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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
5章 ヤンデレ妹たちはひと夏の思い出を作るそうです。
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日に日に募る罪悪感

「どうしてこうなったんだろうな……」

「ど、どうしてだろうね……」


 夜は、二次元部のみんなと海に……ではなく、瑠璃と二人で柳ヶ丘高校のとある教室でプリントの問題を解きまくっていた。その理由は、旅行に行こうと決まった昨日に遡る必要がある。




「旅行? なしてまた……」


 いきなりの旅行発言に、夜は戸惑いを隠せなかった。


「だって、あかりだけズルいんだもん! 僕だってナイトと一緒にいたい!」

「あぁ、なるほどね。そういうことか……」


 夏希の不満に、夜は納得してしまった。ようは、あかりにやきもちを妬いていると。それは、他の三人も同じだと。一緒に過ごしたい。でも、夏休みだからあんまり会えない。だから、一緒に過ごせるという名目で旅行に行きたいと。


 まぁ、夏休みなんだし、旅行に行くのは構わない。構わないのだが……。


「なぁ、場所はどうするんだ?」

「それなら安心していいわよ? 私の別荘だから」

「際ですか……」


 すでに決まっていたようだ。準備が早い。どんだけ行きたいんだよ、旅行……。


「でも、別荘ってことはあれだろ? 理事長に許可取らねぇと……」

「だから、今から行くのよ!」

「あ、それはまだだったんだ」


 ということで、夜達二次元部は梨花の家へと向かった。梨花曰く、家でだらだらしているらしい。あかりがおにいちゃんみたいと笑っていたが、はて、なんのことだろうか。


 そうして、慎二に別荘を使わせてもらえないか聞いたところ、


「いや、別に構わないけど、いつから行くんだい?」

「明日からの予定よ」

「え、マジで?」


 今日決めて明日行くのは流石に早過ぎはしないだろうか。というか、準備する時間がほとんどないんですけど。海でしょ? 俺水着ないよ?


「いきなり明日と言われても……。あ、そういえば、夜君と瑠璃君は補修があったんじゃなかったっけ?」

「「……へ?」」


 慎二の言葉に、二人は揃って間抜けな声を漏らした。何それ聞いてないと。


「ちょっと、パパ。それってどういうこと?」

「いや、だって二人はテストやってないだろう?」

「「……あ、確かに」」


 そう、夜と瑠璃が補習の理由。それは、一学期末テストを受けていないからである。瑠璃の結婚騒動のあれこれで、二人はテストを受けられなかったのだ。理事長権限で二人の休みを公欠扱いに出来ても――したらダメなんだけど――、流石にテストを受けたことには出来ない。


 夜達の通う柳ヶ丘高校――ナギ高――に追試はない。理由としては、理事長の慎二が「追試? そんなのいらない!」と言ったからだという。追試に何か恨みでもあったのだろうか。まぁ、詳しくは知らない方がいいだろう。きっと、慎二もそれを望んでいる。思い出したくもない過去の一つや二つ、人間なら誰しも持っているものである。


「……はぁ、補習か。理事長、その補習っていつかわかります?」

「ん、そうだな。じゃあ、明日にしよう! その代わり、明日だけで構わないよ」

「マジですか……。理事長、ありがとうございます」

「HAHAHAHA……、もっと感謝してくれてもいいんだよ?」

「ほんとありがとうございます(棒)」


 やっぱり、理事長(慎二)は何処にいても理事長(慎二)だった。少しでも感謝した自分が許せない。いや、感謝しなくてはいけないのだが、素直に感謝できないのは何でだろうか。それは、慎二のドヤ顔がムカつくからだろう。そうに違いない。




 というわけで、今に至るという訳だ。回想終了。


 因みに、旅行は三日後に変更された。みんな色々と準備があるらしい。ならなんで、翌日行こうとしてたんだ? と聞いたところ、みんなに目を逸らされた。


 夜と瑠璃は学年が別だから、補習する場所も別かと思いきや、補習が夜と瑠璃の二人だったことと、補習担当の先生がバラバラとかメンドイから一緒にやるべ! の一言で同じ教室で補習を受けることになってしまった。しかも、プリントだけだからほっといていいよね? という、これまた担当の先生のほったらかしにより、二人きりだけという、何とも気まずい状況だった。


 いくら、あの日のことをなかったことにしようとしても、頭から離れてくれず、それが二人の間に気まずい空間を作り出していた。


 しかし、いつまでもこのようなままでいられない。これ以上気まずい関係が続いたら、あかりに勘付かれるかもしれない。


 今も瑠璃はちらちらと夜の方を見ては顔を赤くするのを繰り返している。


「な、なぁ、瑠璃。いつまでもこのままじゃダメな気がするんだけど」

「う、うん、そうだね……」

「だから、昔みたいに……」


 昔みたいに戻れないか? と言おうとしたが、瑠璃の声に遮られてしまった。


「わかってるよ! 夜クンの言いたいことは、わかってるんだよ……! 私も、すぐに忘れるようにが、頑張るから!」


 そう言いながら、瑠璃は教室を飛び出してしまった。頑張る、と言っても、記憶は頑張っても消せないと思うのだが。


「忘れるように頑張るって……。やっぱり、マズいことしたな……」


 あの日のことを思い出して、夜も顔を赤く染める。ほんと、あの時は気が動転していたのだ! じゃなきゃ、あんなことをしていなかったはずである! まぁ、今更後悔したところで遅いのだが。


「でも、ああいう瑠璃も可愛いんだよなぁ……。ほんと、あれだけ可愛いなら他に言い寄る男子もいるだろうに、なんで俺なんだよ……。なんで、こんなクズを選ぶんだよ……」


 夜は苦虫を噛み潰したような表情で、そう呟いた。確かに、瑠璃に言い寄る男子はいるにはいる。それに、お見合いの申し出も増えていると平藏から聞いている。それなのに、どうして自分なんかを選ぶのか、不思議でならない。


 そして、自分のクズさが本当に嫌になる。それを承知であかり達は夜の傍にいてくれているのだ。それが、嬉しい半面、ものすごく申し訳ないのだ。あかり達が幸せそうならいいか、と思っていたのだが、それ以上に感じる罪悪感が半端ないのだ。


あかり達も、本当はわかっているのだろう。もしかしたら、自分の気持ちに応えてくれないのではないだろうか、と。それでも、夜の傍にいたいから一緒にいる。その気持ちが、夜の心を締め付ける。だが、それ以上にあかり達は傷ついている。本当に、自分は最低なクズだ。


 瑠璃の気持ちには、否、みんなの気持ちには応えてあげたい。だけど、そうすれば誰かが悲しむのは目に見えている。だから、夜は拒絶できないのだ。今の関係のままでいたいのだ。


 瑠璃が自分を好きになった理由は、あの時に聞いている。だから、自分のせいで、瑠璃が自分を選んだということもわかっている。だから、拒絶出来ないのだ。瑠璃にとって、夜は大切な人だから。


 ただ、彼女たちの幸せを願うことが、こんなに辛いとは思わなかった。


 そんな夜の呟きを、教室の外で聞いていた人物と、盗聴器越しに聞いていた人物がいるのだが、夜がそのことを知る由はないだろう。


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけましたでしょうか?

とりあえず旅行はもう少し先になります。楽しみにしていた方、すみません。

ここ数話、同じようなことばっかり書いています。ん~、書き方回りくどいのかな? 長ったらしく書いたらダメ?

最近、文章がラブコメっぽくないなぁと思い始めてきました。俺は一体何を書いているんだ……? と思うこともしばしば。

それと、先に謝罪をしておきます。

ここ数日、ブクマもPVも伸びなくなってきました。まぁ、ここ数日のあれが異常なだけなんですけど。

そこで、日間ランキングに入らなくなったら、毎日投稿をやめようと思います。

ランキングに返り咲く、読者を居続けさせるには毎日投稿が一番なのですが、最近はそれが少し辛くなってきました。創作意欲が湧かないのです。まぁ、言い訳ですね。ただの逃げですね。

でも、そろそろ死姫も書きたくなってきましたし、展ラブの知名度はランキング入りによって上がったことでしょう。

なので、これからも展ラブと死姫、詩和をよろしくお願いします。

さて、暗い話は終わりにして今日はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

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