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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
5章 ヤンデレ妹たちはひと夏の思い出を作るそうです。
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貰ってくれますか?

 瑠璃と一緒にエロゲを初めてから十分近くが経過しようとしていた。エロゲ、と言っても瑠璃が持って来たもの(エロゲ)はそこまでR18な描写はないらしく、物語を楽しむゲームのようで、未だにそのようなシーン(エロシーン)はなかった。まぁ、いきなりエロシーンというのも困るので、夜的にはそれはもうありがたかった。ただ一つ、気がかりがあるとすれば……。


「瑠璃、どうしてこのゲーム、先輩女子(、、、、)と後輩男子(、、、、、)の物語なんだ?」


 そう、たった一つの気がかり。それは、女の子の先輩と男の子の後輩が恋に落ちるという何ともあれな物語だった。自分達(瑠璃と夜)と同じような関係性なので、何か意図があるに違いない、と夜が思っても仕方がないだろう。


「どうしてって、一番好きだからだよ? 私たちみたいだと思わない?」

「……思いたくないんだけど……」


 どうして、18禁展開までとはいかないが、今も画面の中でいちゃいちゃしている男女を自分達(夜と瑠璃)と思わなくてはいけないのか。何の罰だ、俺が何をした? とツッコミたい。まぁ、夜の思い込みかもしれないが。その場合、穴があったら入りたい衝動に駆られるだろうが、気にしない。気にしてはならないのだ……!


「そういう瑠璃はどう思ってるんだ?」

「ん~、知りたい? ねぇねぇ、夜クン、知りたい?」

「やっぱ言わなくていいです。面倒なので」


 夜さん、本当に面倒なのか少しずつ敬語に戻っている……ような気がする。そろそろマズいかな……? なんか、いい加減にしないと名前の後ろに先輩まで付けられそうだ……。それだけは勘弁してもらいたい、いやしてください。


「聞いてくれてもいいじゃない……」


 瑠璃が唇を尖らせいじけていたが、それなら最初から話せばいいだろうに……。まぁ、話したくないことを無理に聞き出したくはないので何もしないが。だから、ちらちらとこちらを見ないでもらいたい。いや、ほんとに。


 その後、様々なイベントを経て、ようやくエロゲの醍醐味とも言えるだろうシーンとなった。ほんと、どうして部活の先輩(瑠璃)と一緒にエロゲなんかしないといけないのだろう、何の罰ゲームですかね?


 そうして、色々と現実逃避をしたい夜を置き去りにして、画面の中の時は進んでいく。ほんと、気まずいったらありゃしない。


「……」

「……」


 部屋の中を、ノートパソコンのスピーカーから響き渡る女の子の喘ぎ声。夜と瑠璃も気まずいからなのか一言も喋ろうとしないので余計に喘ぎ声が聞こえてしまう。夜は内心、誰か助けてくれ! と泣き叫ぶ。まぁ、このタイミングであかりとか、あかりとか、あかりとか来たらその場合、夜は死ぬだろうが。


「……なぁ、瑠璃。そろそろ止めにしないか? つか、してくれ」


 じゃなきゃ、色々とマズいことになる。いや、そりゃあね? 俺も男ですし? それなりにあれですよ、その……、うん、あるからね? だからエロゲは止めよう、うん、その方がいい。


「ねぇ、夜クン……」

「何ですかね? できれば早めに要件を言ってもらえませんかね? 色々と限界なので」


 ほんと、色々と限界なので……。さっきから瑠璃の柔らかい身体の感触とかで色々ともうあれなので……。


「夜クンはさ? その……したことある?」

「恋人どころか友達いない奴に聞くことか? 狙ってその質問してるなら効果抜群だよ……」

「な、なんかごめんね?」


 謝られると余計に落ち込むことになるのでやめていただきたい。


「じゃあ、質問を変えるよ。こういうの、したいと思う?」

「は? 何を言って……ってぇ!?」


 瑠璃は身体を反転させ、夜と向き合う形で座り、そして夜を押し倒した。どうにか逃げようとするが、瑠璃に馬乗りされているので、逃げようにも逃げられない! 夜さん大ピンチ! 誰か助けてぇ! あかり以外で!


「ねぇ、夜クンはしたい?」

「……そりゃ、俺も男だし……、って何を言わせてんだよ!」

「じゃあさ、私としよ?」

「いや、冗談だよな?」

「本気だよ」


 そう言う瑠璃の顔は、頬が紅潮し恥ずかしいのだと言外に伝えていた。しかし、瞳は至って真剣だった。真剣そのものだった。それが、瑠璃の言葉が本気だと示していた。


「まぁ、本当のことを言うと、あの日のことを忘れたいっていう理由もあるんだ。あの男に襲われてから……、男の人が苦手になった……。それに、時々思い出すんだ、あの男に触られた感触を……」

「……まぁ、あんなことがあったらな……。トラウマにもなるだろ……」


 あの日――瑠璃が婚約相手だったクズ男(乾治)に襲われたあの日以来、瑠璃は男にトラウマを抱えていた。だが、それも仕方がないだろう。夜も詳しくは聞いていないが、瑠璃が下着姿になっていたことから大体察することは出来るし、クズ男(乾治)も下着姿だった。そこまでの状況証拠から、あの時何が起ころうとしたのかは予想できる。あれだけのことがあったのだ、トラウマになっていてもおかしくはない。


「でも、夜クンなら……、してもいいと思うんだ……。だって、夜クンは大丈夫だから。夜クンだけが、私の味方をしてくれる男の人だから……。だから、お願い……」


 瑠璃の頬を一筋の涙が通った。瑠璃の言っていることは真実だろう。今まで、誰にも相談できずに、悩んできたに違いない。


 もっと早く助けに行っていれば……、と後悔したところで、過去が変わるわけがない。


 もし、過去を変えられる力を持っていたとしても、夜は過去を変えようとは思わないだろう。だって、今が変わってしまうではないか。楽しいこと、辛いことがあって今があるのに、それを忘れるということは、酷く悲しいことに思えるのだ。


 だからといって、瑠璃にそれを言うのは酷だろう。忘れろと言ったところで、トラウマは簡単に消えないのだから。そもそも、簡単に忘れることが出来たら、それはトラウマとは言わない。


「夜クン……」


 涙で濡れた瞳で夜を見つめ、瑠璃は顔を近づけていく。もう少しで、唇が触れそうになったところで、夜は瑠璃の肩を押して遠ざけさせた。そして、夜は身体を起こして瑠璃と向き合う形で座る。


「……そう、だよね……。私なんかじゃ……魅力がないよね……」


 いや、あるに決まってる。というか、正直言うと、夜も結構理性を保つので限界なのである。ロリ体型とは言え、やはり女の子らしい身体の感触とか、恥じらう姿とか、もう、色々とマズイのである!


「……瑠璃、そういうのは大切な人とやるものだ」

「だ、だから……、私にとって大切なのは夜クンで……」

「だとしても、俺は最低な男だ」

「ち、違う! 夜クンは最低じゃない……、最低なのは、また抜け駆けしようとした私の方で……」


 いくら瑠璃に違うと言われても、夜自身が自分を最低な男だと思っている限り、夜の考えが変わることはないだろう。好意を寄せる女の子への返事を保留にして、その上何もないように接する()を最低と言わず何と言えばいい。


 だが、乾治にトラウマになるような行動をさせたのは、言ってしまえば夜である。あの場で、瑠璃を一人になどさせなければ瑠璃が苦しむこともなかっただろう。悔やんでも悔やみきれない。


 それに、普段の瑠璃ならここまでしないと思うのだ。時々、好きな展開を実際にやりたい! と言い出すことはあっても、それですら恥ずかしそうにしていた。だから、今回のこともかなりの勇気をだしてしたことだと思うのだ。


 勿論、夜は瑠璃のことは、好きだ。だが、それは友達としてであって、異性としてなのかはわからない。それは、あかり達に対しても同じである。


 だから、今から夜がすることは本当に最低なことだ。多分、この先の自分たちの関係が崩壊するほどの、否、するだろうことを夜は今、しようとしている。


 だが、この際そんなものは後で考えよう。今は、瑠璃の気持ちに応えてあげたい(、、、、、、、)


 本当に最低だと思う。自分がしっかりしていれば、こんなことにはならなかったと思う。


 だからこそ、自分が責任を持たなければいけないのだ。瑠璃にトラウマを植え付けてしまったのは、乾治ではなく、自分だから……。


「瑠璃……、本当に俺でいいのか?」

「……え?」

「何度も言うけど、俺は最低な男だぞ? 幸せに出来る保証なんてない……。悲しませるかもしれない……」


 そう語る夜の顔は悲痛に満ちていた。覚悟が決まったのは表面上だけで、心の底からはまだ覚悟は決まっていない。やっぱり、自分の最低さがそこで自分の足を止めてしまうのだ。


「それに、このままだと俺は瑠璃の弱みに付け込んでる気がするんだ……」

「そんな、そんなことはないよ? それこそ、私も夜クンの傷口を広げてるようなものだし……」

「でも、瑠璃が望むなら、それで瑠璃の心に残った傷が癒えるなら……、俺は……」


 本当、言ってて我ながら最低だと思う。比較対象に出すのもあれだが、乾治より、最低だと思う。


「夜クン……、私なんかでいいの? 夜クン、したことないんでしょ?」

「じゃあ、聞くけど、瑠璃こそしたことあるのか?」


 瑠璃は首を横に振る。その顔は、真っ赤に染まっていた。きっと、今の夜も真っ赤に染まっているのだろう。


「……夜クン。私の初めて、貰ってくれますか?」

「! ……そういうの、ズルいと思う……」


 そうして、瑠璃は着ていたブラウスのボタンを外していく。そうすれば、下着として着ていたネグリジェが露わになる。ロリ体型には似合わない大人っぽい格好が、何とも……。


「ご、ごめんね? その、ちょっと急いでて、部屋着のままだったの忘れてた……」

「い、いや、別に……、大丈夫だから……」


 夜はそう言いながら目を逸らした。なんか、見たらダメな気がしたのだ。


 少し、クズ男(乾治)が瑠璃を襲うほど理性を失った理由がわかった気が……、いや、まったくしない。というか、わかりたくもない。まず、あれ(クズ男)は理性を失っていないし、瑠璃にトラウマを植え付けたのは許せないし……。


「夜クン……」


 とろんと蕩けた表情に、夜はごくりと生唾を呑んだ。これはもう、理性さんは仕事をしてくれないですね、はい。残業して欲しいけど、まぁ、仕方がないですね、はい。


 二人はお互いの気持ちを確かめ合うように顔をゆっくりと近づける。今度は頬じゃない、瑠璃の宣言通り、真ん中(、、、)だ……。


 そして、お互いの唇が触れそうになったところで、家のドアが開いた(、、、、、、、、)


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけましたでしょうか?

……すみませんでしたぁ! どうしてこうなったのか俺はわかりかねますが、すみませんでしたぁ!

いやぁ、コメディ展開の予定が、いつの間にかシリアスになってました。ほんと、何時から展ラブはエロに走るようになったんですか?

というか、こういう急展開って決まって瑠璃の時だと思うんですけど……。最初に告白したのも瑠璃ですし、なんなら、瑠璃が一時期彼女なってたから他の女の子達も想いを告白しだしましたし……。俺が一番好きなのは瑠璃なんですかね?

まぁ、謝罪はこの辺で。最近謝りっぱなしだと思いますけど、気のせいと言うことにしておきましょう。

さて、瑠璃の姿がみなさんにどう映ったのかは定かではありませんが、可愛い! と思っていただけたのなら幸いです。

ここまで来ると、ほんと梨花が不憫に思えてきました……。後で、夜に慰めてあげるよう言っておきます。

さて、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。


※2019/03/09に少し改稿致しました。

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