字脱字等ありましたらコメントにて教えていただけるとこれ幸いです。

それではまた。


※2020/07/22に大幅改稿しました。

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