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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
5章 ヤンデレ妹たちはひと夏の思い出を作るそうです。
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本物のナイト 前編

今日は二話連続投稿! 20:00に後編投稿!

 SaMの公式大会が行われる会場はショッピングモールとは思えない喧騒と熱気に満ち溢れていた。一年に一回の大会とあってか、参加する人もそうでない人も、今か今かと待ち望んでいるようだ。


 夜と夏希は受付にて出場の登録を済ませた。SaMの大会はトーナメント形式で、出場人数によってトーナメントの数が変化する。因みに、今回は三十人以上の参加者がおり、トーナメントは三つに分かれた。夜はAトーナメント、夏希はCトーナメントだ。


 A、B、Cトーナメントでそれぞれ戦い、勝ち残った二人が決勝トーナメントに出場できる。そして、最後まで勝ち残った者が優勝となるのだ。夜と夏希が予選トーナメントで当たることはない。だが、二人は必ず勝ち残って決勝トーナメントに出場するだろう。つまり、二人が戦うのは決勝だ。


 二人で最強と呼ばれる夜と夏希――ナイトとアリスのALICE in Wonder NIGHT。二人が今まで戦ったことはない。一体、どんな戦いになるのか。


「夏希……、いや、アリス。お前と戦うのは決勝でだ」

「うん、ナイトと会うのは決勝だよ」

「「だから、勝ち残って上がって来い!」」


 二人は拳を打ち付け合った。今は、先輩と後輩なんて仲は忘れる。今の二人は、盟友であり、相棒だ。これ以上の言葉は必要ない。


「……って言っても、始まるまで一緒にいるんだけどな」

「うん、なんか恥ずかしいね」

「言うな、思わないようにしてたんだから……」


 そうして、互いの顔を見つめ合い、笑った。一体、何をやっているんだろうなと。


「でも、夏希。本気でかかって来いよ? ALICE in Wonder NIGHTとか関係なく、俺は本気で戦う」

「うん、僕もナイトを潰す気で頑張るよ。優勝は僕だからね?」

「いいや、俺だ」


 二人の思考に、辞書に、予選敗退とかそういう文字はないらしい。自意識過剰すぎるとは思うが、時に人は願うことで実力以上の実力を出す時がある。それに、例え二人で最強と呼ばれていても一人一人の実力は本物である。滅多なことがない限り、夜と夏希が、否、ナイトとアリスが負けるようなことはないだろう。


 二人は雑談をしながら時が経つのを待った。そうして、夜が出場しているAトーナメントが始まった。




 夜の出場しているAトーナメントは、かなりの激戦が続いていた。やはり、公式大会に出るくらいだ。みんながみんな中々の腕前である。それでも、自分よりは弱いと思ってしまうため、上から目線になってしまう。我ながら最低だとは思うが……。


 夜の出番はこの次だが、そう遅くならずに来るだろう。今、戦っている人たちは、もうじき終わるだろうからだ。


 まず、レアな装備をいくら集めたからといって、育てなければ話にならない。SaMにおいて、レベル固定なんて優しいものはない。実力での殴り合いである。つまり、レベルが弱ければ負け、装備が育っていなければ負け、PSがなければ負けるのだ。簡単な話である。


 因みに、SaMにガチャなんてものは存在しない。それは、ガチャ運で装備に偏りが出てほしくないという運営さんの考え故である。SaMにおいて、レアな装備は強力なモンスターのドロップ。強力な装備を持っているほど、そのプレイヤーは強いということになる。


 夜――ナイトの装備も、全て最高レア度のものである。夏希――アリスも同様だ。


 そうして、Aトーナメント第一回戦は幕を閉じた。夜は第二回線。つまり、一回戦で勝ち残った者が夜の次の対戦相手だ。


 俊敏力に長け、短、中距離から攻撃できる暗殺者(アサシン)。中々の強敵である。しかし、それは普通の人から見た時の話。夜にしてみれば、もはや敵ではない。


 その前に、勝たなければならない相手がいる。


「あなたが僕の相手ですか……」


 夜の相手は、小学、中学生くらいの男の子だった。目の下にはクマが出来ており、眼鏡と長い前髪で目が見えづらい。眼鏡はかけていなかったが、昔の自分を見ているようで、少し後ろめたい気持ちになる。


 だが、それがどうした。ここは、戦場。相手が子供だろうと手加減はしない!


「それでは、第二回戦! 戦うは剣王(ソードマスター)のナイト! そして、もう一人は死霊使い(ネクロマンサー)のクロ!」

「見た目もそうだけど、職業も根暗だな……」

「聞こえていますよ。剣王(ソードマスター)だからって、強気に出ているんですか? その年で、僕を煽るって恥ずかしくないんですか?」

「いや、煽ってるつもりはないんだが……。でも、勝つのは俺だ」


 そう、いくら相手が強かろうとも、勝つのは夜。それは、決定事項である。


「な、なぁ? ナイトってまさかあの?」

「いや、でもあいつが大会に出たことなんて一度もないんだぞ?」

「でもよぉ、ナイトなんてよくいるだろ?」


 どうやら、観客席では夜のプレイヤーネームで盛り上がっているようだ。今、彼らの頭に浮かんでいるのはALICE in Wonder NIGHTの一人、漆黒の騎士ナイトだろう。騎士、と言っても黒コートに身を包み、二本の剣を自在に操り、敵を屠る。夜が、某黒の剣士をイメージして作ったアバターである。まぁ、片目を前髪で隠しており、オッドアイなのでキ〇トさんとは違うが。


「それでは、戦闘開始(バトルスタート)!」


後書きは後編で。

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