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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
5章 ヤンデレ妹たちはひと夏の思い出を作るそうです。
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盟友の意外な一面

 夜は昨日、あかりと歩いた道を夏希と歩いていた。二日連続だからだろうか、ショッピングモールへの道のりが長く感じるのは。運動できないオタクである俺にやらせることか、疲れるんだよ……。


 しかし、夏希は大はしゃぎである。一体、何が楽しいのか。お前も俺と同じ運動できないオタクだったよな?


 そうして、夜と夏希は各々違う想いをしながらショッピングモールの中へと入った。


 ショッピングモールの中は、昨日来た時と比べると、人が多く感じた。やはり、SaMの大会が関係しているのかもしれない。その上、今日はなんだかデーとやらが今日だったはず。それなら、人が多いのも納得がいく。しかし、イベント事でこんなに変わるものだろうか。


「うぅ、ナイトぉ……」

「わかる、わかるぞ、夏希。俺も結構ヤバイ……」


 夜と夏希はお互いに手を繋いだ。二人の目からは戦意とかやる気とかすべてが消え、恐怖に揺れていた。普段は気にしないほどの人数なので大丈夫なのだが、こうも人が多すぎると怯えてしまうのだ。一時期、人間恐怖症になっていた二人がガクブルしても仕方がないだろう。


「な、夏希、早くどこかに行こうぜ。ここはダメだ。大会の前に体力0になる……」

「うん、早く行こう。ここ怖い……」


 二人は人の波から逃げ出すようにショッピングモールの中を歩いた。しかし、何かイベント事のある日のショッピングモールは三百六十度人なのだ。人、人、人。何処に行ってもいるのは人。人、怖い。


 そうして歩いていると、いつの間にか夏希がいなくなっていた。ずっと一緒に歩いていたはずなのに。


「あれ? 夏希~、何処だ~? ――……あ、いた」


 後ろを振り向くと夏希は何かに夢中になっていた。それで足を止めていたらしい。何か見たいものがあるなら言ってくれれば止まったものを。


「はわぁ~、可愛いなぁ……。飼いたいなぁ……」

「おい、夏希。何見てんだ?」

「ひぅ!?」


 夏希は驚きの余りに間抜けな声を漏らして身体を跳ねさせた。つい最近、こんな驚き方を何処かで見たような気がするのは気のせいだろうか?


 夜は夏希が見ていたものへと視線を移す。そこにいたのは、にゃ~と鳴きながら丸くなっているねこだった。どうやら、ペットショップの前に立ち止まっていたようだ。


「なんだ、ねこ見てたのか?」

「ちち違うよ? 僕は別ににゃんこなんか見てないよ? そ、そう! 隣のカメレオンを僕の眷属にしてあげようと思ってただけだよ!?」

「そんな慌てるようなことか? というか、眷属にしようとするな!」


 ねこの横にカメレオンて、ここのペットショップはもう少し動物たちの並べ方を考えた方がいいと思う。種類ごとに分けるとか色々あるだろうに……。


 夏希はカメレオンの前へそそくさと移動した。しかし、視線は自然とねこの方へと引き寄せられてしまう。隠せてないぞ~、夏希さ~ん。


 夏希の意外な一面に、夜は笑いが込み上げてきた。それは、夏希に可愛いものは似合わないというバカにした笑いではない。その逆、普段とは違ったギャップが如何にも夏希らしいと思ったのだ。


 今、思えば、確かに夏希は可愛いものが好きだった。SaMでのプレイヤーネームも童話のアリスだし、アバターもゴスロリチックな服ではあるが、至る所に可愛らしい装飾はあった。夜が気付いていないだけで、一人称が僕だったり、オタクで中二病混ざってるとしても、夏希はそこら辺にいる普通の女の子だったのだ。


「確かに、ねこは可愛いよな」

「だから、見てないんだってば……」

「はぁ、わかった。じゃあ、もう少しここにいていいぞ。すぐに戻ってくるから」


 夜はカメレオン(にゃんこ)を見ている夏希にそう言い、近くにあったファンシーショップの中へと入って行った。


夏希は飼いたいと言っていたが、夏希がねこを飼うのは難しいだろう。柊也の家に居候している上に、色々と忙しいだろうからだ。だから、流石に、にゃんこを買ってあげることは出来ない。それに、夏希は別に人に買ってもらいたくはないだろう。自分で買って、飼いたいのだ。だから、その代わりと言っては何だが……。


 夜はファンシーショップでとあるものを買い、夏希のいるペットショップの前へと戻った。


「あ、ナイトおかえり。ナイトがいない間に、僕はカメレオンと契約を……」

「まだ言ってたのかよ。ほれ」

「うわっ。ん? ナイト、これなに?」

「まぁ、開けてみろって」


 夏希は夜から受け取ったピンク色の小さい紙袋を開けた。中に入っていたのは、子猫のキーホルダーだった。


「ナイト、これって……」

「流石に本物は無理でも、これなら大丈夫だろ?」


生き物とキーホルダーでは全く違う。それでも、肌身離さず持っていられるのはストラップだろう。それに、少し、否、かなり言葉が悪いかもしれないが、生き物はいつかいなくなってしまう。その点、キーホルダーなら滅多なことがない限り壊れることはないだろう。まぁ、形あるものいつか壊れてしまうのだから、あまり大差はないかもしれないが。

 

「……ったく、別に嘘吐かなくていいのに」

「嘘なんか吐いてないよ……」

「嘘つけ、嬉しいって顔に書いてるぞ」


 すぐに顔を隠してしまったが、夏希のあの笑顔を見る限り、子猫のストラップは気に入ってくれたようだ。


「うん。本当はいつか本物を飼いたいんだ」

「あぁ、見てたらわかる」


 未来を語る夏希の目は、キラキラと輝いていた。きっと、その瞳にはねこを抱いている未来の自分の姿が映っているのだろう。夏希は、本当ににゃんこが、可愛いものが好きなのだ。


「……ありがとう、ナイト。これ、大事にするね?」

「おう」


 本当にカメレオンを見てたんならどうしよう? と悩んでいた。しかし、ありがとうと言う夏希の笑顔を見れば渡してよかったと思えるのだ。


 夏希はスマホを取り出し、子猫のストラップを付けた。嬉しいのか、顔がにやけている。


「さて、そろそろ時間もいいし、会場に行くぞ。受付しねぇと」

「う、うん、そうだね……」


 会場に向かう夜の後ろを、夏希は付いていく。何処となく嬉しそうなのは、勝ってもらったのが子猫のストラップだったからなのか、それとも、夜に買ってもらったものだからなのか……。


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけたなら幸いです。

タイトル通り、夏希の意外な一面を楽しんでいただけたなら今話の目的は達成ですw

今回はSaM関係なかったですけど、次回からはバリバリ戦闘シーン書いていこうと思います。もはやラブコメじゃないというツッコミはどしどしかもんですw まぁ、死姫の練習ってことでね? こっちの方に力を入れると思いますが……。

因みに、死姫は時々、最低でも二週間に一話は更新したいです。まぁ、無理かなぁ?

さて、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

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