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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
2章 ヤンデレ妹は兄を宿泊研修に同伴させたいそうです。
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ミッションとクエスト

 武器屋を左に曲がってから十分ほど。


「あれではないでしょうか?」


 志愛の指差したその先には先程お世話になった武器屋と全く同じでテントと長机があった。


 テントの横には見るからにギルドに置いてありそうな掲示板が置いてあり、某超有名な海賊漫画のようなWANTED(指名手配)と書かれた写真が貼り出されてある。再現度は高いが、懸賞金が書かれていないのが残念である。


 テントには〝GUILD〟と英語で書かれているし、二つ目のミッションの目的地である冒険者ギルドはここで間違いなさそうだ。


「いらっしゃいませ、ここは冒険者ギルドでございます。何か御用でしょうか」


 ぺこりと頭を下げながら、テキスト通りとしか思えない挨拶をするスタッフさんもとい受付嬢さん。


 言わされているとしか思えないような台詞に違和感を感じないのはそれだけ受付嬢さんの演技力が高いのか。


「え、えっと、冒険者登録をしたいのですが……」

「冒険者登録ですね。少々お待ちくださいませ」


 志愛の言葉ににっこりと微笑み、三枚の紙と三本の筆ペンを取り出した。


 紙はともかく、筆ペンなのはあくまでもRPGっぽい世界線を維持するためなのだろう。


 ここでボールペンを渡されれば折角の雰囲気がぶち壊しになること間違いないし。


 その点で言えば、滅多にお目にかかることはないであろう筆ペンの方がこの場では相応しいのかもしれない。


「では、こちらに名前と職業の記入をお願いします」


 筆ペンを受け取ったあかり達は、それぞれ登録用紙に必要事項である名前と職業を記入していく。


 名前:夜月(よづき)あかり

 職業:おにいちゃんのお嫁さん


 名前:浅田(あさだ)美優(みゆ)

 職業:弓使い


 名前:幅田(ふくだ)志愛(しお)

 職業:学生


「職業ってそう言うことじゃないと思うよ……?」


 あかりと志愛の職業欄を見て美優。


 確かに、あかりはともかくとして志愛の書いていることも正しいと言えば正しい。


 しかし、この場においては美優の方が正しいだろう。何せ、冒険者登録なのだから。


 それぞれ選んだ武器を職業に当てはめて考えれば、あかりは剣だから剣士、志愛は杖だから魔法使いとなるだろう。実際に、美優も弓を選んだから弓使いと書いているわけだし。


 しかし、美優の言葉にいまいちピンと来ていないのか、小首を傾げるあかりと志愛。二人からしてみれば、美優こそ何書いてるの? なのだ。その反応も仕方がないのかもしれない。寧ろ、もしかしたらあかり達の方が正常なのかもしれない。


 何も言われず職業を聞かれたら、大抵の学生は学生と答えるだろうし。


「というか、あかりちゃんのは職業じゃないし兄妹じゃ結婚出来ないよ!」

「え?」

「「え?」」


 きょとんと首を傾げるあかりに、何かおかしなこと言ったかな私? いえ、正しいと思いますけど……と美優と志愛。


「……ね、ねぇ、志愛ちゃん。あれって素なのかな?」

「き、きっと深く踏み込まない方が……?」

「そう、だね……」

「はい……」


 あかりの反応にどんな意味があるのかはさておき。きっと気にしない方がお互いの為だろうと不干渉でいることを決めた二人。触らぬ神に祟りなしというし、世の中には踏み込まない方がいい場所なんて無数にあるのである。


「え、えっと……それではこちらで冒険者登録させていただきますね……?」


 今まで台本通りに淡々と、しかし演技力豊かに言葉を発していた受付嬢さんすら苦笑いである。若干引いているような気もしなくはないが……まぁ、その反応も無理はないだろう、うん。


「これにて冒険者登録は完了です」

「意外とすんなり終わりましたね、ミッション2」


 確かに、ミッションと銘打っておきながらやっていることはただの会話と武器という名のストラップ選びと冒険者登録という名の名前記入のみ。あっけないと思うのも最早必然と言えよう。


 何せ、ここまでかかった時間は一時間にも満たないのだ。ウォークラリーがどれだけの時間を要するのはかそれぞれの実行場所で変わるだろうが、流石に時間が短いような気が……。


「……では、冒険者となった皆様にクエストを依頼したいと思います」

「クエスト? それってミッションとは違うんですか?」


 初耳ではないにせよ、今回のウォークラリーでは初めて聞いた単語――〝クエスト〟に首を傾げる美優。


「はい。といっても、殆ど何も変わりありません。このウォークラリーではメインストーリーをミッション、サブスト―リーをクエストとして扱っているだけです。まぁ、クエストも時間の関係で一つだけしかないんですけどね?」


 受付嬢さんの説明に、なるほど……と納得する三人。


 きっと、メインストーリーとサブストーリーで分けて考えていても本筋は全く変わらなくて、少しでもゲーム感覚で楽しんでもらえるようにという配慮なのだろう。


 それなら、ミッションに関しては“メインストーリー”と銘打ってもいいと思うのだが……何かしらの理由が旅人の宿側にあるのではないだろうか。


 時間を短く設定しているのも、長ければ疲れてしまうから。


 折角楽しんでもらえたのに、最終的な感想が「疲れた」だと楽しんでもらえなかったのだろうか……と不安になるから。


 ゲーム感覚で楽しめるようにしたのも、旅人の宿が単にゲーム風のウォークラリーにしたかったからのもあるのだろうが、一時の間だけでも疲れを忘れられるようにという理由もあるのかもしれない。


 まぁ、本当の理由はどう足掻いてもそのようにしようと決めた本人にしかわからないのだし、考えるだけ無駄なのかもしれないが。


「では、改めましてこちらがクエストです」


 渡されたクエストを美優が受け取り、右側から志愛が覗き込む。


 “クエスト ギルドの奥にて広がる花畑から一人一輪の花を採取せよ”。


 それが、ギルドから依頼されるクエストの内容らしい。


「え? こんな簡単なの?」

「最初のクエストですし、ゲームでいうところの採取クエストです」


 寧ろ、それ以外のクエストは不可能に近いだろう。


 討伐クエストはそもそもモンスターが現実にいない時点で不可能。


 護衛クエストも護衛する相手もいなければ襲ってくる野盗もモンスターもいない。


 出来ることと言えば何かを集めて納品する採取クエストか代わりに荷物をお届けするお使いクエストくらいのもの。


 だったら、最初のクエストでは定番の採取クエストにしようということで決まったのだそうだ。


「えっと、どうして花なのでしょうか……」

「実は本当は秘密なんですけど……皆様にお持ちいただいた花を花束にしまして、帰りに先生方に渡すことになっているんです。その時にどの生徒さんがどこのクラスかわかるように名前を書いてもらってるんですよ」


 花束を渡すなんて機会はそうそうないだろう。あるとすれば、卒業式にありがとうございました! とお礼の言葉と共に渡すくらい。


 だから、ウォークラリーを楽しむことの出来ない引率の先生達へのささやかなプレゼントとして、花束を贈ることになったらしい。


「だったら、ちゃんと選んであげないとね!」

「ですね」


 日葵先生に渡す花ということで、気合十分の美優と志愛。


「では、行きましょう……って、あかりさん?」

「さっきからどうかしたの? ずっと静かなままだし心ここにあらずって感じだけど……」

「……何でもないよ? ほら、早く行こ?」


 武器屋のときからずっとおかしいあかりの様子に首を傾げつつも、美優と志愛はあかりの後を追う。


「……おにいちゃんの不安が的中してないといいけど……」


 そんなあかりの不安に満ちた呟きは美優と志愛どころか誰の耳に届くこともなく、空気に溶け込むようにして消えていった。

ども、詩和です。

さて、今回はいかがだったでしょう。……あれですね。展開滅茶苦茶。

今並行してにどきみも書いてるんですがキャラがごちゃまぜで頭がパニックです。

展開にファンタジーが合わさってる気がしないでもない……。どうしましょう、宿泊研修をこれ以上続けられる気がしないです。

まぁ続けますのでご安心を。きっとここから急展開があるんです。きっと。

(毎回毎回その日に書いて投稿なのでキツイものがあるのです)

今回はこの辺で。

誤字脱字等ありましたらコメントにて教えていただけるとこれ幸いです。

それではまた。


※2020/07/09に大幅改稿しました。

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