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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
5章 ヤンデレ妹たちはひと夏の思い出を作るそうです。
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気まずい二人の距離

 ガチャリとドアの開いた音が聞こえて、夜と瑠璃は揃いも揃ってその場でフリーズした。あれ? 気のせいだよね? と。しかし、次の瞬間、聞こえた声によってそれは二人の気のせいではないと証明されることになった。


 だって、考えたらわかることである。普通、インターホンを鳴らさず(、、、、)に人の家に入るなどありえない。いや、普通なのかは知らないが、少なくとも夜はそう思っている。故に、その場合、ドアを開けた人物はその家に住んでいるものと限定されるわけで……。ということは、つまり、ドアを開けた人物は……、


「おにいちゃん、ただいま~。――……あれ? 他の女の靴がある」

「あれ、どうしたのあかりちゃん?」


 いち早く瑠璃の靴を女の靴と判断し、ヤンヤンし始めているあかりしかいないわけである。しかも、お友達である美優も同伴と来た。あ、終わったわ、これ……。


 このままあかりに夜と瑠璃のいるリビングのドアを開けられたら、キスをしようとしている何ともマズイ画のままご対面である。もし、今の画を見られたとしよう。そうすれば、夜が辿る道は今まで通りだ。本当、いい雰囲気になったらあかりは必ず現れるのは何故だろうか。きっと、夜は呪われているのだろう。これは早めにお祓いに行かなければ。きっと、モテない男達の怨念に纏わり憑かれているはずである。


 普段と同じだったなら、二人はフリーズしたままマズイ画をあかりに見られていただろう。しかし、この時の二人の思考は滅茶苦茶になっていた。瑠璃なら、やっと想いが通じたのだという嬉しさが。夜なら、絶対に幸せにしなくてはという決意が。そこに加えて、焦りと恐怖が加われば、パニックになるのも無理はないだろう。


 しかし、二人は即座に動くことが出来た。人とは、生存本能が働けば意外と何でも出来るものである。まぁ、何でもとは言い過ぎだろうが、ほとんどのことは出来るだろう。きっと。


「ただいま、おにいちゃん。それで? どうして部長がいるの?」

「お、おぉ、あかり。おかえり……」

「ひ、久し振りだね、あかりクン……」

「お、お邪魔します……」


 そのため、あかりがリビングのドアを開ける頃には、二人は一定の距離を取って座っていた。逆に、それが不自然に思えるし、声が震えているのでとても怪しいのだが……。まぁ、パニック状態でここまで出来たのだ。称賛して欲しいくらいである。


 だが、早く離れなきゃ! とだけしか思っていなかったので、二人は忘れていた。自分たちが、何をしていたのか(、、、、、、、、)ということを。


「それで、おにいちゃん。それは何?」

「は、はわわ……」

「「それ? ……って、あ」」


 色々とあって、すっかり忘れていた。パソコンがそのままだということに。つまり、エロゲの画面がそのままなのである。画面の中で男女がいちゃいちゃしているのである。そして、二人の微妙な距離感、何故か震えている声、少し紅潮している頬。明らかに怪しすぎる。


 あかりさんの目がそれはもうヤバいことになっている。女の子がしていい瞳じゃない。そして、少し興味があるのか美優さんの目はパソコンに釘付けである。まぁ、手で顔を覆っているのだが、指の隙間から覗き見るというお約束をしているので、見ていることはバレバレである。


「おにいちゃん、それは何?」

「えっと、エロゲですね……」

「それで、部長と何してたの?」

「一緒にエロゲしてましたですはい」

「他には?」

「……」

「何か言い残すことある?」

「え、なに、俺死ぬの? 有罪(ギルティ)? やだよ? 俺まだ死にたくないよ?」


 もしかしてバレた? と夜は冷や汗が止まらない。まぁ、流石にバレていたらもう夜の人生は終わっているので、それはないだろうが……。


 そして、夜さん、有罪判決を下されてしまった。情状酌量の余地もなければ、弁明も無意味である。証拠? そんなもの知らない。あかりが黒と言えば黒なのだ! え? 何様だって? そんなもの決まっている、あかり様だ!


「例え二次元としても、おにいちゃんが他の女にデレデレするのは許せない……!」


 どうやら、二人が何をしようとしていたかはバレてはいなかったらしい。しかし、二次元すら許してくれないとは……。だからって、俺の部屋を物色するのはやめてもらえませんかね?


 夜がどうしたものか……と焦っていると、肩をつんつんと突かれた。夜はつんつんしてきた瑠璃を見る。


「瑠璃?」

「ほら、行くよ夜クン!」


 夜は瑠璃に手を引かれ、連れられるがままに家を飛び出した。まったく、梨花の時といい、俺は何回あかりに追いかけられればいいんですかね!? こう、毎日追いかけられてたら体力も限界なんですが……!?


一方、逃げられたあかりは、


「あは、あはは……。逃がさないよ? お・に・い・ちゃ・ん」


 あかりはもはや相棒と化している包丁を手に持って夜(と瑠璃)を追いかけるように飛び出た。さて、まったく相手にされず取り残された美優は……、


「あれ? 私は……? ねぇ、あかりちゃ~ん!」


 とても、不憫だった……。




「どこぉ、おにいちゃぁん。出て来てよぉ~」


 キラリと銀色に光るモノ(包丁)を手に持っているあかり。夜と瑠璃はそんなあかりを建物の物陰から見ていた。まぁ、あかりのいる場所の反対側には道路があるので、バレる可能性はあるだろうが、下手に動くよりもマシだろう。


探すならGPSとかで場所を特定したら簡単に探せるのでは? と思うだろうが、夜はスマホを家に忘れてきているため、色々仕掛けたあかりちゃん特製盗聴器、発信機etcは何の役にも立たないのである。


 そう言えば、どうしてあかりは瑠璃がいるって気が付かなかったんだ? でも、きっと友達(美優)と遊んでいるのが楽しくて盗聴する余裕などなかったのだろう。ナイス美優! 君のお陰で瑠璃と何をしようとしていたかはバレなかった! あれ? でも、録音機能なかったっけ……? いや、それはきっと自分でしなきゃいけないのだろう、そう信じよう、うん。


「はぁ、はぁ……、ほんと、あの包丁さえなければな……」

「はぁ……、あかりクンの愛は凄いなぁ……」


 二人は互いに見つめ合い、そして、咄嗟に顔を逸らした。さっきの感情が、まだ心の中に残っている。もし、あのままあかりが来なければ自分たちは……、と今更になってとても恥ずかしくなったのだ。ほんと、()()やむとはよくいったものである……。


「ね、ねぇ、夜クン……。その、あの……、今日のことは……、なかったことにしてくれると……」

「――……今日、なんかあったか……?」

「! ……あ、ありがと……」


 と言いつつも、やっぱりお互いの顔を見ることが出来ない。多分、してもしてなくても、こうなってはいただろうが……、それだけならまだしも、直前で止められて我に帰ったら感じる恥ずかしさは天元突破はしているだろう。ほんと、穴があったら入りたい……。というか、忘れられないと思うが……。


 そうして、二人が照れ照れしていると、後ろの方で一台の車が止まった音がした。白一色で、お偉い人たちが乗っていてもおかしくない、かなり高そうな車だ。そんな車がどうしてこんなところに止まるんだ? と二人が首を傾げた瞬間、車から降りて二人の前に現れた人物を見て、夜は目を丸くし、瑠璃はガクガクと震えはじめた。


 二人の目の前に現れた人物、それは、瑠璃の父親である平藏と母親である真璃だった。


「やぁ、夜月君。久し振りだね、元気にしていたか?」

「久し振りね、夜月君」

「平藏さんに、真璃さん……。その、お久し振りです」


 久し振りの再開に、夜は平藏と真璃に頭を下げた。出会った最初の頃にあった蟠りは一切なくなっていた。


「なぁ、瑠璃。二人が来てんなら言ってくれても……、って瑠璃?」


 どうして教えてくれなかったんだ? と夜が瑠璃に聞こうとしたところで、瑠璃の異変に気付いた。ガタガタと震え、何故か冷や汗をだらだらと流している。まるで、何かに怯えているように……。


 そして、その怯えの理由を、平藏が持っているのを見て、夜は思い出した。そう言えば、エロゲを持っていることがバレて逃げてきたと言っていたような……と。


「夜月君と色々話したいこともあるが、それはまたにしよう。さて、瑠璃。もう逃げ場はないぞ」

「うぅ……、お母さん……」

「平藏さんもここまで怒らなくていいとは思うのだけど……、でも仕方ないわよね? だって、逃げたんですから……」

「……夜クン……」

「瑠璃、潔く自首しよう」

「この裏切り者ぉ!」


 瑠璃に助けを請われても、真璃に慈悲はなかった。そして、夜にも慈悲はなかった。


 しかし、後ろから聞こえたとある人物の言葉に、夜も瑠璃と同じようにガタガタと震えはじめた。その人物は……、


「見つけた、おにいちゃん……」


 言わずもがな、あかりである。


 前に平藏と真璃、後ろにあかり。逃げ場はなくなってしまった!


「瑠璃……」

「夜クン……」

「「生きてまた会おう!」」


 二人は死亡フラグを建てて、その場から脱兎のごとく逃げ出した。


 その後、夜と瑠璃の逃走劇は三日三晩続いたらしいが、それが真実かどうかは本人達しか知らないだろう……。


 そして、これからの夜と瑠璃の関係は少し気まずくなるのだが、それはまだ先のお話……?


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はいかがでしたでしょう? 楽しんでいただけましたでしょうか?

いやぁ、最近あかりオチが定常と化してきました。誰か助けて、1パターンだと思われる……。

それにしても、あかりと梨花が可愛そうな立ち位置にいる気がします。メインヒロインって夏希と瑠璃だっけ?

まぁ、あのまましてたらあかりが人殺し(兄殺し)してましたからね……。いやぁ、よかったよかった……。正直言ってしまえば、あんな展開にしなければよかったんじゃないか? と言われるでしょうが、やっぱり瑠璃が可愛いからですね、うん、そうだ。だからこうなってしまうのです。贔屓? その通り! いや、瑠璃だけじゃないですからね? まぁ、梨花の件があるので嘘に聞こえるかもしれないですけど……。

さて、次回は玲奈……と行きたいですが、まぁ、玲奈は四章でメインヒロインだったのでなしの方向で。楽しみにしてくださった方、すみません。

ですが、玲奈は出てくるのでご安心を。

さて、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。


※2019/03/09に少々改稿致しました。

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