表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
1章 ヤンデレ妹は兄を追いかけて入学して来たようです。
5/339

ブラコンは行き過ぎたらストーカーになるらしい

 突然ではあるが、あかりは超がつくほどの、いいや、超だけでは表現しきれないほどのブラコンである。


 これがまだ、幼稚園児や小学生くらいなら、ブラコンといえど仲睦まじい兄妹だなと微笑ましく思えることだろう。


 しかし、中学生ともなれば話は変わってくる。


 一般的に思春期は十一歳頃から始まるのだという。もちろん個人差はあるだろうが、少なくともほとんどの中学生が思春期真っただ中というわけだ。


 心も身体も少しずつ大人になっていき、ストレスや不安などに苛まれる多感な時期である。


 異性のことを意識しだすのもおそらく中学生あたりからだろう。


 自ずと、あかりもクラスに気になる男子ができ、もしかしたらお付き合いして……なんて思っていた時期があおいと浩星、そして夜にもあった。


 親として、兄としては不安ではあったが、それも仕方のないこと、むしろ女の子らしいじゃないかと思っていたくらいだ。


 だが、そんな三人の不安は杞憂に終わった。


 何故なら、あかりにそのような浮ついた話は一切なかったからだ。


 他の男子生徒と一切関わらないことが悪いというわけではない。人には向き不向き、得手不得手があるのだから、こうしなさいああしなさいと押し付けることこそが悪であろう。


 だから、そのこと自体は大した問題ではない。


 本当の問題は、あかりのブラコンが一気に悪化したことである。


 夜が出かけると一緒に行くと言い出すのは当たり前。断ると機嫌が悪くなり、挙句の果てには付きまとい行為。部屋の壁にはお気に入りの一枚だったのか夜の写真が貼りだされ、遂には学校内で夜はシスコンという噂を流すことで外堀を埋めるまでに至った。


 三人は思った。なるほど、これがストーカーなのか、と。


 まさか身内が、それも身内をストーカーするとは夢にも思っていなかった。が、現実は小説よりも奇なりという言葉がある通り、本当に奇なりだった。


 ストーカー行為は立派な犯罪である。だが、相手は兄だし被害も出ているが通報とまではいかなかった。そもそも、妹にストーキングされているんですと通報したところで警察が動くとは思えなかったし。


 それでも、中学生の間は様子を見ようと思った。まだ拗らせているだけ、きっとあかりも普通の女の子のように普通に恋をする時期が来る。それがまだなだけなのだと言い聞かせた。正確には考えることを放棄したのだ。


 しかし、あかりのブラコンは治まることはなく、悪化の一途を辿る一方。被害は徐々に大きくなり、夜はいつしか孤立していた。


 やれ妹に手を出そうとしてるシスコンの変態だの、やれ気持ち悪いだの同じ空気吸いたくないだの、それはもう言いたい放題言われた。


 もちろん、夜がシスコンなんていう証拠はなく、所詮は噂。本当は大したことではないのに大袈裟になってたり、そもそも噂自体が嘘という可能性があるはずなのに。その噂を信じ、冷え切った眼差しを向け罵詈雑言の類を浴びせてくる周りのクラスメイト、顔も名前も知らない誰か、挙句の果てには一部の教師に夜は苦しめられる日々。


 今思えば、殴られた蹴られたなどの暴力を受けたり持ち物を隠されたり壊されたりなんてことはなかったのがせめてもの救いだったかもしれない。が、どのみちいじめられていたという事実は変わらない。


 そもそも、悪口や暴言を言われたことに関しては夜は特に気にしていないのだ。ただ、仲が良かった友達が嘘かもしれない噂に踊らされ、手のひらをくるくるさせていたことが、友情なんてものが欠片もなかったのだと思い知らされたことが嫌だっただけ。


 それに、いつもと何も変わらず関わってくれた友人が二人(、、)いた。ありがたかったし何より温かかった。


 けど、やっぱり大抵の友人が敵となって、友達なんて信じられない信じたくないと対人恐怖症を患うことになってしまったのだが、それは今はおいておく。


 そんなわけで、三人で話し合った結果、これ以上は流石に看過できないということで、あかりの兄離れを強行するために、夜のことを知っている人がいないであろう遠くの高校へと進学を決め、一人暮らしを始めることにしたのだ。


 故に、あかりには夜がどの高校に進学したのか、どこで一人暮らしをしているのか、その他もろもろの情報を伝えなかったし伝えないようにしていた。


 それなのに、それなのに……。


「ここがおにいちゃんのおうちか~」

「夜ったら、ちゃんときれいにしてるじゃない。感心感心」


 目の前で物珍しそうに部屋の中を見回してるあかりとあおいに。


「なんでこうなった……」


 夜は深々とため息をこぼした。

※2023/01/29に改稿に伴い割り込み投稿しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ