二人の出会い
夏希が夜に出会ったのは、中学一年生の秋だった。
小学生の頃から軽いいじめを受けていた夏希は、中学校でも同じような、否、酷いいじめを受けていた。クラスメイトの中には同じ小学校出身者の人が三分の一くらいはいたからだ。
小学生の頃は軽い悪口や仲間外れだったにもかかわらず、中学生に上がると陰口が耳に届くのは当たり前だった。
今もそうだが、夏希はその頃から中二病を患っていた。まぁ、そこまで症状は酷くなかったのだが、クラスの中で誰かを除け者にするための判断材料には十分すぎる。だから、少なからずそれも関係しているのだろう。
いじめはなくなることはなく、寧ろエスカレートしていった。クラスメイトは次の標的にされたくないが故に見て見ぬフリをし、責任を問われることを恐れたのか担任の先生まで知らない、いじめはないと上に報告。
そんな日々が六ヶ月くらい続いたとある秋の日のこと。
耐え切れなくなったというのもあるが、もうどうでもいいや、人生なんか……と思ってはいけないことを思ってしまった夏希は、飛び降りて楽になるという道を選び、屋上へと向かった。
しかし、夏希が飛び降りることはなかった。そこに、すでに先客――夜がいたから。
顔は殴られたりでもしたのか傷だらけで、制服は解れていたり破けていたりとボロボロだった。
夜が操作するスマホは画面が割れていたが、何をしているのかはわかった。
それは、夏希が唯一遊んでいるスマホゲーム――Sword and Magicだった。
夏希達の通う学校は中学校にもかかわらず携帯を持って来ていいことになっていた。だから、大半の生徒がスマホを持って来ていた。暇つぶしや、友達とのコミュニケーションに必須だから。
その頃はまだリリースされて間もなくて、SaMをやっている人なんて殆どいなくて、夏希の知る限りでは夜と夏希しかしていなかったと思う。きっと、他にもやっていた人はいたんだろうけど。
だから、夏希は一目見ただけで夜に親近感を覚えた。
僕と同じ、似た者同士なのだと思った。
だから、自分でも気付かない内に夜に話しかけていた。
「た、楽しいです……よね。SaM……」
それが、夏希と夜の出会いだった。
「え、えっと……俺は夜月夜、二年生……です」
「あ、朝木夏希……です。一年生です……」
「朝木……って、柊也の妹さん?」
「柊兄を知ってるんですか?」
「うん、友達……なんだ」
「そ、そうなんですか……」
初対面かつお互いに人見知り、あまり他人を信用出来ないということも相まって、今とは違い、お互い敬語でぎこちなかった。
軽い挨拶も終わり、二人の間に生まれるのは沈黙。
どうしたら……と悩む夜に、夏希は。
「よ、夜月先輩。一緒にゲーム、しませんか?」
SaMの起動画面を見せながら、そう言った。
そんなこんなで、二人はSaMを一緒にすることにした。
今までマルチプレイをしたことのなかった二人にとって、初めてのマルチプレイは新鮮で面白くて。気付けば、お互いに打ち解け合っていた。
二人にとって、中学生になり、始めて出来た友達だった。
「……それにしても上手いな……」
「夜月先輩も上手です……」
お互いにお互いのプレイヤースキルの高さを褒め合う。今まで、ゲームをしていることをバカにされてきた二人にとって、褒めてもらうというのはくすぐったくて、嬉しくもあった。
「そういえば夜月先輩。どうして“ナイト”なんですか?」
ただ純粋に気になっただけだろう。ちらちらとプレイヤー名が目に入れば嫌でも気になる。
それに、不器用ながらも話題の提供をしてくれたのだろう。唐突なのは、慣れていないから。同じく慣れていない夜だからこそわかった、夏希の気遣い。
「そ、そうだな……。まぁ、大した理由じゃないんだけど……俺の名前が夜で、英語にしたらナイト。だから、“ナイト”」
夜の言う通り、大した理由でつけられた名前ではない。安直な理由だ。
でも、殆どの人がそうなのではないだろうか。名前の一部をとったり変換したり、好きなキャラクターの名前をお借りしたり。人によっては様々だろうけど、夜の場合は自分の名前を英語に変換しただけ。
「そういう朝木はどうして“アリス”なんだ?」
自分だけじゃ不公平だろ? と言外に伝える。
「え、えっと……不思議の国のアリスって知ってますか?」
「イギリスの小説……だっけ?」
Alice’s Adventures in Wonderland――不思議の国のアリス。
イギリスの数学者であるチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンがルイス・キャロルという著名で書いた児童向けの小説のこと。
幼い少女であるアリスが白ウサギを追いかけていくうちに不思議の国へと迷い込んでしまい、しゃべる動物たちや動くトランプなど様々なキャラクターたちと出会い、その世界を冒険する……という物語である。
「はい。僕、その小説が好きで……名前も主人公のアリスから……」
恥ずかし気に夏希。どうやら、夏希のプレイヤーネームも夜と同じような理由で名付けられたものらしい。
片や自分の名前を変換して。片や自分の好きな作品から。どちらも、ネーミングの方法としてはテンプレのようなものである。
「俺達、案外似た者同士なのかもな」
「そうですね。……あ、あの、夜月先輩。ナイトって呼んでもいいですか?」
「どうして?」
「その……ニックネームで呼び合うのが……あ、憧れで……」
その気持ちはわかる。あだ名で呼び合うのは……なんというか友達って感じがして。夜にとってもちょっとした憧れではある。
「わかった。俺もアリスって呼んでいいか?」
「は、はい!」
「あと、敬語じゃなくていいぞ? なんかこう……むずむずする」
「わかりま……う、うん。それじゃ、ナイト。早く次行こ!」
目をキラキラと輝かせる夏希。声を掛けられた時の死んだ魚のような目とはまるで違って、今は楽しそうに笑っていた。
きっと、これが本来の夏希なのだろう……と、まだ話して間もないというのに夜はそう確信していた。
「よし、行くか!」
ども、詩和です。
さて、今回はいかがだったでしょうか。もはや収集がつかない状態になっています。
もうネタ切れです。もう限界です。誰かネタをください。
二章はかなり長くなりそうかもしれませんけどネタがないんで多分6,7くらいで終わりますね。
それとほんとに夏希がメインヒロインになってます。でもタイトル通りあかりENDにしたいのでどうしたらいいんですかね?
さて今回はこの辺で。
誤字脱字等ありましたらコメントにて教えていただけるとこれ幸いです。
それではまた。
(もう慣れたと思いますがこの滅茶苦茶な展開にしばしお付き合いください。)
※2020年2月23日に改稿しました。




