理事長のアルバム
慎二に連れられ、夜はお世話になる柳家の別荘へと来ていた。まぁ、別荘に来た理由が掃除なので何とも言えないのだが。
別荘の周りには、人家はなく、目の前には広大な海が広がっていた。海が近いとは聞いていたが、まさか目の前にあるとは思ってもいなかった。というか、これってプライベートビーチっていうやつなのか? すげぇ、柳家。すげぇ、別荘。すげぇ、プライベートビーチ。凄すぎて凄いしか言えない。語彙力さんは休暇中のようだ。早く戻ってきて欲しい。
「目の前が海って……。理事長、失礼ですけどどんくらいかかったか聞いてもいいですか?」
「ん、構わないよ。そうだなぁ、きっと夜君が普通の職に就いても払えきれないくらいかな?」
「マジですか……」
やっぱり理事長ってすげぇな、と夜は感嘆した。というか、さっきから俺すげぇしか言ってない気がするんだけど、気のせいだろうか。
別荘の外見は清潔感のある白色の壁で、太陽が差し込むには十分すぎる大きさの窓で埋め尽くされていた。というか、壁より窓の方が面積が多い気がする。二階部分にはテラスもあり、周りを照らす街頭もないため、夜景と海を眺めたら最高だろう。夜が一生働いても買えないかもしれないというのも納得できる。それはそれで悲しいが。
しかし、いざ中に入ってみると、ナニコレ詐欺? と言いたくなるような光景が目の前に広がっていた。
壁とか天井とか至る所に蜘蛛の巣が張っており、足を踏み入れれば埃が宙を舞い散る。耳をすませば、というかすまさなくてもカサカサと何かが地面を這いずる音が聞こえるし、虫の死骸もちらほらと見える。数年行っていないのも納得である。
「いやぁ、まさかここまでとはね……」
「綺麗ですけどほぼ幽霊屋敷ですよ、これ……」
「う~ん、本当はメイドさんたちに頼もうと思ってたんだけどね……、断られたんだよ。虫嫌です、って」
「あぁ、わかります。なので帰っていいですか?」
まぁ、ここに来た時点で帰るという選択肢は存在しないので、夜は渋々、それはもう渋々掃除を始めた。道中、慎二に昼食は奢ってもらったが、夕食までに終わる気がしない。というか、下手をすれば明日までかかりそうである。帰るのにもそれなりに時間が掛かってしまうので、泊って掃除をすることになるだろう。やばい、水着買う暇がねぇ……。
夜達がお世話になる別荘は、リビングにキッチン、洗面所や個室など十近くの部屋がある。しかも、一つ一つの部屋が広いので、半日で終わるわけがない。これは、お泊りルート確定です。まぁ、旅行予定日が三日後なので、ギリギリ間に合うだろう。あかりには怒られるだろうが。
その後、別荘の掃除は難航した。玄関の掃除だけで一時間もかかるとは思ってもいなかったのだ。まぁ、玄関が広いからという理由もあるにはあるが、主な理由は……。
「お! またレアなキャラ当たった! ひゃっほい!」
いち早くソファを綺麗にしたと思ったら、スマホを取り出しゲームをし始めたのだ。それからずっとゲームゲームゲームである。いや、わかるよ? ゲームが楽しいってことはわかるよ? 俺だって好きだから、ゲームに熱中する理由はわかる。けどさ? 掃除頼まれてたのって誰だっけ? 俺じゃないよね? 理事長だよね? なんで頼まれた本人が掃除しないんでしょうかね……。
「……理事長! リビングの掃除は頼みましたよ? 俺は個室の掃除してくるんで」
「ん~、わかったよ~」
手をひらひらとさせる慎二を横目に、夜は掃除道具を持って個室へと向かった。慎二がやる気を見せないのはいつものことなので気にしてはいないのだが、このままやらなかったら梨花の母親にスマホ没収してもらおう、うん。
そうしてさらに一時間くらいが経過した。個室も広いには広いが玄関よりは広くないので三室掃除を終えることが出来た。因みに、慎二は未だにソファでゲームをしている。あと三十分したらやるとは言っていたが、その言葉が真実かどうかは知らない。まぁ、嘘だった場合にはスマホ没収してもらうが。
今、夜は四室目の個室を掃除していた。玄関に加え、個室を三室も掃除したので少し身体に痛みが奔る。しゃがみながら掃除していたせいだろうか、腰が特に痛い。肩も痛いし、そんな年じゃないんだけどな……。
まずは押し入れの中だ! と引き出しを開けると、中から一冊の分厚い本を見つけた。
「何だこれ?」
中身を見てみたら、何枚もの写真が張り付けてあった。きっと、アルバムなのだろう。写真を見るに、幼い頃の梨花のだろうか。
「どっからどう見てもアルバム、だよな……。梨花の写真だから、梨花のか? 見てみたい気はするけど、勝手に見るのはマズいよな……。まぁ、バレなきゃいいか。梨花、ごめん」
そういう問題じゃない気がするが、聞こえていないけど梨花に一言断りを入れて、夜はページをめくっていくと、梨花〇歳と年齢ごとに写真がまとめらており、綺麗に丁寧に整理されていた。夜と梨花が一緒に写っている写真もある。
「懐かしいな。これは、俺と梨花が初めて会った時の写真だっけ? この時はまだお互い人見知りで何も話してなかったな。こんなに仲良くなると思ってなかったし。まぁ、梨花と一緒にいるようになったキッカケは……、間違いなくあれだろうな」
お嬢様だからという理由で毎日毎日告白され、それだけならまだしも襲われた梨花を助けたあの日から、梨花は夜の傍にいるようになった。間違いなく、仲良くなったキッカケで、夜は知らないだろうが梨花が夜を好きになったキッカケでもある。
こんなこともあったなぁ、と感慨深く思いながら更にページをめくっていくと、梨花じゃない、でもどことなく梨花に似ている女の子の写真が貼られているページとなった。桜花0歳と書かれているので、この写真に写っている女の子は桜花という名前なのだろう。どことなく梨花に似ている気がする。
パラパラとページをめくっていくと桜花の遊んでいる姿は笑っている姿など可愛らしい姿が写っている写真が何十枚とあった。しかし、四歳からの写真がない。どうしてだろうか?
「……誰だろう、この桜花って子。見た目は梨花に似てるんだよなぁ。親戚? 姉妹って可能性もあるけど、聞いたことないしな……」
「……梨花の姉だよ」
「うわぁ! ……って、理事長?」
夜が桜花について考えていると、後ろから声を掛けられ、驚きの余り大声を出してしまった。どうやら、アルバムを見ている内に慎二が来ていたようだ。まったく気付かなかった。
「夜君だってサボっているじゃないか。人のことは言えないよ?」
「いや、まぁそれはそうですけど……、って姉?」
夜は理事長の言っていたことを思い出す。確かに、梨花の姉だと言っていた。ということは、この写真に写っている桜花という女の子は梨花の姉ということになる。そうか、梨花の姉か……。なにそれ、聞いたことないけど。
「いやぁ、ありがとうね夜君。このアルバム探してたんだよ。まさか、こんなところにあるなんて思ってもいなかったよ」
「へぇ、これって理事長のアルバムだったんですか。整理整頓されてたんで楓花さんのアルバムだと思ってましたよ。……って、そうじゃなくて!」
因みに、楓花とは梨花の母親であり慎二の妻である。
「梨花に姉がいたなんて初めて知ったんですけど?」
「あぁ、梨花から聞いていないのかい? てっきり知ってると思ってたんだけど……。桜花はね、私と恋花の娘であり、梨花の姉だよ」
ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。
さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけましたでしょうか?
まずは謝罪を。昨日投稿出来ずすみませんでした。何度も言っていますし、言い訳がましいのですが意欲が湧きません。頭も痛いし、風邪でも引いたんですかね? そうなると、テストがマズいことに……。来週にありますからねぇ、あはは……。
さて、今回は久しぶりの滅茶苦茶展開だったと思います。言ってしまえば、梨花の姉の桜花は後付け設定ですw なので、伏線も何もないですw それは、改稿の時にどうにかします。出来たらですけど。
それと、何気に慎二の嫁、梨花の母である恋花初登場ですw 台詞ないのに登場って……。
まぁ、プロット作らないとこうなるんで、読んでくれている物書きさん(いるかどうか知らんけど)気を付けてください。
さて、今回はこの辺で。
それでは次回お会いしましょう。ではまた。
※後書きでは梨花の母親は恋花と書かれていますが、問題話である『リカフォーマーズ』に楓花として登場していたため、改稿いたしました。
皆様に混乱を招いたこと、深くお詫び申し上げます。




