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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
5章 ヤンデレ妹たちはひと夏の思い出を作るそうです。
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夜生誕日記念番外Ⅰ あにといもうと

今回の番外は、今までと違って本編の世界戦の過去です。ですが、過去以外は本編とは関係ありませんのでご注意を。

 これは、まだ夜とあかりが幼い頃の物語。夜が孤立する前の、あかりが病む前の、二人が普通の兄妹だった……かもしれない頃の物語……。




 九月十五日。その日は、あかりの大好きなおにいちゃんである夜の誕生日だった。そんな今日、あかりは(おにいちゃん)のために誕生日ケーキを作ろうとキッチンに立っていた。まぁ、ケーキと言ってもあかりと夜の母であるあおいがおやつによく作ってくれるホットケーキを三枚ほど重ねてイチゴや生クリームをトッピングするという簡易なケーキだが。夜とあかりは、そのあおいが作ってくれるケーキが大好きなのだ。


 しかし、小学一年生であるあかりが簡易なケーキとはいえ、一人で作れるものなのだろうか? あおいの手伝いをしているとはいえ、レシピも朧気で危険だからと火も使わせてもらったこともない。それなのに、一人で作れるものだろうか?


 だが、あかりは諦めなかった。大好きなおにいちゃんのためにやると決めたことは必ずやり遂げるのだ!


 因みに、夜は自分の部屋でお勉強中である。まぁ、そういう名目でゲームをしているのだろうが。最近はモンスターをゲットだぜ! するのにハマっているようだ。友達と今度対戦すると言っていた。どんな人なんだろう、女の子? とそれを聞いたあかりが首を傾げていた。それを見てあおいが遠くを見つめていたがきっと気のせいだろう。うん、そうに違いない。


 あかりはあおいが作っていたように自分も作っていく。だが、おかしいことにあおいと同じようにはいかない。それもそうだろう。まだ小学一年生なあかりでは、いくらあおいの手伝いをしていたからといって一つのものを最初から最後まで一人で作るのは難しい。でも、あかりは諦めない。だって、夜のためなのだから。


 そうして、まだ粉とか色々あれだが、生地は完成した。そして、フライパンに生地をどばっ! と入れる、否、入れてしまった。ホットケーキ三枚分の生地は子供には重かったようだ。それでも気にせずあかりは焼いていく。さんまいかさねるひつようない! と思ったようだ。


 だが、そのせいで中々火が通らない。まぁ、それもそうだろう。だって、三枚分も重なっているのだ、火が通らないのも無理はない。


 だからなのか、あかりはコンロの火を強めてしまった。そのため、あかりは手を火傷してしまった。そして、幼いがために泣き出してしまう。


 あかりの泣き声を聞いて、夜は大急ぎで部屋を飛び出しキッチンへと向かった。そこには、その場に座り込んで泣いているあかりがいた。


 夜はすぐに駆け付け、未だに轟轟音を立てている火を消し、あかりの頭をこつんと叩いた。


「なにしてるんだよ! 火はあぶないっておかあさんもいってたのに!」

「うぅ、ごめん、なさいぃ……。うわぁぁん!」


 夜に怒られてしまったため、あかりは更に泣いてしまう。そこに、タイミングよく帰ってきたあおい。台所の上に散乱しているボウルとか袋とか色々。そして、その前で泣いているあかりと怒っている夜。あおいは事の次第を大体察し、苦笑いをした。


「まったく、あなたたちは何をしているの?」

「「お母さん!」」


 あおいが帰ってきたということに気付いた夜とあかりは、あおいに抱き着く。


 あおいは夜とあかりの頭を撫で、そしてこつんと叩いた。


「あかり、火は危ないから使わないでって言ったよね? あかりがケーキ作りたいって思ってるのはわかってたけど、本当に使うとは思わなかったんだから。今度からは私がいるときに使って?」

「はい……」

「夜も、あかりを注意するのは偉いけど、泣かせるのはダメ。わかった?」

「うん……」


 あおいの真剣な表情に、夜とあかりも反省する。そして、あおいはにこっと笑顔になった。


「ならよし! さて、あかり。一人じゃ難しいから私と作ろ?」

「やだ! わたしひとりでつくりたい!」


 あおいが二人で作ろうと言っても、あかりはいやだ! の一点張りだった。あかりがあおいに言わずに一人で作ったのは、自分が夜の誕生日ケーキを作りたかったからだ。だから、ここで折れるわけにはいかないのだ。


「……はぁ、わかったわ。じゃあ、後ろで作り方を教えてあげるから自分一人で作ってみなさい? いい?」

「うん!」

「夜も、少し待ってくれる?」

「わかった!」


 そうして、あかりはあおい先生に指導してもらい、夜の誕生日ケーキを作り上げた。まぁ、あおいが作るケーキよりは見栄えも悪かったりもするが、あかりが一生懸命作ったものだ。味や見た目なんて関係ない。あかりが作ったということが大事なのだ。


「いただきます」


 夜はケーキの一切れを口に運び、んぐんぐと口を動かす。そして、


「おいしい!」


 夜は満面の笑みでそう言った。すると、あかりは嬉しそうにぱぁっと顔を明るくさせた。どうやら、おいしいと言ってもらえたのが相当嬉しかったようだ。一方で、あおいは笑いをこらえているように見えた。まぁ、気のせいだろう。


「おにいちゃん、たんじょうびおめでと!」

「あかり、ありがとう!」


 仲の良い兄妹を見て、あおいは幸せそうに笑った。




 そうして、夜が高校二年生、あかりが高校一年生となった。あおいも、まさか脅されるとは夢にも思わなかっただろう。まぁ、ヤンデレ気質は小学生の頃からあったので薄々勘づいていはいたのだが……。


「ふふ……」

「どうかしたのか?」


 夜とあかりの父であり、あおいの夫でもある浩星(こうせい)が首を傾げた。


「いや、昔を思い出していたの。ねぇ、あかりが夜にケーキ作ろうとしてたの覚えてる?」

「……あぁ、夜が小学二年生の時の話? 懐かしいなぁ」

「えぇ。あの時、あかり、砂糖と塩を間違えてたのよ。それを夜はおいしい! って……」

「……あおい、それ間違えてたの気付いて言わなかったとかないよな?」


 あおいさん、スーと目を逸らした。どうやら図星のようだ。


「ん? なんで夜の誕生日なんか思い出してたんだ?」

「え、まさか忘れたの? 今日が何日か」

「あぁ、そうか。今日が夜の誕生日だったな」

「忘れてたのね」


 浩星さん、スーと目を逸らした。どうやら図星のようだ。


「あの二人、元気にやってるのかな?」

「やってるだろ。まぁ、心配ではあるけど……」


 敢えて何とは言わないが、あかりの病み具合が心配なのだろう。


「まぁ、大丈夫でしょう」

「あぁ、そうだな」

「「夜、誕生日おめでとう」」


 あおいと浩星は、遠くで頑張っているであろう夜を想い、祝いの言葉を贈るのだった。


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけましたでしょうか?

夜とあかりの過去は書いたことがあったかもしれませんが、まさか小学生時代を書くとは思ってもませんでした。あかりがまだヤンデレになる前の話、いかがでしたでしょう。やっぱりあかりはあかりでしたw

それと、今回の過去に伴って、夜とあかりの母の名前を恵子からあおいに変更、そして一章のあれもセリフを少し変えました。名前の変更の理由はいつかの制作秘話で。

それと、今回初の夜とあかりの父親が出ましたね。浩星さん、この名前の由来もいつかの制作秘話で。

さて、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

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