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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
5章 ヤンデレ妹たちはひと夏の思い出を作るそうです。
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一つのお願い

 その後、夜は帰ってきた瑠璃とともに補習のプリントを終わらせた。一日だけでいいと言われていたので、どれだけ多くのプリントをしなければいけないのか、と不安に思っていたが意外と少なく、学年一位の瑠璃に教えてもらったらすぐに終わってしまった。担当の先生に驚かれつつ、二人の補習は終了となった。


「やっと終わったね」

「はぁ、疲れたぁ……」


 二者二様の感想を零しながら、二人は部室へと向かっていた。理由としては、瑠璃が部室に用があるというので、付き添っているのだ。先に帰っていいとは言われたが、少し話したいこともあった。内容は、二人がぎくしゃくしているあれの件についてである。後は言わなくてもわかってくれるだろう。


「なぁ、瑠璃」

「ん? ど、どうかしたの? 夜クン」


 しかし、いざ面と向かって話すとなると、何故か緊張してしまう。それは、瑠璃も同じようだった。まぁ、何度も言うがあんなことがあったのだ。緊張しないわけがない。


 そうして、夜が口を開こうとした時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。二人が後ろを振り向いてその人物の姿を確認すると、そこには慎二がいた。学校にいるなんて仕事だろうか? でも、どっからどう見ても私服を着ているんだが……。まぁ、休みだし私服でいいのか? でも、ジャージ姿?


「やっと見つけたよ。夜君、少し付き合ってくれ」

「……やっと見つけたって……。それで、何に付き合うんですか?」

「別荘の掃除だよ」

「……瑠璃、行こうか」


 夜は面倒だと判断し、瑠璃に部室に行こうと促した。しかし、慎二は夜の肩をガシッと掴む。


「頼むよ、夜君。あんな広い場所を一人で掃除とか無理だ! 梨花に掃除しとけって言われたんだよ」

「いや、理事長が娘の一言で動くってどういうことなんですか……? というか、なんで掃除しなきゃいけないんですか。普段から手入れはしてないんですか?」

「うん、ここ数年行ってないからね。掃除もしてないから埃だらけだろうし」

「なんで行ってないんですか……」

「行く気がなかったんだ。私がね!」


 ドヤ顔でサムズアップする慎二を見て、夜は呆れたようにため息を吐いた。まぁ、毎年別荘に行くってのも大変だろう。柳家みたいに別荘がいくつもあるかもしれない裕福な家なら数年行かないというのもある話かもしれない。まぁ、柳家の場合は慎二が行くのが面倒だから行かないらしいが。もう少し、奥さんと娘に思い出を作らせたらどうなんだ?


「でも、俺が掃除する理由にはならないじゃないですか。頼まれたのは理事長でしょ?」

「それもそうだけどさ。あの別荘は、正直言えば君達が使うんだろう? なら、手伝ってくれてもいいじゃないか。それに、手伝ってくれなきゃ別荘は貸さないよ?」


 流石にそう言われてしまっては、夜に拒否権はない。みんな、あれだけ楽しみにしているのだ。その楽しみを、夜が奪うわけにはいかない。


「はぁ、わかりました。瑠璃、悪いけど部室には一人で……」

「うん、わかったよ。夜クン、掃除頑張るんだよ?」

「嫌なんだけどな……」


 そうして、夜は強制的に別荘の掃除に参加させられることになり、瑠璃と別れた。瑠璃は、少し寂しそうな表情をしながらも、一人で部室へと向かうのだった。




 夜のスマホに仕掛けた盗聴器越しに、夜達の会話を聞いていたあかりは、素早く支度を済ませ、瑠璃がいるであろう柳ヶ丘高校の部室へと向かっていた。


 瑠璃に夜とギクシャクしている理由を聞こうとは思っていたのだが、夜がいたので聞くに聞けなかったのだ。しかし、今、夜は慎二に連れられ自分たちがお世話になる別荘の掃除へと向かっている。正直、夜に付いていきたかったが、瑠璃に聞くのは今しかない! というわけである。


 部室のドアを開けると、瑠璃は何かを探しているようだった。夜との会話で言っていた、用事とは探し物のようだ。


 瑠璃はドアが開いたことにビクン! と身体を跳ねさせながら驚き、ドアを開けたのがあかりということに安堵した。誰か来たらマズい物でも探していたのだろうか? あかりにはわからない。


「なんだ、あかりクンか。どうかしたのかい?」

「はい。部長におにいちゃんとのことで聞きたいことがあってきました」


 どうして自分がいる場所がわかったの? なんて聞かない。瑠璃の結婚騒動があった時に、あかりが夜のスマホに盗聴器を仕掛けているということは、夏希と梨花に聞いていた。今、二次元部でそのことを知らないのは当時いなかった玲奈だけであろう。


 瑠璃はあかりが何を聞きたいのかはわかっていた。何をしていたのかは知らないだろうが、きっと、あのことだろう、と。


 ならば、バレる可能性があったというのにどうしてあんなことをしてしまったのか。それは、盗聴器のことなんて忘れていたからである。あんな状況だ。忘れてても仕方がないだろう。というか、覚えてたらあんなことは言っていない。下手をすれば死人が出てしまう……かもしれない。


「それで? 私に聞きたいことって何かな? わざわざここまで来たってことは重要なことなんでしょ?」


 あかりはこくりと頷き、


「部長、おにいちゃんと何かありましたか? いや、何がありましたか?」

「! あ、その……」


 どうやら、夜と瑠璃の間に何かがあったというのは確信しているようだ。


 予想はしていた。怪しいと思われているということもわかっていた。だが、面と向かって聞かれると変に口籠ってしまう。それが、あかりには言えないようなことなのだと言外に伝えてしまう。


 あかりの質問に、瑠璃は……。


「まぁ、いいです。答えてくれないというのはわかってましたから」

「あ、あはは……」

「でも、一つだけ部長にお願いがあります。おにいちゃんとは普通に接してあげてください」

「え?」


 あかりのお願いに、瑠璃は目を丸くさせ驚いた。


「別に、おにいちゃんを渡す気はないです。でも、最近おにいちゃんは部長のことばっか考えてるんです。それが、わたしには許せない……」

「あ、なるほどね……」


 まぁ、好きな人が他の女の子のことを考えていたら、いい気分にはならないだろう。


「なので、おにいちゃんと普通に接してあげてください。それじゃあ、わたしは失礼します」


 そう言って、あかりは踵を返した。瑠璃は、


「はは、あかりクンには敵わないな……」


 と、渇いた笑みを浮かべた。


「でも、私だって負けないからね? あかりクン」


 そうして、聞こえていないとは思うが、あかりにそう宣言するのだった。


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけましたでしょうか?

とりあえず、二日ぶりです。お待たせしてしまい申し訳ございません。

毎日投稿をやめたというのに、本文は少ないです。本当に申し訳ない。意欲が湧かないんです(言い訳)。

次回は別荘のお掃除です。もしかしたら前編後編に分かれるかもしれません。ですが、二話投稿はしません。すみません。

今回謝ってばかりですが、この辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

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